今回はこんな悩みについてです。
この記事を読んでいる方は、仕事や人間関係で苦労されているのだと思います。
この記事を書いている僕は元医局員で、退局、転職を経験し現在に至ります。
自分がしんどい経験をしたこともありますし、これまでのキャリアの中で多くの退局経験者と話をする機会がありました。
こんな経験を元に、医局でおこりやすい理不尽・嫌がらせとその対処法について解説していきます。
理不尽・嫌がらせが起こりやすい背景
医局という組織は、構造上どうしても理不尽や嫌がらせが起こりやすいと感じます。その理由は、下記のとおりです。
「医療のため」という言い訳ができる
医局あるいは医療全体の特徴として、個人としてつらい出来事があっても、はっきりと「理不尽だ」「嫌がらせだ」と断定しにくいということがあります。
・若手の教育のため、強く指導する
・患者を助けるため、スタッフを咎める
・医局運営のため、忙しいポストにつける
・地域医療を支えるため、頻繁に転勤させる
このように「医療(社会・患者)のために、仕方ない」という名目で、ある程度の理不尽や嫌がらせが、まかり通ってしまう土壌があります。
上層部が強い
医局という狭い世界のなかで、教授や医局長といった上層部の力は絶大です。ごく少数の人が、長期に渡って医局を指揮し、外部の目はほとんど届きません。
近年は医局制度の衰退、崩壊といわれていますが、それは
・医局員が入るか入らないか
・医局員が辞めるか辞めないか
という点で弱くなっているだけであって、医局の細かな方針決定に関しては、まだまだ一医局員が口を挟むのは難しいです。
こうして医局上層部の意向(ときに好き嫌い)が反映され、一度決まってしまった流れ(理不尽・嫌がらせ)は改善しにくくなります。
大学病院という環境
大学病院の勤務医は、こなさなければならない業務の量が多く、ストレスもかかりがちです(もちろん環境によって差はありますが)。
例えば労働時間だけをみても、大学病院勤務医の方が長い傾向にあります。
画像引用元:第9回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料3
60時間/週は250時間/月であり、これは一般的には過労死のリスクがでてくるラインです。おおよそそのラインを境に、大学病院医師の割合が高くなっています。
こうして大学にいる医局員全体にストレスがかかり、周囲への理不尽な行動につながるという要素もあるでしょう。
不均等を前提として成立している
医局でおこる理不尽は、悪意や好き嫌いなど個人的な感情に基づくものばかりではありません。
「一部の人にとって理不尽なのは分かっているけれども、それを解消したら医局が維持できなくなる」というパターンもあります。
・多くの業務
・頻回の異動
・僻地勤務
これらを一部の人に集中させると、それ以外の人にとっては「働きやすい医局」となります。
結果として多くの医局員を抱えることになり、勢力も大きくなります。
こういった医局は不均等を前提として成立しており、全員を均等に扱うと残れない人が続出するため、現状を変えられないというわけです。
理不尽・嫌がらせの具体例
人事異動
医局人事は、教授や医局長など数人が決定し、外部の目は届きません。そのため個人の価値観がある程度反映されてしまいます。
左遷というのがわかりやすいですが、その他にも同世代間で比べても異動頻度が明らかに違う場合や、定年間近で異動を命じられる場合も、理不尽にあたるでしょう。
確かに「医療を支えるためにやむを得ない」「より良いポストへの栄転」という理由はつけられます。
しかし例えば50代で異動を命じられた場合、退職金のことも考慮すると○百万円を一瞬で失う可能性があります。
医師が医局人事で失うお金は○万円!?試算をしてみた
過剰に厳しい指導
日々の仕事で過剰に厳しく指導するというのも、理不尽の1つです。個人的な感情が介在し、常態化していれば、それは嫌がらせということになります。
カンファレンスで、というのがわかりやすい例ですね。
若手などで、確かに至らない点のあるのはわかるのですが、
・なぜそう思ったのか
・〇〇については調べたのか
・これで十分だと思うのか
と詰め寄られ、泣きそうになっているのをみると、過剰ではないか感じることも多いです。
経験が積めない
自分が希望する経験ができないというのも、「理不尽」です。
もちろんポストや症例には限りがあって、常に全員の希望が叶うわけではありません。
ただ偏った症例や仕事内容(研究や教育など)が多く割り当てられ、医局外で生きていくだけの臨床経験が積めないというのは、明らかに憂慮すべき事態です。
医局を辞めるとき
医局を辞めるときというのは、嫌がらせが起こりやすいタイミングです。
不安を煽る
不安を煽るというのは、よくある引き止めの手法です。
・医局外では生きていけないぞ
・医局外にいい病院はないぞ
・医局を辞めてこんなに不幸になった人がいるぞ
実際には、医局外にもいい病院はあって、患者さんもいて、指導医もいます。何もかも自分でできなくても、医局をでることは可能です。
こんな不安に対する考え方や乗り越え方は、別の記事でまとめています。
医局を辞めるときの9つの不安/葛藤と、その乗り越え方
転職やその後の仕事を妨害する
実際に経験したことはありませんが、「辞めた後、この地域で仕事できると思わないように」などと、転職やその後の仕事を妨害するようなことを言われることもあるようです。
口にするだけならまだしも、実害を被る可能性があるならば、弁護士などしかるべき機関に相談する必要があるかもしれません。
実際【退局代理.com】という、弁護士さんが展開している医師専門退職代行サービスもあります。気になる方は、下の記事も読んでみてください。
医師専門の退職代行サービス【退局代理.com】を直接取材~詳細・メリット・評判~
医局から追放する
大学のスタッフとして働いていると、「医局の運営方針と合わない」という理由で追い出されることもあります。
栄転という形式をとって他のポストが用意される場合と、単に「どこか他所へ行くように」と追い出される場合があります。
つらいと感じたら
具体的な理不尽や嫌がらせをみてきました。これらをつらいと感じているならば、一度はそのことを伝えたほうが良いように思います(可能であれば)。
・・・など。
ただ残念ながら、「根本的に、長期に渡って解決する」というのは難しい場合もあります。
直接伝えて対応を待つのと並行して、少しずつ医局を離れる準備を初めておくことをおすすめします。例えば下記のように。
・家族と時間をかけて話す
・同僚、上司に味方になってもらう
・健康上の不安を取り除く
・経済的余裕を作る
・知識や技術を高める
・資格をとる
・医局人事のタイミングをリサーチする
・公開求人で相場観を養う
・決断するタイムリミットを決める
仮に医局に居続けたとしても、しておいて損はない準備です。
医局を辞めたいと思ったら 医師の転職準備9選
状況が改善しない場合
直接伝えても状況が改善しない、あるいは伝えることが難しいのであれば、医局を離れるということも選択肢となるでしょう。
「5年10年現状が続いたときに、それを良しとできるかどうか」が、1つの判断基準となるでしょう。
まとめ
医局で起こりやすい理不尽や嫌がらせと、その対処法について解説しました。
ポイント
- 嫌がらせ・理不尽と断定しきれないグレーゾーンが広い
- 人事や普段の仕事、辞めるときなど様々な場面で起こり得る
- 一度は改善を要求したほうが良い
- 改善しない場合は、医局を離れるのも選択肢
- 実害を被りそうになったら、専門家への相談も
医局上層部が医局員をいじめて楽しんでいるというわけではなく、なんとか社会のために体制を維持しようと力を尽くされていることもよく分かっています。
ただ「この医局にいて、しんどい」という個人の感覚もまた真実であり、重視すべきものです。
悪意の有無や社会のためかどうかはさておき、個人が「嫌だ」と感じたときに、幸せのために行動をおこすのはごく自然なことだと思います。
さて、今回は以上です。この記事が、将来を考えるきっかけになれば幸いです。
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