働き方/その他

勤務医にとっての持ち家リスクを解説

2021年9月6日

持ち家リスク

 

勤務医です。年の近い同僚が、家を建てたと聞きました。自分も家を建てるか迷っています。

今回はこんなテーマです。

「持ち家か賃貸」どちらがいいかというのは、途切れることのない議論の対象です。これは医師に限ったことではありません。

近年はマネーリテラシー(お金に関する知識)を説く人の多くが賃貸派である影響か、「持ち家はリスク」という考えを聞く機会が増えてきました。

一方で街を見渡せば多くの分譲マンションや戸建ての住宅が建てられており、持ち家派の根強さも感じられます。

難しい問題ですね。

 

この記事を書いている僕は、勤務医生活約10年。その間に様々な考えの医師と話をし、様々な組織に属してきました。

その経験から、僕は「勤務医である限りは賃貸がいいかな」と考えています。

広い持ち家への憧れはもちろんありますが・・・

 

今回は一般論に加え、勤務医ならではの事情を考慮しつつ、「持ち家か賃貸か」というテーマで考察をしていきます。

 

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一般的な持ち家VS賃貸論争

 

まずは勤務医に限らず、一般論でのそれぞれのメリット・デメリットを解説します。

持ち家

メリット
・広い間取りが実現しやすい
・自分の好きにカスタマイズできる
・ローン返済後は負担が軽い

デメリット
・引っ越しができない
・いざとなっても住宅費を削れない
・税金(固定資産税など)や修繕費がかかる

 

賃貸

メリット
・引っ越しができる
・その時々の事情に合わせて住み替えられる
・税金(固定資産税など)や修繕費などの負担が少ない

デメリット
・一生家賃を払い続けなくてはならない
・自分好みにカスタマイズできない
・広い間取りは多くない

まとめると、持ち家は「広く、好みの家に住むことができる」賃貸は「勤務場所や収入、家族構成の変化に柔軟に対応できる」といった強みがあるということです。

 

勤務医ならではの事情

ここからは勤務医ならではの事情を考慮しながら、「持ち家、賃貸」を比べていきます。

まず結論を言うと、勤務医は

・正社員でありながら、働く場所や収入という面で不安定
・今後の社会の変化で、よりその傾向が強まる可能性がある

という理由から、持ち家はリスクが高いと思われます。

詳しくみていきましょう。

 

医局に属している場合

まず医局に属している勤務医についてです。

 

人事異動

医局は、医局員に対して人事権をもっており、基本的に医局人事には従わなければなりません。

将来的にどの病院で働くかわからない以上、持ち家は大きなリスクです。

 

家を持つとそれが配慮され、異動が少なくなるという一面も確かにあります。

僕も医局員時代に、「異動がつらいので医局を辞めようか迷っている」と同僚に打ち明けたところ、「家を建てたら異動が減る」というアドバイスを受けました。

実際これは傾向としては正しく、身の回りでも家を建てると異動を命じられることが格段に減っていました

ただしこれはあくまでも傾向であり、絶対に異動にならないわけではありません。

 

医局には、勢力圏の医療を維持する使命があります。医局員を関連病院に送れなければ、その地域の診療に影響します。場合によっては、そこが別の大学の関連病院になってしまいます。

そういった事情よりも、個人の住宅事情を優先させてくれることは稀です。

 

また転居を伴わない人事異動であっても、持ち家はリスクです。病院が変われば給料が変わるからです。

1回の異動で、年収が数百万円下がることは珍しくありません。

現在の給料が続くと思ってローンを組んだ後に、給料の安い病院に異動になると破綻してしまいます。

 

ポイント

異動は「勤務場所が変わる」「給料が変わる」という2つの点から、持ち家は大きなリスクになります。

 

退職金

「退職金で住宅ローンの残りを完済する」というのは、多くの人が考えることです。しかし医局人事は、退職金に大きなマイナスの影響を与えます。

下記は「大企業のモデル退職金」というデータをもとに作成したもので、大企業の退職金の平均値と勤続年数の関係を示したものです。(医師に限ったデータは見つかりませんでした)。

単位:万円

勤続年数➡3年5年10年15年20年25年30年35年定年
会社都合68.7123.8321.8588.4965.91426.92012.92455.22511.1
自己都合32.863.4186.1407.6801.81287.01898.32368.3

参考元:りそな年金研究所 企業年金ノート2021. 4 No.636

医師の退職金は1000万円~2000万円とのことなので、そこまで離れた水準ではないはずです。

ポイントは、

・勤務年数に応じて、大きく額が伸びていく
・自主退職をすると、大きく減額される

ということです。

「医局人事で病院を転々とし、その都度自主退職を繰り返す」というシステムは、退職金制度との相性が悪いです。

「40歳代で異動がなくなり、定年まで1つの病院でいられる」というのが、モデルケースではあります。

ただ50歳代の異動も珍しいものではありません。このような場合は〇百万円という退職金が吹き飛ぶことになります。

 

非常勤枠の減少/値崩れ

大学病院勤務医の場合、非常勤=アルバイトが収入の大きな柱となっています。

昨今、特にコロナウィルス感染拡大の影響で、昔から馴染みの非常勤先も経営が厳しくなっており、大学病院医師バイトの回数の制限や雇止めなどが起こり始めています。

こういった関係性は一度切れると修復が難しく、コロナが収まったとしても、以前までと同様の条件で非常勤が確保できるかは不透明な状況です。

こういったことから、以前までの収入が維持できるかわからず、住宅購入も慎重にならざるを得ません。

 

医局内外問わず関係する事情

続いては医局内外問わず起こりうる、持ち家リスクについて説明します。同じくポイントは働く病院と収入減の可能性です。

 

病院の統廃合

現在日本の病院は、どこも経営が楽ではありません。例えば厚労省は、全国の公立病院の3分の1に「統廃合を含めた再編の検討を求める」という方針を発表しています。

この状況にコロナウィルス感染症拡大が拍車をかけています。

「働き口が全くみつからない」という未来は、さすがに現時点では考えにくいです。

ただ勤務先の病院が経営破綻してしまう、あるいは別の病院に吸収されてしまうということは十分に考えられる事態です。

そうなると勤務先を大きく変えなければならないかもしれませんし、収入も減ってしまう可能性があります。

 

病院の経営悪化

上でも書いた通り、病院の経営はどこも楽ではありません。統廃合とまでは行かずとも、経営状態の悪化というのはかなり高い可能性で起こります。

そのような場合は、給料が減らされるかもしれません。

基本給を下げることは難しいものの、ボーナスや業績給、調整給、あるいは〇〇手当という名目で支払われている給料は、比較的引き下げやすいとされています。

僕が過去に働いた病院でも、財政が悪化したため〇〇手当を廃止しようかという議論が起こっていました。

こういった事情から、収入減になってしまう可能性があります。

 

働き方改革

勤務医は一般的に忙しく、長時間の残業している医師も多いはずです。こうして残業は負担になる反面、収入源となってきたこともまた事実です。

しかし今後は、ここに規制が入る可能性があります。

医師の過重労働については問題視されており、2024年からは時間外労働を上限規制が実施されることになっています。

 

また病院側も経営という観点からは残業代を削りたいと考えており、残業を絞る動きがより活発化していくことが予想されます。

これまでは性善説に基づき、「患者さんのために必要ならば」と青天井に残業代が請求出来た病院もありますが、今後そういったことはできなくなるでしょう。

残業規制も、収入減に繋がる可能性があります。

 

まとめ

勤務医にとっての持ち家=住宅購入のリスクについて解説しました。

ポイント

  • 人事異動
  • 退職金
  • 非常勤枠の減少/値崩れ
  • 病院の統廃合
  • 病院の経営悪化
  • 働き方改革

ポイントは「働く病院が変わる可能性」と「収入が減る可能性」です。

これまでも低くないリスクでしたし、今後の社会情勢の変化とともに、より大きくなっていくと考えられます。

 

逆にこれらの要素をクリアできれば、勤務医も持ち家のリスクを減らせるということです。例えば、下記のように。

勤務先を変えない:医局を離れる、経営が安定した病院に勤める

金銭的な余裕を持つ:資産を受け継ぐ、節約をする、経営が安定した病院に勤める、早くに必要な金額を稼ぎきる、医師以外の収入源を手に入れる

 

さて、今回は以上です。この記事が人生設計の参考になれば幸いです。

 

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