今回のテーマは「医局人事と左遷」です。
こんにちは、コアライ ミナトです。
この記事を書いている僕は元医局員で、退局・転職を経験し、現在は医局外で働きながらブログを書いています。
医局上層部や個々の医局員の思惑が絡み合い、その決定が人生に大きな影響を与える医局人事。
そんな医局人事の裏側について、今回は左遷という切り口から解説していきます。
通常の人事と左遷の違い
左遷とは、一般的には「これまでよりも低い役職・地位に落とされること」を指します。
ただ実際には、「役職名」が上がったとしても
・僻地に飛ばされる
・給料が大幅に下がる
・積み上げた技術やキャリアを、全く活かせないポストに就けられる
こういったことが起これば、「左遷された」と感じますよね。
ただ医局人事には「持ち回りで負担をする」という側面もあるため、希望が「常に」「全て」叶うわけではありません。
望まない人事が一回あった=左遷された、というのも偏った考えでしょう。
この記事での左遷の定義
では「医局人事における左遷」を、どう定義すればいいでしょう。
まず前提として、多くの医局員が希望する労働環境は、そこそこ似ています。
・便利な土地
・程よい業務時間
・人員が充実
・給料が良い
・長く同じ病院で
・それまでのキャリアを活かしたポスト
こうして就きたいポスト、就きたくないポストの一致率は高くなります(「実家が田舎だからそこで」など例外はありますが)。
そこでこの記事では、
上記のような希望が、同世代の医局員と比較して明らかに通らない場合=左遷
と定義することにします。
例えば下記の通り。
・全員が均等(回数・年数)に僻地に行っているならば、通常の人事。
⇛一部の人だけが送り込まれたのであれば(長期間ならば特に)、左遷
・50代での異動が頻発しているならば、通常の人事
⇛一部の人だけが、50代で馴染みのないポストに異動になれば左遷
・若手全員が2年毎に異動していれば、通常の人事
⇛一部の人だけが短期間で異動していたら、左遷(あるいは左遷予備軍)
医局側は「栄転だ」「勉強になる」と言いますが、医局内部にいると、
・その医局員と医局の関係性
・2つのポストを比べたときの良し悪し
・医局員ごとの異動頻度の差
これらがわかっているので、通常の人事か左遷か判別できることが多いです。
左遷が起こる背景
左遷が起こる背景は、主に2つです。
排除・懲罰的な左遷
まずはわかりやすい形での左遷です。
医局上層部からみて気に入らない、あるいは医局を運営していく上で考えが合わず邪魔になったから、というパターンです。実際起こると派手で、喧嘩や揉め事を伴うことも多いです。
ただこのパターンは時折目にする程度で、そう多くはない印象です。
人事問題解消のための左遷
もう一つの左遷が、医局人事の問題解決のための左遷です。より多くみられるパターンです。
先程も書いたとおり、多くの医局員が働きたい環境は一致しており、明らかな不人気関連病院も存在しています。
こういった病院にごく一部の人を長期間据えることができれば、全体としての医局員の満足度が上がり、人事の問題が1つ解消されるというわけです。
そしてそんな病院に据えられるのは…「医局上層部のお気に入り」、のはずはありませんよね。
こうして派手な揉め事にはならず、なんとなく不人気な環境へ異動し、長らくそのままというパターンです。
左遷がおこるタイミング
教授の交代後
教授が変わるタイミングというのが、最も左遷が起こりやすいです。教授が教室内部から出れば比較的穏やかですが、外部から来た場合は変化が大きくなります。
・気に入られる人、気に入られない人
・必要とされる技能、必要とされない技能
これらの基準が大きく変わり、排除・懲罰的な左遷が起こりやすくなります。
人事の時期
教授の交代時期以外にも、年に1度、人事異動という形で左遷は起こります。
大学にいると、方針や考え方の違いを抱えてしまい、ある日遠方へと排除されるというリスクが常にあります。
そうでなくても、ある年の人事で縁もゆかりもない土地への異動を命じられ、「未だにあそこにいるのか」という先輩もいます。
左遷されると具体的にどうなるか
栄転~維持という形を取るのが基本
・僻地の病院
・給料が異常に安い病院
・これまでのキャリアが活かせない病院
こういった環境に異動することになるとしても、栄転(役職名が上がる)~維持(役職名は同様)という体裁が整えられることが多いです。
そしてほとんどの場合、ポストが医局側から用意されます。待遇面は悪化するとしても、同世代のサラリーマンの平均を下回るようなことは当然なく、生活はしていける範疇です。
最悪の場合は…
本当に最悪の場合は、「どこか医局外へ出ていくように。ポストは自分で探しなさい」ということになってしまいます。
一般企業と同様「解雇するに足る明確な落ち度」が医局員にない限りは、何らかのポストは医局側が提示するというのが最低限のルール(だと僕は思っている)ですが、そうでない医局もあるようです。
左遷しにくくはなってきてはいる
ただ実情として、医局員を左遷するのは難しくなってきているとは感じます。
・医局の力が弱くなってきた
・転職や医局外の情報にアクセスしやすくなった
というのが主な理由でしょう。
「医局人事に強制力があるか」という問いへの答えは、YesでもありNoでもあります。
・医師を派遣(強制的にポストに就かせる)することはできず、あくまで紹介にとどまる
・ただし医局員を退局させることはできる
この微妙なバランスの元に成り立っているのが、医局人事です。
望まない人事が決定した場合、
・医局員側としては、「人事を飲むか」「医局を辞めるか」
・医局側としては「拒否されたら人事を引っ込めるか」「医局員を失うか」
双方がこんな選択を迫られるわけです。
医局員にとって医局を離れるハードルが低くなり、医局として人手不足が深刻になれば、左遷はしにくくなります。
左遷されたと感じたら
納得できたら
左遷されたと感じても、それを飲みこむことができれば、その人事に従うことは悪い選択ではないと思います。
左遷=不幸というわけでもありません。そのポストを希望する人が少ない以上、安定してそこにとどまれる可能性が高いです。
希望が通るにせよ通らないにせよ「異動がある」というだけで、生活面や金銭面で大きな負担がかかります。
希望と異なる環境でも、「異動がない(可能性が低い)」のであれば、トータルでみて得である場合もあるでしょう。
個人的には辞めたほうが良いと思う
ただ僕個人の本音としては、左遷されたと感じた段階で、医局を辞めたほうが良いと思います(どうしても離れたくない事情がないならば)。
理由は下記の3つです。
長期で損する可能性が高い
先程「左遷の定義」で書いたとおり、左遷とは単に望まない人事をされるだけでなく、同世代と比べて明らかに悪い扱いを受けている状況です。
医局と医局員のどちらに問題があるのかは様々ですが、少なくともそういった傾向ができてしまっている以上、いつか優遇されてトントンになるという可能性は低いです。
「今」より多少改善する可能性はあるかもしれませんが、平均以上の扱いは期待しにくいでしょう。
転職によって好待遇が得られる可能性がある
例えば僻地へ飛ばされる場合、どうせ縁もゆかりもない土地であるならば、医局外に転職してしまったほうが良い待遇を手に入れられる可能性が高いです。
一般的に給料は「需要と供給の関係」で決まるため、医師の場合は都市部で安く、田舎で高く設定させています。ただし医局人事で医師を賄っている病院はこの限りではなく、「僻地なのに同県の都市部より給料が安い」ということが、よくあります。
本当に最悪の事態は…
本当に最悪の事態は、
希望しない人事をどうにか飲み込み、縁のない僻地で根を下ろしたにも関わらず、5年後10年後にまた別の土地に異動になる。
という状況です。
先程「皆が希望しない病院であれば、そこに居続けられる可能性も高い」ということを書きましたが、それはあくまでも傾向の話であって絶対ではありません。
まとめ
医局人事と左遷について、解説してきました。
ポイント
- 左遷は未だにある
- 時代とともに、左遷されにくくはなってきている
- 同世代と比べて明らかに希望と異なる人事をされていたら、左遷(予備軍)かも
- 排除・懲罰的な左遷から、人事の問題を解消するためのものまである
- 教授交代のタイミングで起こりやすい
- 役職名上は同等(以上)ポストが用意されるのが基本
- 左遷されたと感じても、それを飲むのは悪い選択肢ではない
- 個人的には左遷されたと感じたら、転職を考えたほうが良いと思う
時代とともにマイルドになってきてはいるけれど、まだまだシビア、というのが医局人事の実態だと感じます。
さて今回は以上です。この記事が将来を考えるきっかけになりましたら、幸いです。
下記の記事では、医局人事とうまく付き合っていくためのポイントをまとめています。個人の努力ではどうにもならない部分も大きいですが、できることが全くないわけではないと思います。
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