こんにちは、コアライ ミナトです。自身の経験を元に、医師の転職やキャリアについてのブログを書いています。
今回は株式会社 エバーアドが主催する、美容クリニックの求人セミナーに参加させていただきました。
軽い気持ちで参加したのですが、興味深い話がたくさん聞けたので記事にまとめてみました。美容分野に進むことを考えている医師の方にも、そうでない方にも、参考にしてもらえる記事になったと思います。
では、いきましょう!
セミナーについて
まずは今回のセミナーについて、簡単に解説します。
セミナーを主催しているエバーアドは、美容クリニックに特化した転職エージェントサービス【美容医師求人ガイド】を運営している企業です。
美容医師求人ガイドの、主な特徴はこちら。
・個々のクリニックとの繋がりが強く、数字には現れない情報も持っている。
・美容分野に特化したキャリア相談ができる(エージェントは5年以上の経験者のみ)。
・初期研修医や学生も利用でき、実際に利用者の約3割は研修医。
美容医師求人ガイドの詳細は、こちらの記事にまとめています。
美容医師求人ガイドを直接取材してみた~強み・評判・美容転科~【学生・研修医もOK】
このように就職、転職を斡旋する傍ら、定期的に今回のような求人セミナーも開催しています。
さて今回のセミナーは、2022年2月19日(土)の12時から約2時間、Zoomにて開催されました。
・自宅で
・こちらの音声や画像はOFFのまま
・完全に匿名で参加できる
という点が、ありがたかったです。
ここからは、実際のセミナーの様子を解説していきます。
エバーアドからの説明
セミナーはエバーアドのエージェントさんによる、「美容分野への就職、転職のポイント」についての説明から始まりました。
要点をまとめると、下の通り。
① 数字の意識
美容クリニックは営利企業であるため、個々の医師がきちんと利益を出すという「数字の意識」が重要です。
自身で集客をし、さらに診療に満足してもらうことでリピーターを獲得していく必要があります。とはいえ押し売りをすることなく、医学に基づいて提案していくのが大前提です。
② コミュニケーション能力
美容分野の医師に重要なのは、何よりも「コミュニケーション力」で、医師本人の容姿や経験よりも優先されます。
さらにコミュニケーション能力は、売上だけではなく、その後のクレームなどにも影響します。実際クレームの8~9割が、接客が原因によるものです。
③ SNSでのブランディング
美容分野で活躍していく中で、SNSによって医師が個人のブランディングを行っていくことは、避けては通れません。SNSなしで、集客をして大きな利益をあげていくことは、難しいです。
今回参加されているクリニックは、「義務ではない」という表現をされていました。
クリニックからの説明
いよいよ本題の、美容クリニックからの説明です。今回参加されていたのは、こちらの3グループ。
参加クリニック
・品川美容外科
・東京中央美容外科
・湘南美容クリニック
重要だと感じた内容
各クリニックからの説明で、印象に残った内容をまとめました。
<注意>
ニュアンスが変わって伝わってもいけないので、「どのクリニックの話か」は伏せています。あくまで一般論として、あるいはクリニックを選ぶ際のチェック項目として、参考程度にしてください。
未経験
初期研修修了直後の人を中心に、形成外科や皮膚科を経験せずに、美容分野に進む医師がかなり増えています。
クリニックからは、新規採用者について、
・9割が初期研修修了直後
・6割が初期研修修了直後
・8割が未経験者
・採用基準として経験の有無は問わない
などといった声が聞かれました。
「美容分野に進むにあたって、形成外科や皮膚科の専門医資格が必要かどうか」は議論があるようです。(セミナー外で)必須派・持っていない派、双方の意見を聞いた感想は、下の通り。
・形成外科や皮膚科の経験は、アドバンテージにはなりそう。
・新人の半分以上が未経験ということならば、「必須」とはいいにくそう。
・「専門医必須」は、ブランディングの側面も多少ありそう。
予習できること
「美容分野に進むにあたって、研修医期間中にできること」として挙げられていたのはこちら。
・外科結びなど、外科手技の基本を学んでおく。
・形成外科や麻酔科を回っておく。
・美容医師のSNSをみておく。
➡美容分野に関することは、就職してからでいい。
「美容分野に進むからといって、初期研修期間を適当に過ごすのは良くない」と言われていたクリニックもあって、かなり好感が持てました。
採用基準
採用面接でのポイントとしては、やはり「コミュニケーション能力」が一番に挙げられていました。
・その医師に相談したい・任せたいと思えるかどうか。
・悩みを引き出せるか、その場の雰囲気でしっかり話をできるか。
・身だしなみは重要。
・医師本人の容姿に関しては、「そこも含めたコミュニケーション」とのこと。
保険診療の医師の採用は、勤務歴や資格、経験や実績など履歴書に書く内容が重視されますが、美容分野の場合は「面接の場でどんな印象を与えるか」が、より重要であると感じました。
合格率
なかなか驚いたのですが、あるクリニックでは、医師の合格率は50~60 %程度とのこと。熱心な勧誘があったり高待遇が用意されていたりと、てっきり美容業界は人手不足で、「志望さえすれば歓迎してもらえる」と思っていたのですが…
すでに美容分野は人気の進路であって、「多くの志望者のなかから、適性のある医師を選ぶ」というフェーズに入っているという印象でした。
採用時期【重要】
採用時期について重要だと感じたので、解説します。クリニックにもよるはずですが、あるところは、
2023年度の採用スケジュール:
2022年2月頃から募集・面接を経て、同5月末には採用が終わる。
とのことでした。つまり初期研修修了後に就職したければ、研修1年目の末には動き始めなければいけないわけですね。
研修2年目の5月に合否が出て、万が一不採用となったら、そこから(保険診療の)専攻医としての就職先を決めることになります。
多くの医局や専攻医プログラムはそれからでも間に合いますが、都市部や人気科では研修2年目の5月には採用が終了しているところもあります。このあたりのスケジュールや優先順位は、考えておいたほうが良さそうです。
指導体制
未経験OKというだけあって、指導体制はかなり充実していると感じました。
画期的だと感じたのは「Ope可表」という制度。難易度ごとに施術が表になっていて、習得具合に合わせて○、☓、△などを書き込んでいくものです。これに合わせて予約が入れられるので、いきなり「やってみて」とはならないとのこと。
それに加えて技術面では、こんな学びの機会が。
・動画を含めた教材・マニュアル
・勉強会
・実技研修や合宿(海外含め。感染状況次第)
・学会参加
・海外ドクターを招聘した研修
・ヒヤリハットがあれば、再研修
また指導する側にとっても、
・支店としての売上が、そこの院長のインセンティブになる
・部下を育てると、部長・院長も休みやすくなる
➡若手の指導をする明確なメリットがある
というシステムを作っているクリニックもあり、この点も画期的だと感じました。
外からみていると、「すぐクビになるのでは」という懸念があったりしますが、「きちんと育てて長く働いてもらえるように、クリニック側が努力する」という空気感のようです。
技術習得期間
技術習得期間については、
・1年くらいからグループ内で院長になる人も
・2~3年で一通り習得→独立も選択肢に
というイメージとのことでした。
もちろん奥は深いのでしょうか、「とりあえず一通り」が早い分野は、キャリアの自由度が上がりますよね。
給料体系
フルタイムの給料の相場はこちら。
ポイント
「売り上げが低いと、減給になったり、解雇されたりするか」を気にしている参加者もいましたが、「基本給以下になることはなく、それによる解雇もない」とのことでした。
残業時間
いずれのクリニックも予約制をとっているため、「残業はあまりない」そうです。
業務時間中は並列で診るなど、かなり忙しそうなところもありましたが、メリハリが効いているとも言えますね。
SNS
SNSに関しては、「義務ではないけれど、重要ではある」というニュアンスでした。
SNSの種類としては、Instagram>>>>Youtube>その他という重要度のようで、SNS≒Instagramといった言い回しだと感じました。
それぞれにSNSを支援する部署やブランディングに関する研修があって、やる気さえあればサポートは受けられそうですね。
訴訟
訴訟自体多くはなく、万が一訴訟になった場合は、共通して「ルールに基づいてやっている限り、グループで対応する(話も金銭的なことも)」とのご回答でした。
質疑応答
各クリニックの説明後には質疑応答の時間が設けられており、活発な意見交換が行われていました。
定員30人のセミナーで、クリニックごとに10個くらいずつ質問が挙がっていました。質問内容も、「本気で就職を考えている」「ある程度の予備知識がある」と感じるものが多かったです。
質問の一例
・採用面接でみられる点は?
・研修医のうちにやっておくと良いことは?
・どんな症例が多い?
・売上が低いと、解雇やペナルティがある?
・SNSは必須?
・何年で独立できる?
・訴訟になったらどうなる?
・離職率は?
匿名での会だったこともあり、待遇についても遠慮なく質問が飛んでいました。
チェックしたいポイント
就職するクリニックを選ぶ際に、確認しておいた方がいいと感じたポイントは、以下の4つです。
① 移動・異動
クリニックによっては、頻繁に他の院(支店)への出張があるとのこと。多くの医師から学べるというメリットもありますが、かなり体力的にキツそうだとも感じました。
また全国に多数の院を展開しているところばかりなので、異動についても事前に確認したほうがいいでしょう。
②1院あたりの医師数
いずれもグループ全体の医師は多いものの、1院にいる医師数は多くなく、1~5人くらいとのこと。
個人的には、どちらかというと人数が多い院の方が働きやすいと思います(特に若手のうちは)。これは美容分野に限らず、です。
・指導を受けられる人が多い。
・人間関係で煮詰まりにくい。
・休みが取りやすい。
というのが理由です。
③ 義務年数
独立やヘッドハンティングに関して、最低勤務年数を設けているところもあるので、事前の確認が必要だと感じました。
④ グループ全体の雰囲気
組織に所属するにあたって、全体の雰囲気が自分に合うかを確認することは重要です。
その意味でも、今回のセミナーはかなり有用でした。たて続けに似た内容を聞けるわけなので、「ここはきっちりしているな」「あ、ここ体育会系っぽい」という違いがはっきりとみえました。
セミナー以外で言うと、「グループのトップと話してみる・講演をきいてみる」というのもおすすめです。組織の雰囲気って、トップの影響を受けやすいです。
保険診療医師としての学び
今回セミナーを通して、保険診療に携わる医師として最も感じたのは…
です。僕自身は今の仕事に満足していますし、美容分野にも多くの苦労があるはずです。
ただ若手をリクルートするにあたって、下の2つを比べてどうでしょう。
美容分野
・給料は2500万円/年+インセンティブです。
・福利厚生充実・有給消化率高いです。
・システム化した指導体制を用意しています。
・長く働いてもらえるよう努力します。
・匿名で、待遇について質問できます。
医局を中心とした保険診療
・給料は…生活はできます。詳しくは就職してから。
・仕事は、先輩の背中をみて覚えましょう。
・4月から1人当直があります。
・待遇ばかり気にするのはよくないです。
・入るときから独立を考えるなんて...
これからは「若手に来てもらう」という意識で、
・包み隠さずに待遇の話をする。
・成長の具体的なビジョンを示す。
・独立に関する制限を作らない。
こんなリクルートを、心がけていく必要があるのでしょうね。
まとめ
エバーアド主催の美容クリニック求人セミナーの内容をまとめましたが、いかがだったでしょうか。
たったの2時間、家で昼食を摂りながらの視聴でしたが、密度の濃い時間になりました。
事前知識があまりない僕が聞いても、これだけの内容がわかったわけなので、美容分野に興味のある方ならばもっと多くの学びがあるはずです。
さて、今回の内容は以上です。
・美容分野へ進むことを考えている方
・美容クリニック求人セミナーに参加してみたい方
・その他、記事内容に関するご質問など
は、▼こちら▼からどうぞ。
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