こんな疑問に答えます。
この記事を書いている僕は入局してから約8年間、医局員として過ごしました。その後は退局、転職を経験し現在に至ります。
退局をする何年か前から、医局に居続けた場合の未来予想図と、自分の理想の人生が少しずつズレていくのを感じていました。
そのためはっきりした決意はしないまま、時間をかけて徐々に退局/転職に向けて舵を切っていきました。結果的にうまくいったこともあれば、反省点もあります。
この経験をもとに、「退局/転職までに時間がある時に進めておきたい準備」についてまとめました。
医局と関係のない転職や、退局/転職をまだ決意していない人にも役に立つ内容です。
① 家族と時間をかけて話す
自分のキャリアに悩み始めた時点で、家族には話しておいたほうがいいと思います。
いざ退局/転職となると、家族に大きな影響を与えます。職場が変われば、収入や勤務時間が変わります。転居が必要になるかもしれません。
家族にも心の準備が必要です。家族にも「こういう人生を歩みたい」という希望があるはずです。
話をしているうちに、今の環境のままでも幸せになれる、良いアイディアが浮かぶかもしれません。
そして何よりも重要なことは、家族は辛いときに一番の味方になってくれるということです。
転職活動はつらいことも多く、そして孤独です。
ポイント
多くの人に味方になってもらうことが、退局/転職を成功させるポイントです。
② 同僚、上司に味方になってもらう
家族と同じく、同僚や上司にも事情を話し、味方になってもらえれば心強いです。仕事について深く理解している立場なので、具体的な相談にのってもらえます。
特に直属の上司に味方になってもらえれば、最高です。転職活動中には、平日に休みを取らなければなりません。内緒で行うよりも、協力をしてもらうほうがいいでしょう。
また上司は顔が広い場合も多いです。
ただ上司や同僚といっても、教授や医局長本人あるいはそこまで話が及んでしまうような、「医局側の人」には話すことができません。誰に相談するかは、よく考えて決めましょう。
また転職活動中や転職直前は、精神的に不安定になりがちです。ミスも起こしやすいのではないかと思います。
③ 健康上の不安を取り除く
退局/転職に際しては、様々なことを不安に感じます。その最も大きなものが健康です。新しい環境で、元気で働いて行けるだろうかと不安になります。
これを少しでも和らげるために、転職活動前に人間ドックなどを利用して全身を検査しておきましょう。
大きな異常が見つかった場合は、退局/転職は考え直したほうがいいかもしれません。
また気になっている不調のうち、治療可能なものは治してしまいましょう(親知らずなど)。転職活動中は、ストレスから不調がが表にでやすいです。
ポイント
体調を整え、万全の状態で戦える準備をしておくことが重要です。
今の職場で共済組合に入っている場合は、高額な医療費がかかったとき一部負担金払戻金(被扶養者の場合は家族療養費附加金)として一部が補助される場合があります(高額療養費制度とは別に)。
このような制度が利用できるうちに、自分も家族も、より健康になっておきましょう。
④ 経済的余裕を作る
退局/転職において2番目に大きい不安は、経済面です。一生継続して、不自由しない稼ぎがあるかと不安になります。
ある程度の貯金を
この不安を解消するためには、退局/転職前にはある程度きちんとした蓄えを作っておくといいです。
単なる貯金額というよりも、貯金が何年分の生活費に相当するかという視点が大切です。例えば、5年間は働かなくても食べていけるという状態は、大きな安心に繋がります。
生活レベルを上げすぎない
生活レベルを上げすぎないことで、転職先の選択肢が広がります。
どうせ苦しい転職活動をするならば年収を上げたいと考えるはずで、それ自体は間違いではありません。
しかし年収2000万円近いような高額求人の多くは、僻地や自由診療あるいは年齢が高い医師など、対象が限られる印象です。
また医局時代とは違い、転職ではある程度の市場原理が働くため、
・皆が働きたい環境は、給料が安い
・皆が働きたい、かつ給料が高い求人はすぐに取られてしまう
という傾向にあります。
わざわざ年収が下がる転職はすべきではないと思いますが、現在と同程度でも良しとできれば転職先の幅は広がります。
⑤ 知識や技術を高める
医師が最終的に頼れるのは自らの腕です。退局/転職によって後ろ盾を無くすならばなおさらです。
医師免許さえあれば技術がなくても将来に渡って安泰という、美味しい話はそうそうありません。少なくとも不安はつきまとうでしょう。
「その日」までに可能な限り知識や技術を高めましょう。
ただし自分一人で全てができるようにならないと、転職できないということはありません。未熟な部分があっても需要はあり、転職先にも相談ができる上級医や同僚はいます。
磨くべきポイントは2つです。
医師1人分働ける能力
その職場において自分にできることをかき集めた時、それが医師1人分になれば、その医師は雇う価値があります。やや雑用的なことであっても、それが医師の仕事ならば含めてOKです。
日々こういった視点をもち、まずは基礎の反復、仕事速度の向上を心がけましょう。さらに面談で、自分のできること(質と量)を具体的に示せれば完璧です。
できるできないを判断して、必要ならば相談する能力
先程も書いたとおり、転職先にも相談ができる上級医はいます。できないことがあっても構いません。
本当はできないことを、一人で済ませようとしてしまって、後で問題を起こすというのはいけません。逆に、常に不安で何でもかんでも相談というのもよくありません。
退局/転職までに自分ひとりでできること、できないことの線引きを明確にしておきましょう。
⑥ 資格をとる
自分の実力を示すことのできる資格は、ぜひとっておきましょう。専門医資格は特に重要です。
「専門医資格がなくても働ける」は現状事実です。確かに専門医資格がなければ法律上絶対にしてはいけない処置はほぼなく、雇用する側が雇うといえば職は得られます。
医師が不足している環境であれば「どこかでは働ける」でしょう。
ただ雇う側の本音は「ぜひ専門医資格は持っていてほしい」です。専門医資格は、ある程度の質を担保するものです。
常勤の場合は特にそうです。事故を起こせば病院がそれを被ることになります。
問題のある医師を雇ってしまった場合、現在の日本ではそう簡単に解雇することができません。これは話し合えば引き取ってもらえる可能性のある、医局人事とは異なる点です。
雇う側が「選べる立場」にある場合、専門医資格なしは大きなマイナスポイントです。
医局の後ろ盾を捨てるということであれば、そのかわりに自分の雇用を守ってくれる資格は取っておきたいものです。
⑦ 医局人事のタイミングをリサーチする
「退局を告げるタイミングは半年前」というのが一般的で、これはあながち間違いではありません。
ただ医局によって人事のタイミングが違うので、そこに気を使うのならば自分の医局のタイムスケジュールを把握しておきましょう。
まず何月に人事の連絡があるのか確認します。連絡があるタイミングは、既に人事が固まってしまった後なので、その数ヶ月前には退局を告げておいたほうが良いです。
体感的には半年より、もう少し早い印象です。ここから逆算して、転職活動のスケジュールをイメージしておきましょう。
⑧ 公開求人で相場観を養う
転職エージェントのホームページでは、公開されている求人をみることができます。これらを確認することで、給料や候補地など相場観が持てます。
実際に転職エージェントに登録してしまっても良いです。実際に登録をするメリットとして、
・給料など労働条件が明確になる
・非公開求人(こちらの方が多い)をみられる
・エージェントにキャリア相談ができる
などが挙がります。
⑨ 決断するタイムリミットを決める
退局/転職をするか、今の環境に残るかを、決断する時期を決めておいたほうがいいでしょう。
退局/転職を実際にするというのは気が重いことです。できれば避けたい、先延ばしにしたいと考えるのは自然です。
ただキャリアの変化というのは後になればなるほど、人生への影響が大きくなります。自分も、子供も、両親も、毎年歳をとっていきます。
先延ばしにするうちに「こんなはずではなかった」と後悔したり、ある日突然耐えきれなくなってしまったり、というのはよくありません。
転職活動には、膨大なエネルギーが必要となります。
ポイント
「まだ大丈夫」のうちに行動することが重要です。
「もうダメだ」となったら、転職活動も難しくなります。
まとめ
いずれ転職する可能性のある医師が、進めておきたい準備をまとめました。
進めておきたい準備
- 家族と時間をかけて話す
- 同僚、上司に味方になってもらう
- 健康上の不安を取り除く
- 経済的余裕を作る
- 知識や技術を高める
- 資格をとる
- 医局人事のタイミングをリサーチする
- 公開求人で相場観を養う
- 決断するタイムリミットを決める
味方を作る、不安を取り除く、実力を高める、タイムスケジュールを作るということがポイントです。
もし転職をしなかったとしても、しておいて損はない項目ばかりです。
さて、今回は以上です。この記事がキャリア設計のお役にたてれば幸いです。
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