この記事の内容
- 退局するメリット
- 事前準備
- 具体的な手順
- つらい時期の乗り越え方
- 辞めてから後悔しないための行動
この記事を書いている僕は、元医局員で、退局と転職を経験し、現在に至ります。
悩み抜いた末の決断でしたが、行動した結果、自由で落ち着いた日々を手に入れることができました。
医局を辞める前後のことは、具体的な手順や心境の変化、反省点まで細かく記録していて、それがこの記事の元になっています。
では、解説していきます。
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辞めるメリット
まずは医局を辞めるかどうか迷っている人に向けて、退局をするメリットをまとめてみたいと思います。
人事異動がなくなる
医局は医局員に対して人事権をもっており、若いうちは1~数年に一度、40歳をこえても何度か異動がある場合が多いです。
人事異動によって
・職場で作り上げた、信頼やシステムを再構築する
・家族が慣れ親しんだ地域から離れる
・場合によっては、遠距離通勤や単身赴任などになる
・書類などの事務手続きを行う
といった負担があります。医局を辞めると、仕事や生活という面で落ち着ける可能性が高いです。
お金を節約できる
医局にいることで、本来は不要であるはずの金銭的な負担をしなくてはなりません。
まずは異動に関連する金銭的負担はこちら。
・退職金がリセットになる(有給休暇も)
・ボーナスが一回分もらえない(支給日に勤務していないともらえない)
・引越し費用
・家を借りる費用
医師が医局人事で失うお金は○万円!?試算をしてみた
異動に関連しない金銭的負担はこちら。
・同門会費などの交際費
・医局費(大学にいる場合)
・寄付金(ポストによっては100万円を超えることも!)
医局を辞めることは、金銭面でも大きなメリットがあります。
将来の計画を立てやすくなる
異動や金銭的負担を被る要素もありますが、医局に属すということは、自分の人生を他人に描いてもらうということです。その結果、将来の見通しが立てにくくなります。
・どういったスキルを手にできるのか
・どこに住むのか
・子供の教育をどこで、どうするか
・いくら給料がもらえるのか
こういったあなたの運命が、医局の密室内で、その時々の都合で決められます。
医局を辞めることで、
・医師として自分の望む方向へ成長していく
・地域に根を張って生きていく
・じっくり子育てに取り組む
・じっくり資産形成に取り組む
という計画が立てられるようになります。
不公平感がなくなる
医局に対して、不公平感を感じている方はいませんか?
医局には「全ての医局員に均等に負担をさせる医局」と「それぞれの事情に合わせた負担をさせる医局」の2種類があります。
どちらの医局のありかたも、間違いではありません。
ただ不公平感を感じているあなたは、もしかしたら「それぞれの事情に合わせた負担をさせる医局」で、他人より多くの負担を背負っているのかもしれません。
医局を離れることで、「他人の事情」分の負担を手放すことができます。不公平感を感じること、それによって他人にイライラする事が減るのではないでしょうか。
辞めるための下準備
もし医局を辞めるタイミングを数年先、あるいはそれ以降と考えている人は、下記のような準備を進めておくことをオススメします。
ポイントは
・味方をつくる
・健康、金銭、仕事/ポストの観点で準備をする
・スムーズに辞める努力をする
です。
家族や同僚と話しておく
まずは「医局を辞めるかもしれない」ということを、家族と話し合うことから始めるといいのではないでしょうか。
医局を辞めるに当たって大きく環境が変わる可能性があるため、同居の家族とはよく話し合っておくべきです。
同居する家族がいない場合も相談をすることで、アドバイスが貰えたり、精神的な味方になってもらえたりします。
転職活動中は悩むことが多く、つらいこともあります。そんな時、支えてくれる人の存在は不可欠です。
同僚や上司にも、医局を辞めるつもりであることを話しておけると、大きなメリットがあります。
転職活動中は仕事を休む必要がありますし、ミスが増えやすい時期でもあります。転職活動を隠れて行うのと、堂々と相談もしながら行うのとでは、大きな差があります。
ただし教授や医局長、あるいはそういった人に伝わってしまうような、「医局側の人」には話すべきではなく、話す相手は慎重に選ぶ必要があります。
健康面を整えておく
準備しておきたい重要な要素の1つが「健康」です。「後ろ盾をなくした後に、体調を崩してしまったら」という不安が湧いてきます。
そのため人間ドックをうける、現在感じているちょっとした不調を治しておくといったことをおすすめします(家族も含めて)。
現在、共済組合に入っている場合は、高額な医療費がかかったとき一部負担金払戻金(被扶養者の場合は家族療養費附加金)として一部が補助される場合があります。こういった制度も利用し、健康になっておきましょう。
逆にもし大きな異常が見つかった場合は、計画を練り直した方がいいかもしれません。
経済的余裕を持つ
「経済面」も重要です。きちんと残りの人生、不自由なく生活できるかということが不安になるかもしれません。
十分な貯蓄を持っておく、生活レベルを上げすぎないといったことが必要です。
知識や技術、資格を取得
医局にいれば、仕事がなくなることはなく、必ず何らかの仕事は斡旋されます。医局を離れるとそれがなくなります。
医局に代わって自分を守るものとして、知識や技術、そして何よりも資格は重要です。
人事のタイミングを測る
スムーズに医局を離れるために、早いうち「人事のタイミングを測っておく」ことが重要です。
一般的には、「退局を告げるのは辞める半年前」と言われていますが、人事の時期は医局によって異なります。次年度の異動の連絡がある1~2か月前が構成段階なので、この頃に退局を伝えるのが良いです。
この時期を探っておきましょう。
医局を辞めたいと思ったら 医師の転職準備9選
不安や葛藤
「いざ医局を辞めるかどうか」となったとき、様々な不安や葛藤が巻き起こることと思います。
よくあるものは、下記の通りです。
・未熟な面があっても大丈夫か
・これまでのキャリアは間違っていたのだろうか
・転職先が良くない職場だったらどうしよう
・自分は恩知らずではないか
・自分の感覚がおかしいのだろうか
・「医局の関連以外にいい病院なんてない」
・「医局を辞めた人に、こんな失敗例があるぞ」
・医局に転職を邪魔されないだろうか
・仕事時間が減ってやることがあるか
下記の記事では、それぞれの不安を乗り越えるための考え方や行動を解説しています。
医局を辞めるときの9つの不安/葛藤と、その乗り越え方
また下記の記事では、客観的にみて「辞めたいと思っても仕方がない医局」の特徴をまとめています。辞めるべきか迷っている人は、参考にしてみてください。
【医師転職】転職すべき医局/職場の特徴5選【客観的判断基準】
何年目に辞めるか
「医局を何年目に辞めるか」問題です。ポイントはこちら。
・所属年数と、スムーズに辞められるかどうかはそれほど関係ない
・専門医資格は持っていたほうが、本当は良いと思う
・30代が転職適齢期
3年未満
全く医局が合わず、専門医資格なしで医局を辞めるパターンです。
ご自身にとってあまりに負担が大きいのであれば、専攻医としての研修を中断・ドロップアウトするのも選択肢ではあります。
ただ専門医資格に価値があるのも事実です。これについてはこちらの記事に詳しくまとめています。
専門医資格の【本当の価値】とは。専門医なしで医局や専攻医を辞めるとどうなるの?
3~5年
専門医資格取得直後に辞めるパターンです。専門医資格があれば、転職候補も増えるでしょう。
このタイミングで辞めると、大学院に行く必要がなくなります。
大学院にもメリットはあるのですが、経済的、体力的に負担が大きいのも事実です。大学院は、嫌々いくものではないと思います。
5~10年前後
専門医資格もとり、一人でできることも増える頃です。子育てや両親のことも考え、生活面で落ち着きたいと考える時期ではないでしょうか。
30代は、
・医師の初回の転職として、最も多い時期
・売り手市場で、転職に適した時期
と言われています。
30代医師の転職で、意識しておきたい5つのこと
10年を大きくこえて
10年をこえて辞めるとなると、一度生活基盤を固めた後の大きな変化ということになります。
家庭の事情などにもよるでしょうが、変化に伴う負担も大きなものになりがちです。
事情としては、引き抜きや栄転、あるいは教授が変わって辞めざるを得ない、医局と合わなくなったなど、仕事上の都合が多いように感じます。
先程は30代が転職適齢期と書きましたが、そこを超えても問題はありません。40代以降に特化した、転職エージェントサービスもあるほどです。
そういった方は、登録する複数のエージェントの1つとして、こちらを検討してみてはいかがでしょうか。40代50代60代の医師転職ドットコム
どの時期に辞めるか
「10年間医局にいて、お礼奉公をすれば辞めていい」という話もありますが、根拠はないように感じます。
長く医局にいれば「貢献してきた人」と、捉えられるようになります。ただその分ポストも上がっており、辞めたときのインパクトが大きくなります。
辞めたくなるようなポストであれば、後継者もみつかりにくいでしょう。
医局上層部の人柄や、医局との関係性によって、所属期間が短くてもスムーズに辞める人もいれば、長くても揉める人もいます。
教授の退官のタイミングは
「教授の退官に合わせて医局を辞めればスムーズ」という話を、時々耳にします。
確かにもっともらしく聞こえますし、実際その前後というのは退局者が増えがちではあります。
ただ医局全体としてかなり忙しい時期であり、年度をまたぐ仕事も増えてきます。そんなわけで「そのタイミングだからスムーズにすむ」という印象は、個人的にはあまりありません。
教授の退官に合わせて医局を辞める という考えは正解か
辞める理由
医局を辞める理由は人によって様々で、複数の理由が合わさってという場合も多いです。
よくある理由と、周囲に理解されやすいかどうかは下記の通りです。
理解されやすい:結婚/出産/育児、地元に帰る、開業
まずまず:栄転/引き抜き、健康面
理解されにくい:人事が辛い、大学勤務が辛い、年収UP、人間関係
本人以外にも関係してくる家庭の事情や、仕事での大きな決断である開業や栄転/引き抜きは、比較的理解されやすいです。引き止めも少ないでしょう。
逆に、個人的な事情や医局/大学に対する不満とも取れる内容は、理解されにくい傾向があるようです。
難しいのが健康面です。
・医局人事に対する要求として、健康を口にする人が多い
・他人からみてわかりにくい
・負担を減らすといって、引き止められることが多い
といった事情から、必ずしも理解されやすいわけではありません。
ただ理解されなくとも、健康というのは本人にとって最重要項目です。自分の健康状態は自分で把握し、行動するべきではないでしょうか。
可能であれば上記のうち理解されやすい理由を用意して伝えられれば、スムーズに話が進みやすいです。
逆に理解されにくい理由は、「複数のうちの一つ」としても口にしないほうがいいです。そこだけを切り取られてしまうことがあります。
医局を辞める理由。よくある12個と「うまい」伝え方
スムーズに辞めるための条件
「なるべく穏便に医局を辞めたい」と考える人がほとんどではないでしょうか。スムーズに辞めるための条件は下記の通りです。
人事が決まる前に伝える
次年度の人事が決まる前に退局を伝えられたほうが良いです。遅れてしまうと再度人事の組み直しになり、周囲への影響が大きくなります。
時期としては、例年人事の連絡がある数ヶ月前がいいのではないでしょうか。
理解されやすい理由を伝える
前の項で書いたとおりです。
本人以外にも関係してくる家庭の事情や、仕事での大きな決断である開業や栄転/引き抜きは、比較的理解されやすいです。
もしこういった理由を用意できれば、スムーズに辞めることに繋がります。
医局の状況が落ち着いている
医局の状況にも波があり、人員が不足している時期と、比較的落ち着いている時期があります。
後者の時期を選ぶと、引き止めが少なくスムーズです。自分の代役のメドが立つ状況であることがベストです。
ただしこれを重視し始めると、自分の転職のタイミングが医局任せになってしまいます。
ずるずると時間が流れ、転職の機会を逃してしまいかねません。
スムーズに辞められなくても(重要)
この項の本題はここです。
本当の意味で、「スムーズに辞めるための条件」を完全に満たすことは困難です。
可能であったとしても、条件を満たすために何年間も費やすのは不毛です。自分や家族にとってベストなタイミングを逃してしまっては、本末転倒です。
「スムーズに辞めるための選択」も重要ですが、「あなたとあなたの家族のための選択」のほうがより重要です。
医局を円満に辞める方法と、もう一つ知っておいてほしいこと
人事を拒否して辞めるのは
理不尽な人事、あまりに希望と離れた人事を伝えられたとき、医局を辞める決心をする人も多いです。
そのような場合
・一旦はその人事を飲み、数年後に医局を辞める
・その人事を拒否して、すぐに辞める
いずれかを選ぶことになります。
一旦人事を飲むメリット
スムーズに辞めやすい
一旦人事を飲むことで、辞める時に揉めにくくなります。
人事を拒否してすぐに辞めると、もう一度人事を組み直すことになり周囲に影響が出る、正面から医局を批判して辞めることになるという状況になり、穏便に辞めるのが難しくなります。
転職活動に時間をかけられる
人事を一旦飲むことで、転職活動にかけられる期間が1年以上伸びることになります。
この時間はゆっくり病院を検討する、自分に合ったエージェントさんを探すという時間をとることに使えます。
もし一旦人事を飲むならば、こういったメリットを手放すべきではありません。いずれにせよ、転職エージェントへの登録はすぐに行い転職活動を初めましょう。
一旦人事を飲むデメリット
一旦人事を飲むデメリットは、数年間望まない環境で働く必要があることです。
医局人事の任期は2年刻みということが多いです。このため、「医局に気を使う」という選択をするならば、1年で辞めることは難しくなります。
もし伸ばすのが1年でも、1年刻みの転居ということになれば生活面での影響が大きくなります。
僕なりの答え
一旦人事を受け入れるか、拒否して辞めるか、どちらの決断をするかは難しい問題です。正解はありません。
ただ僕はこのように考えています。
・自分や家族の健康が損なわれる可能性があるのであれば、すぐに辞める
・辞めた後も医局の近くで、力を借りながら働きたいのであれば、一旦飲む
・どれでもない場合は、自分の気持ちに正直に
医局人事って拒否できる?状況ごとに解説
退局挨拶
切り出し方
突然面と向かって退局を告げるのは難しいので、メールでアポイントメントをとることをおすすめします。
話し合いの前の準備
実際に会って話をする前に、下記のような準備をしておくと良いでしょう。
・必ず辞めるのか、話し合いにいくのか、心を決めておく
・転職先から内定を得ておく
教授や医局長は、医局運営に長く関わっている人達です。退局希望者との話し合いにも慣れており、引き止めも熟練の技です。
きちんと準備をしておくことで、その場の雰囲気に飲まれて、自分の希望と異なる方向に進んでしまうことを避けることができます。
また残念ながら、転職を妨害するようなことを言われる場合もあります。自分を守るためにも、内定をもらっておくことが重要です。
話し合い
実際に会って伝えるときは
という言い方がいいのではないでしょうか。
・辞めるという意思
・辞める時期
・辞める理由
をはっきり伝えることが重要です。
引き止めに応じても
退局の意志を伝えたものの、引き止められ、医局に残った人をみてきました。
何らかの話し合いはあったようですが、その人のために医局の体制が変わることはなく、結局消耗し辞めていきました(医局としては先延ばしにできた分、得をしたようですが)。
引き止めに応じて幸せになった人を、あまりみたことがありません。
【退局挨拶】医局を辞めるときの、切り出し方と注意点
▲退局を切り出すための、アポイントメールの文例も▲
辞めたことへの後悔
後悔はない
医局制度は
・医師の偏在
・大学病院の特殊な雇用条件と労働力不足
・ギリギリの人員しか抱えられない、関連病院の経営体制
といった日本の医療の問題点を、全て医師個人に負担させる制度です。どれだけ日々の仕事が充実していても、この負担はあまりに重いです。
医局を辞めることで、これらの負担から開放されました。
家族でのんびりと、落ち着いて暮らせるようになりました。将来の見通しが立てられるようになり、子供教育や家のことを少しずつ計画をしています。
医局を辞めても、以前から交流のあった人とは変わらず連絡を取り合っています。
医局の外にも患者さんはいます。いい病院もあります。医局を出ても医療のルールも同様です。仕事に対するやりがいは、何も変わりません。
心と時間に余裕ができ、こうしてブログを書いています。
カバーすべきデメリット
ただ医局を辞めることで、全くデメリットが無いわけではありません。
ただこれらは自らの努力でカバーできると思います。具体的には下記の通りです。
職場の確保
医局にいるうちは、「次の職場」が保証されていますが、辞めた後は違います。
転職先の判断基準として、短期的な給料の上昇より、長く安定して働ける職場をみつけることが重要だと思います。
万が一今の職場を失ったとしても、次の仕事を得るために能力を狭めない、資格を取得していくという選択をする必要があります。
知識や技術の維持・向上
知識や技術の維持・向上に適した環境という点では、医局内に軍配が上がりがちです。
医局を辞める以上、自分の力でこれを補っていく必要があります。
幸い、現在はオンラインで日本中のセミナーや学会に参加することができます。一人で学ぶという姿勢を大切にしていきたいものです。
人脈を広げる
医局にいると、自然に人脈が広がります。医師一人にできることは限られており、コンサルテーション能力も重要な臨床能力です。
医局を離れた後は、協力しあえる人を意識して増やしていくことをおすすめします。
【医局を辞めた後】よくある後悔と後悔しないためにできる11のこと
まとめ
「医局を辞める」というテーマで、辞める準備、辞める手順、考え方をまとめました。
僕の医局時代の思い出は、悪いものばかりではありません。僕の医師としての基礎も医局で培われました。
なので、医局を辞めるにあたっては悩みに悩みに悩んで、決断しました。
この記事を読んでいる人のなかには、完全に愛想を尽かしている人もいれば、医局に恩を感じている人もいるでしょう。
不安なことも多いはずです。
でも医局を辞めるという決意をし、行動し、形にできる人は、医局を辞めても大丈夫だと思います。
医局の外にも、病院はあります。患者さんも、指導医もいます。
もし医局から出てものすごく困ることがあったら、またどこか別の医局に入り直すことも可能です。
今回は以上です。
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