大学院

医師の大学院生活について徹底解説

2021年8月2日

 

医局から「そろそろ学位でも」と言われはじめました。大学院生って、収入や仕事などイメージしにくいことが多いです。詳しく教えて下さい。

 

こんな疑問に答えます。

この記事を書いている僕は、医局のモデルコース通りに大学院に入学し、博士号を取得しました。

優秀だったわけでも、研究に熱心だったわけでもありませんが、運にも恵まれ所定の年数で卒業することができました。

そんな経験をもとに、大学院生の生活についてわかりやすく解説します。

この記事を読むと分かること

  • 大学院生の生活(仕事や給料)
  • 大学院生の年金/保険
  • 大学院生の精神面
大学院生活を乗り切るための、ちょっとしたヒントも添えました。

では、行きましょう!

 

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大学院について(おおまかに)

 

大学院に入るタイミング

以前は初期研修終了後、すぐに大学院に入ることが多かったようです。博士号取得と専門医資格取得を並行して目指していたわけです。

今ほどは専攻医期間の過ごし方が、厳密に決められていなかったからでしょうか。

しかし近年では、「専門医資格のめどが立ったら」というタイミングをよく聞くように思います。その頃に医局から、「そろそろ大学院に」という話が来ます。

 

入学について

入学をするために、入試(院試)を受験します。院試は年に1-2回行われています。

試験科目は英語と専門科目(+口述試験)が多いようです。

医師の場合の院試は、形式的な試験であり、落ちたという話は聞いたことがありません。

 

大学院生としてかかるお金

・入学料が30万円前後
・学費が50-60万円/年程度
(大学によって多少の幅はあります)

国立も私立も、大学院では学費にそれほど差がないようです。

 

卒業について

大学院は4年制です。卒業要件が満たせれば3年に短縮できる場合もあります。逆に満たせなければ5、6、7年と伸びていき、ついには卒業できない人もいます。

卒業をすると、博士号を取得できます。

 

博士号を取得するメリット

医師にとっての博士号をとる意味は、主に下記の2つです。

・教授になるために必要
・院長や部長になるために必要であることも(病院の規模や種類による)

 

これ以外にも、

・一つの領域を、深く理解することにつながる
⇒この経験は他の領域を理解する時にも、応用できる
・研究や論文の書き方について学べる

という、意義があります。

 

大学院生の仕事

 

大学院期間は、病院業務やアルバイトなど医師として働きながら、研究や受講といった卒業要件を満たして行きます。

 

研究

論文を1本書くこと

大学院生の本分は研究です。

学術誌(英文)に掲載される論文を書く。そしてそれについて他科教授の前で発表し、審査に合格するということが卒業要件の一つとなっています。

多くの院生は本格的な研究をしたことがないため、研究テーマの提供や研究方法、論文作成の指導を指導医が行うことになります。

 

卒業までの期間を決める要因

規定年数で卒業できたり、逆に何年もかかったり、卒業ができなかったりするのはなぜでしょう。

主な要因は下記の4つです。

・個人の努力
・研究以外の業務量
・研究初心者が、そもそも4年で終えられる研究課題かどうか
・指導医がOKを出すかどうか

もちろん個人の努力は重要です。

しかし課題の難易度や、研究を終える(=論文を書く)許可が降りるかという要素も大きく関与すると感じます。

大学発行の雑誌もあり(卒業のための受け皿でもある)、最低限の卒業要件という意味では、そこまで高いハードルではないはずです。

しかし指導医のOKが、なかなかでないことがあります。良い雑誌に掲載されればされるほど、医局の功績となるため「もっと検討を重ねて」となるわけです。

他にも、研究以外の業務が忙しすぎて、論文を書き上げるまでに時間がかかるということもあります。

 

ポイント

できれば多くの院生が4年で卒業できている医局を選んで、入局するのがオススメです。

こんな医局は、「医局員の生活をきちんと考える」傾向があるように思います。

また指導医によっても、卒業しやすさは変わります。下調べをし、卒業させてもらいやすい指導医の専門分野に興味があるということにする、という小技もあります。

指導医の部下という立ち位置で過ごすため、指導医によって与えられる業務の量や種類も変わります(雑用なども…)。

 

卒業しやすい環境に滑り込むことで、大学院生活の難易度がかわります。

こんな考え方は邪道かもしれません。ただ「卒業までが険しい環境」があるのも事実です。

 

講義を受ける

主に夜間や休日に、大学院の講義があります。とはいっても開催されているもの全てに、出席するわけではありません。

定期的に開催されているもののうち、出席できるものに〇回出ればOKという基準です。

カンファレンスの合間を縫って、出席している人もいましたね。

 

病院業務

大学院生は研究と並行して、一定期間大学病院の業務をしなければならないことが多いです。片手間、手伝いと言うわけではなく、通常の勤務医と同様に患者さんを担当します。

大学病院は重症の患者さん、特殊な病態の患者さんも多いです。さらにカンファレンスも多く、拘束時間は市中病院の勤務医より長くなりがちです。

結果、仕事の前後や休日に研究を行うことになります。

ただこの点に関しては、大学や医局によって違いがあるようです。一例をあげると下記の通り。

・大学病院業務と研究を同時にする2年。研究に集中できる2年。
・市中病院業務と研究を同時にする2年。研究に集中できる2年。
・研究のみを4年。

など。

どのくらい研究のみの期間が取られているか、どのくらい病院業務が忙しい科かによって差があるようです。

 

アルバイト

そもそも大学病院医師の給与は、安いです(市中病院の半分程度)。

さらに院生は支払われれば良い方で、無給医となる場合もあります。

これを補うために大学院生は週1-2日程度、アルバイトに出ます(医局に斡旋されたものが多い)。

大学病院の勤務はアルバイト以外の日ということになりますが、アルバイト後に大学病院に帰って仕事をすることもあります。

 

大学院生の収入

 

大学院生の年収に関しては、はっきりした統計がみつかりませんでした。個人で情報収集した限りでは下記のとおりです。

大学病院からの給与:0~10万円台/月程度
アルバイト:5~10万円程度/回、週1-2回

30代前半常勤医師の相場が年収1000万円弱と言われているので、それと比べると低いはずです。

ただしこれは完全にケースバイケースです。大学からの給料が出るか、医局がいいバイト先をもっているか、何回バイトに行けるかに依存します。

医局間、大学間の差は大きいように感じます。

ポイント

大学院に入る前、できれば入局前にアルバイトの内容に関しては確認しておくことをおすすめします。

 

細かい条件を聞くのが難しければ、アルバイトの回数だけでも。ちなみに、大学病院医師のアルバイト回数は下の通り。

アルバイト数

参照元:第9回医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料3

週2回アルバイトに行ければ、中央値くらいの生活ができそうです。

 

収入面と大学院に行くタイミング
この項に関しては、僕の想像に基づく話なので、参考程度にしてください。

大学院に行くのであれば、収入という観点からは、なるべく早いほうがいいのではないかと思います。

・大学病院から大学院生として支払われる給料
・アルバイトの給料

これらは、医師歴に関係なく決まる傾向にあるからです。

後になればなるほど

・勤務医をしていたら、本来もらえたはずの給料
・年齢が上がり、家庭の事情などで必要になるお金

これらとのギャップが大きくなっていくと思うのです。

あくまで想像ですが。

 

大学院生と年金/保険

 

大学院生になると、多くの場合、常勤医という立場を失うことになります。これにより年金、保険が変わります。

昔の話で忘れてしまっていたので、調べなおしました...

 

国民年金

国民年金とは、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の全ての人が入る年金制度です。

勤務医として働いていたときは国民年金第2号被保険者(会社員/公務員)という立場であったのが、大学院に入ると第1号被保険者(自営業)という立場になります。

これに伴って、自ら国民年金保険料を納付することが必要になります。

国民年金の額は、所得にかかわらず原則として保険料は定額で、年によって変わります。ちなみに2021年は16,610円/月です。

また大学院に入るに当たって、国民年金第1号被保険者に変更をする手続きをしなくてはなりません。住所地の市区役所または町村役場にて、期限は退職日の翌日から14日以内です。

 

厚生年金

厚生年金は、会社(病院)に勤めている期間だけ加入することができる制度です。

第1号被保険者の期間は加入できず、保険料を払うことはありません。

ただ厚生年金の受給額は

平均給与×一定乗率(決まった数字)×加入期間

で決まります。

大学院にいる年数分、将来受け取れる年金額が減ってしまいます。厚生年金は、保険料を後から追納付することはできません。

 

健康保険

日本では、全員が何らかの健康保険に加入しなくてはなりません。

勤務医として働いていたときは、天引きで支払っていた健康保険料ですが、大学院に入ると自分で支払う必要があります。

加入する健康保険の選択肢は、下記の3つです。

・任意継続(それまで勤めていた病院の保険を継続)
・国民健康保険
・医師国保

状況によってそれぞれ保険料が代わってくるので、お得なものを選びましょう。

 

大学院生活をつらいと感じることも

 

これまで書いてきた通り、大学院の期間はなかなかハードなスケジュールです。

所属する医局や、時期によって差はありますが...

 

学生といってもすでにアラサーであり、家庭をもっている医師もいます。金銭、時間といった点で、家族の負担になる場面もあります。

臨床志向の強い人は、「臨床能力が未熟な状態で、研究や医局の業務が多すぎる」と悩むこともあるでしょう。

こんな事情から、大学院がつらい、辞めたいと感じることもあります(僕もそうでした)。

もちろん卒業できるのが良いですが、どうしてもつらいときは、下の記事を読んでみてください。

 

医師大学院をつらい/辞めたいと思ったら【6つの確認事項】

 

大学院生活を乗り越えるポイント

 

先程も書いたとおり「卒業が可能な環境に入る(医局、指導医)」です。これに勝るものはありません。

 

それができないときはこちらです。

ポイント

先のことを考えすぎず、遠回りを楽しむ

はい、精神論です。

 

つらい時期はあります。ただ早く一人前になろう、早く結果を出そう、早く何者かになろう、何年後にはこうなっていたい...と考えると余計につらいです。

短期的な視点ではコスパの悪い時期ですが、最も多くの専門家に触れる時期でもあり、この時期に学ぶことは多いです。

そしてもし万が一卒業できなくても、自分の中に蓄積した経験や知識は、なくなったりはしません。

こんなことを考えながら、どうにか乗り切りました。

 

まとめ

医師の大学院生活について解説してきました。

まとめ

  • 基本は4年間。
  • 卒業すると博士号がもらえる。
  • 研究、講義を受ける、病棟業務、アルバイトをする。
  • 卒業難易度や忙しさは、環境次第。
  • 収入は、総じて低め。
  • 焦らず過ごすのがポイント。

「博士号は足の裏の米粒」なんて言われ方もしますが、僕はもう少し価値のあるものだと感じます。学んだことは多いですし、卒業した時には大きな達成感があります。

 

良い大学院生活が送れることを、祈っています。

さて、今回は以上です。

 

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