こんにちは、コアライ ミナトです。
今回のテーマは「医局人事の決まり方」です。
この記事を書いている僕は元医局員で、退局、転職を経て現在に至ります。
医局員にとって、人事異動は非常に大きなイベントですよね。生活面でも、金銭面でも影響があります。今回はそんな「医局人事の実態」について、解説していきます。
この記事を読むと分かること
- 医局人事の概要
- 医局人事の決まり方(表と裏)
- 医局人事をうまく乗り切るポイント
医局人事の目的
医局人事の主な目的は、2つです。
地域の医療を支える
医局は大学病院+関連病院のポストと、医局員からなる組織です。
関連病院のポストを必要な人員で埋めることによって、その地域一帯の医療を支えています。
ポストに欠員が出た場合は、それと似たようなキャリアの医局員を補充することで、量と質両方が維持されます。
特に募集をかけても医師が来にくい田舎の病院では、医局の医師派遣能力に頼るところが大きいです。
関連病院にとって医局ってどんな存在?メリット、デメリットを解説
医局員の教育
もう一つの人事異動の目的は、医局員に経験を積ませることです。
医局人事にのるメリットは、下記のとおりです。
・診療経験を積める
・頼れる人が増える
・マネジメントを学べる
・人間関係で煮詰まりにくい
・いろいろな土地に住める
・人事ならば、転職時にネガティブに感じられにくい
どうしても1つの施設では、症例や経験が偏りがちです。さらにどんな病院にもローカルルールや問題点があります。
将来の選択肢を狭めないため、また日々起こる問題にうまく対応していくためには、少なくとも数病院での修行経験は必要だと感じます。
また昔の上司や同僚は、ちょっとしたときに相談がしやすく、非常にありがたい存在です。
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医局人事の決まり方(概要)
人事権
医局は、医局員の人事権を持っています。教授と医局長などの数人が、次年度の人事を決定します。
医局長が取りまとめを行い、最終的には教授が確定する(教授の意向がより優先される)という場合が多いです。
希望調査
多くの医局で、医局員に対して希望調査があります。
調査方法は様々です。
・希望調査票が送られてくる
・面談がある
・飲み会や同門会、日々の仕事のなかでそれとなく聞かれる
(コロナ下では会合はありませんが)
など。
これを参考に、人事が組まれます。
かならず希望が叶うわけではありませんが、「医局員の意向を一切聞かない」という医局は、最近では稀なように思います。
決まる時期
次年度の人事が決まる時期は、医局によってばらつきが大きいようです。
「半年前~3ヶ月前までに伝えられる」というのが一般的ですが、もっと直前に決まるところもあります。
そして連絡がある少し前の時期が、次年度の構想を練っている時期ということになります。
年齢ごとの傾向
20代~30代前半の医局員は異動が多く、希望も叶いにくいです。数年に1回の異動というのが一般的ですが、半年~1年という場合もあります。
30代後半~40代前半になると、異動の頻度が下がります。
40代半ばでおおよそ勤務先が固定され、定年まで勤め上げるというのが1つのモデルケースです。この頃には居住地の希望も、ある程度は考慮されます。
ただ医局の状況によっては、50代あるいは定年間近での異動というのも起こりえます。稀、というわけではありません。
50代の異動は、生活面でも、退職金などの金銭面でもかなり負担が大きいです。
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・50代での異動を命じる医局かどうか
・自分が命じられる可能性がどれくらいあるか
・命じられた時、それを受け入れられるかどうか
40歳頃までには、このあたりを見極めたいものです。
医局人事の決まり方(実態)
ここからは、医局人事の決まり方の実態について解説していきます。
数人の価値観が反映される
先程も書いたとおり、教授や医局長など数人が人事権を持っています。そして長期に渡ってその顔ぶれは変わりません。
こうして数人の価値観が毎年の人事に影響し、人事の傾向は長期間、似たようなものになります。
個人の希望が通るか
人事において「個人の希望が通るかどうか」という話です。
「医局の都合が優先で、医局の都合と個人の希望が合致するときには通る」というのが、実際のところです。
「関連病院のポストに大きな穴を開けてまで、個人の希望に配慮してくれることはない」と考えておいたほうがいいでしょう。
「いずれは」という言葉は話半分に
医局に勧誘される際に、
「〇〇市に住みたい?うちの関連病院に〇〇病院があるよ!(いずれはそこで働くと良い)」
ということを言われることも多いでしょう。
ただし、ここには言葉にされていない多くの事実が含まれています。具体的に言うと、
・「ベテランになったら」であって、若いうちは転々とすることになる
・ベテランになる頃には、約束をした現在の医局上層部は退官している
・〇〇病院の定員と、実際の希望者数は考慮されていない
・いざとなれば医局の事情が優先される
言っている側も嘘をついているつもりないはずですが、「いずれは」が実現する確率は50 %くらいと考えておくのが妥当だと思います。
約束が守られるか
希望と異なる病院に異動となったとき、「2年間だけ」など条件が出されることもあります。この約束が守られるかどうかは、将来を考える上で重要なチェックポイントです。
希望者が少ない病院の場合は、「もう1年だけ」と延長されていく場合も多いです。
過去の人事の傾向を確認し、信用のできる医局かどうかは、早い段階で見極めておいたほうがいいでしょう。
個人の事情に考慮するかどうか
個人の事情に考慮するか、均等に人事を行うかは、医局によって差がでるところです。
例えば医師同士の夫婦がいた場合、
・2人の勤務先を合わせて、固定するか
・相手の勤務先を考慮せずに、異動があるか
の2パターンが考えられます。
配慮があるパターンでは医師夫婦が医局に残りやすくなる反面、それ以外の医局員が代りに異動することになります。
こうして医局の都合と個人の都合が複雑に絡み合いながら、人事が決まっていきます。
決まった人事を拒否できるか
一度決まった人事は、基本的に拒否することができません。
それが認められた場合、次の人もその次の人も拒否できることになり、人事そのものが成立しなくなります。
あるいはポストを空白のまま放置するか、という話になります。
こうして望まない人事を命じられた場合は、
・その人事を飲む
・医局そのものを辞める
の2択になります。
ただ正式な決定ではなく「〇〇病院どう?」という相談・打診の段階では、断れる場合もあるようです。
医局人事って拒否できる?状況ごとに解説
うまく乗り切るポイント
最後に、医局人事で希望が通りやすくなるポイントを解説します。
どれも確実なものではありませんが、ある程度は効果のある努力だと思います。
「気に入られること」は重要
医局上層部に
人事は教授や医局長など、数人で決められます。
「公平に」という原則はありますが、実際のところは気に入られているかどうかなど、個人の価値観によるところも大きいです。
日々の仕事で信頼を得るだけでなく、飲み会(コロナの影響で現在は無いですが)や勉強会などに参加し、気に入られるというのはどうしても必要になってきます。
ただし大学病院勤務を希望しない場合は、気に入られすぎてしまうのも良くないかもしれません。
大学病院はいわば本店であり、優秀で医局上層部が気に入った人材が集められやすくなります。
勤務希望病院の上司に
勤務を希望する病院の先生と、良好な関係を作っておくこともポイントです。
そういった先生方は、直接的な人事権は持っていないものの、
・あの人にうちで働いてもらいたい
・よく働いてくれて助かっているので、ぜひ長くいてほしい
・あの人にしかできない仕事がある
といってもらえるか、
・うちに来てほしくない
・そろそろ引き取って欲しい
といわれてしまうかでは、大きな違いがあります。
そこに居続けるだけの理由を作る
勤務希望病院で重宝される技術や専門性を持つと、そこに留まりやすくなります。
その病院でしかできないような研究を行う、論文を書く、というのもプラスに働くでしょう。
このように「そこに居るだけの理由」があれば、人事の面では有利です。
逆に目立った特徴がなく、そつなくこなす点が評価された場合は、「どこに飛ばしても大丈夫」と便利に動かされてしまうかもしれません。
人気病院を希望しない
大抵の医師の働きたい病院(望む労働条件)は共通しており、それを満たす一部の関連病院に、希望が集中します。
例えば下記の通り。
・仕事量が適正
・人員が充実している
・雰囲気がいい
・給料が高い
・便利な土地にある
こういった病院で働くことを希望した場合、それが叶う可能性が低くなります。
さらに、
・「いずれは人気病院で働かせてやるから」と、望まない病院での勤務を命じられる
・一度人気のポストにつけたとしても、短期間で異動になる
と、総合的にみると損する場合もあります。
逆に、皆と違う希望を出せば、そこに長くとどまれる可能性は高くなります。
まとめ
医局人事の決まり方と、うまく乗り切っていくポイントについてまとめました。
ポイント
- 人事の目的は、地域の医療の維持と医局員の教育
- 教授・医局長など数人が決める
- そのため人事に一定の傾向がある
- 個人の希望・事情は「考慮される」程度
- 医局上層部や勤務希望病院スタッフと、良好な関係を築くのが重要
- 希望を叶えるためのコツは、他にもいくつかある
いかがでしたか?
面倒くさいと感じる人も多いかもしれませんが、「うまくやれる人」というのもかなりいます。
こういった人は、「関連病院で働ける」「職場が保証される」「休業が必要な時、代理を立ててもらえる」といった、医局の恩恵を大いに受けることができます。
この記事が、「うまくやれる人」になる手助けになれば幸いです。
さて、今回は以上です。
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