こんにちは、コアライ ミナトです。自身の経験を元に、医師の転職や医局についてのブログを書いています。
今回は、医師専門の退職代行サービス【退局代理.com】について取材をさせていただきました。
退局代理.comは、桜井 康統弁護士が展開しておられるサービスで、SNSでも医師の間でよく話題になります。
そんなわけで今回は、
・どんなサービス?
・どんな人におすすめ?
・桜井先生ってどんな人?
・医局人事って、法的にどうなの?
などの疑問を、ここぞとばかりにぶつけてみました。
では、いきましょう!
退局代理.comについて
利用者
Q. 利用される医師について、教えて下さい。
A. 人数は秘密にさせてください。ただし、相当数のご依頼を受けさせて頂いております。
30代の先生が多く、科は全くバラツキがあります。退局代理.comというサービス名にしているためか、医局に所属されている先生からの依頼が多いです。
コメント
やっぱりこの名前は印象的ですよね。間違いなく需要があるサービスだと思います。
30代の医師が多いというのも、「医局での修業が一段落して...」というタイミングだからでしょうか。
対応エリア
Q. 日本全国、対応をしていただけるのでしょうか?
A. 全国対応しております。実際に全国からご依頼を受けております。
強み
Q. 他の退職代行サービスにはない、強みはありますか?
A. 退職代行は弁護士に依頼した方が良いと考えます。有給休暇の取得や、退職日の交渉等のやり取りが可能になるからです。
弁護士が代理人として立てば、病院側と不要な争いになることがありません。弁護士でない者が病院側と条件等について交渉を行うことは非弁行為といって弁護士法違反になります。私は医療従事者さまのご依頼だけを受けているため、専門特化したノウハウが蓄積しております。
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なるほど...弁護士さんでなければできないことが法律で決められているのですね。
確かに、「辞めると伝えてもらったはいいものの、退職日や金銭面などは自分で話をつけなくてはいけない」では、半分くらいしか解決していませんよね。
桜井弁護士について
Q. 桜井先生は、普段どういった依頼・相談を受けておられるのでしょうか?労働関係がご専門なのでしょうか?先生について教えて下さい。
A. 労働関係でいうと独立するまで所属していた事務所に労働法で有名な弁護士がおり、薫陶を受けました。弁護士は企業顧問だけやっていてはその責務を全うできないと考えています。労働者側、社会的に弱い立場にある市民の事件もやらなければなりません。
他方で、規模でいうと小さな会社が多いですが勢いのある顧問先企業が40社ほどあります。契約書周り、債権回収、労務からM&Aまで幅広く企業法務も行なっています。
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普段から労働に関連するお仕事をされているというのは、心強いですね。
とある日曜日の21時に、取材の申し込みメールを送らせていただいたのですが、1時間未満で「取材OK」のお返事が。また質問を送ってから2日間で、これだけの内容をお返しいただきました。いろいろな方に取材をさせていただく機会がありますが、この早さはすごいと思います。
きっかけ・理念
Q. どのようなきっかけ・理念で、医師の退職代行サービスを始められたのですか?
A. 幼馴染の親友に医師がおり、彼とは膨大な時間色んな話をしてきたわけですが、そんな中で彼から医師の奉仕の精神というものがややもすればブラックな労働環境を醸成しているのではないか、医療人材の流動化こそ良質な医療の源泉ではないかという問題意識を共有され、弁護士として協力できるのではないかと考えました。
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「医療人材の流動化」って重要ですよね。医師がもっと、よりよい環境に向かって動くようになれば、医師全体の労働環境や待遇も良くなっていくはず。
「時間やお金よりも、やりがいや経験をとる」というのは、望んでやる分には全くいいと思います。ただ「本当は、もうここで働きたくない」と思いながらも、「不安だから」「恐いから」で、足踏みするのはあまりいい状況ではないですよね。
医局関連
Q. 【退局代理.com】って、「医局を辞めるときのトラブル」を連想する名前ですね。医局に関連することも、ご相談させていただけますか?
A. 医局を辞めるという意味での、退局の代行も行なっております。その点で、日本初のサービスと言って間違いないかと思います。その場合は、あわせて勤務先の病院の退職代行も依頼される先生方が多いです。
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正直「医局」というのはかなり特殊な文化で、なかなか他職種の方に理解してもらうのが難しいです。
そういったことに理解があるというのは、医師の退職代行をするうえで必須といえるでしょう。
こんな人におすすめ
Q. 「退職手続きは自分で行う・自分で伝える」が、やはり基本ではあると思います。そんな中で、どんな状況であれば退職代行の利用がおすすめでしょうか?
A. 「自分で言うことにストレスを感じそもそも言い出せない」ということは、それ自体問題です。言っても相手にされなかったという相談も少なくありません。
弁護士は本人の代理人です。その意味で代行ではないのです。だから退局「代理」というネーミングです。本人の代理人として、私から真摯に退職の意思表示を行います。
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退局・転職経験者として、代行サービスを利用したい気持ちはとてもよくわかります。
僕が所属していた医局はブラックというわけではなく、結果的に話し合いも短時間で終わったのですが、それでも伝えるのはかなり気が重かったです。行きの道中で、具合が悪くなってトイレに籠ってしまったり...
タイムスケジュール
Q. 利用する際には、いつごろまでに依頼をすればいいでしょうか?タイムスケジュールなどを教えてください。
A. 法的には2週間前までに通知すれば退職可能です。
もちろん病院側の負担がありますので、なるべく早めに伝える方が望ましいとはいえます。しかし、もう仕事に行けないという状態の先生もおられます。その場合は私から通知を出して、以降出勤しないこともあります。最速で即日退職の通知を出すことも可能です。有給休暇の申請を含め、柔軟に対応しています。
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一般的に「医師の退局・退職は、半年~3か月前までには伝えたほうがいい」と言われていますが、それが難しいような人は退職代行の利用も選択肢に、というイメージでしょうか。
どこまで自分でするか
Q. 「これは自分(依頼医師)で伝えます、もしこうなったら対応してください」など、できる限りは自分で、という希望も叶えてもらえるのでしょうか。
A. そのようなご依頼でもお受けいたします。
Q. 逆に、「医局、職場からの連絡はもう受けたくない、関わりたくない」という希望も叶えてもらえるのでしょうか。
A. 弁護士は本人の代理人になることができます。私が窓口となってやり取りすることが可能です。
転職への影響
Q. 退職代行サービスを利用したことは周囲には知られたくないと思いますが、そういったことは可能でしょうか。また利用したことによって、転職で不利になったりはしないでしょうか?
A. 基本的に病院長などの代表者宛に退職通知を出しますが、事務手続上、その他担当者に知られることはあります。
しかし、転職で不利になることは考えられません。最近ですと、美容の世界に転職される先生も多いです。転職活動がこれからの先生も、仮に嫌がらせがあれば相談してくださいとお伝えしています。
医局、病院側としても弁護士がついている医師に対して転職の妨害活動をすることはむしろ考えにくいと思われます。
コメント
「代理を立てて退職をした」ということをオープンにされて、キャリアの面で不利になるということはなさそうですね。むしろ「退職をするにあたって弁護士がつけられた」という医局・病院の方が、不利になるかも。
退職代行を考えるような職場であれば、「その後の自分を守る」という意味でも、利用するメリットはありそうです(この点は、後でさらに掘り下げていきます)。
利用料金
Q. 退局代理.comの、利用料金を教えてください。
A. 39,800円です。医局と勤務先双方に通知する場合は、39,800円×2=79,600円になります。
残業代請求について
Q. 退職代行以外にも、残業代などの請求に関してもお願いできるとのこと。こちらについても教えていただけますか?
A. 退局代理.comから残業代請求のご依頼に繋がるケースは、今のところ少ないです。しかしご依頼いただいた案件でのトータルの請求額は、一般的な残業代請求の案件より多額になりました。単純に医師の時給が高いため、時間外労働の単価が高いというのがその理由です。
みなし労働
Q. 医師の場合、「みなし労働」「固定残業代」「年棒制」などの職場の規定や、「自己研鑽である」などの理由によって残業代をもらうことが難しい職場も多いようです。こういった職場にも残業代の請求をできますか?
A. 医師の退職代行を行なっておりますが、私の本望は医療従事者の労働環境改善です。
特に医師の残業の定義は非常に曖昧で、奉仕の精神から病院に夥しい時間外労働や不当な労働条件を強いられているケースを散見します。こういった状況を改善すべく、その一例として残業代請求のお手伝いをできればと考えています。
法的には、固定残業制でも年俸制でも時間外労働の対価を支払う義務が生じます。自己研鑽も自主的なものでなく業務命令でなされていれば、労働時間にカウントされることになります。その他の条件改善などの相談も承っています。
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ポイント
2024年に適用となる医師の働き方改革(年960時間、特例水準として年1860時間の時間外上限規制)に関しては、その数字をめぐって多くの議論があります。
ただ僕個人としては、「現行の法律に基づいてきちんと残業代を払うだけでも、医師の労働環境はかなり改善するのでは」と思うのです。
請求するとどうなるか
Q. 金銭を請求しようとすると、裁判など大がかりなことになるのでしょうか?時間がかかったり、周囲に知られてしまったりするのでしょうか?
A. 労働審判といって裁判の手前の手続きで解決することが多いです。労働審判にも至らないで交渉で解決するケースもあります。労働審判であれば3ヶ月以内に、交渉であれば1ヶ月以内に終了することが多いです。
公開されるわけではないため、直ちに周りの人に知られるということはありませんし、寝た子を起こすわけにもいかないので病院側としても大ごとにしたくはなく、むしろ秘密にしたいというのが実情とすら言えます。
いずれにしても代理人である私に全て委任していただいて、ご本人の実働はありません。
残業記録
Q. 残業代が出ない職場では、記録をつけておいたほうがいいのでしょうか?
A. 労働時間の証拠というのは残しておいた方が良いです。
病院側は、タイムカードで労働時間の管理をすべきですし、今ではマネーフォワードなどのクラウド勤怠管理サービスもあります。将来的にはクラウド勤怠管理という当たり前が医療業界にも浸透すると考えています。
そういった環境にない職場、現状においては個々の医師が自ら記録をつけておいた方が良いと考えます。Suicaの利用履歴を定期的に取っておいたり、Googleマップの位置情報をオンにしておけば移動履歴を証明できます。自宅から病院までの移動とその時間がわかれば、勤務時間を証明することができます。
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後でどういった状況・心境になるかも分からないですし、そもそも残業代は「もらう権利がある自分のお金」なので、きっちり記録はつけておいた方がよさそうですね。
請求できる年数
Q. 残業代は、どのくらいさかのぼってもらえるのでしょうか?
A. 法改正がなされ、それまで2年だったところ、2020年4月1日以降が支払日とされる残業代については3年まで遡れることになりました。したがって、2022年4月1日以降は2年以上遡って残業代請求をすることが可能です。
利用料金
Q. 残業代請求の費用の目安を教えて下さい。
A. 残業代請求については別途費用がかかります。先生ごとに請求金額も変わるため、個別の回答とさせてください。
他の医師対象サービス
Q. 「退職代行」「残業代などの請求」以外に、医師がご相談させていただける内容などありましたら教えて下さい。
A. 医療法人の設立を専門に行なっている行政書士事務所と提携しているため、医療法人設立も対応可能です。
クリニックの事業譲渡、M&Aについても実績があります。また、医療広告ガイドラインに精通しておりますので、顧問弁護士として、広告のリーガルチェックを行うことが可能です。
評判・口コミ
実際に利用された方の声は、こんな感じです。
サービス以外の話
医局人事の法的根拠
Q. 医局人事って、弁護士さんからみていかがですか?法的な強制力はあるものですか(医局の思惑で、解雇させることはできるのか)?
A. 医局人事というのはその歴史的経緯から間違いなく合理性があったものの、これからの時代は多様性と流動化であって、少しずつ情勢は変わっていくのではないかと思っています。
日本の法律では、解雇の要件が極めて厳格に定められています。よほどのことがなければ解雇は認められないといって良いです。不当解雇についてもぜひご相談ください。
コメント
医局人事の影響なのか、雇っている病院側も「医師は簡単に解雇できる」と考えているところもあるように感じます。ただ実際は上に書かれている通り、正社員の解雇はかなり難しいようです。
解雇できないとはいえ、「完全に医局人事を拒否する。つまり人事を突っぱねて、その関連病院に居続ける」というのは、実際にはハードルが高いかもしれません。
ただ既にある法律や昨今の社会情勢ともバランスを取って、「もっと医局員側も、要求ができていいのでは」と思います。
退局後の妨害
Q. 医師が退局、転職を迷う理由として、「近隣で働きにくくなるのではないか」という不安があると思います。一定期間、お礼奉公のような勤務をしないといけないこともあります。「うちを辞めて、この近辺で働けると思うな」って、法的にいかがなものでしょうか?
A. 実際、そのような言動を受けたという相談が過去にありました。それに限らず、構造上そのつもりはなくてもパワハラと認定されても仕方のないような状況の多い業界であることも事実です。
しかし、時代は変わるもの。弁護士が間に入る意味は、そういった嫌がらせには法的責任が発生することがあると示すことで、未然に防ぐことにもあります。
Q. 転職活動や転職後の妨害を避けるという意味で、弁護士さんに相談させていただくメリットはありそうですか?
A. 弁護士がついているということは、そういった相談も弁護士になされ、場合によっては法的措置まであり得るということを意味します。そこがメリットになるかと思います。実際は売り手市場で、むしろリクルートが弱いとすら言えます。俯瞰して見たとき、転職を妨げる実益こそ全くないのです。
コメント
「穏便に辞めたい」「自分のイメージを損ないたくない」というのは、理解できます。ただやっぱり困った医局、病院もあるんですよね。
こんな状況にならないように「自分と家族の未来を守る」ために、専門家にお願いして、きちんと話をつけておくというのもありだと思います(多くの組織は、そんな必要はないと信じていますが)。
退職時のポイント
Q. 弁護士さんの視点からみた、退職時の注意点・トラブルにならないためのポイントなどありますでしょうか。
A. もちろん引き継ぎは重要ですが、それを理由にいつまでも辞められないでメンタルがやられるというのは本末転倒です。法的に退職は自由なのです。トラブルにならないことを意識するあまり、自分の生き方を決定できなくなるということのないようにしていただければと思います。
コメント
「辞めること」は自分の中で決まっているのに、
・どうやったら穏便に辞められるだろうか
・あと何年働けば、組織への影響が少ないだろうか
そんなことを考えていた、過去の自分に伝えたい言葉です。
お世話になった組織なので、できる範囲での気遣いはあっていいと思いますが、そのために「人生を曲げる」みたいなことは必要ないですよね。
まとめ
Q. 最後に、転職・退職について悩んでいる医師の方に一言お願いいたします。
A. むしろ自分のキャリアをどうしたいか、お医者さん自身の幸せこそ大事です。これからの時代は、変化に対応できるかどうかが問われます。どうぞお気軽にご相談ください。
さて、退局代理.comに関するいろいろな質問をしてみましたが、いかがだったでしょうか。
僕個人が、特に利用をおすすめしたい状況は下の3つです。
・あと3ヵ月~半年間働くことが難しい状況
・退職を受け入れてもらえない状況
・きちんと話をつけておかないと、将来的に不利益を被る可能性がある状況
・転職・退職関連で悩んでいる方
・退局代理.comに興味を持たれた方
・その他、記事内容に関するご質問など
は、こちらからどうぞ。
さて、今回の内容は以上です。
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