医局に入った後

専門医資格の【本当の価値】とは。専門医なしで医局や専攻医を辞めるとどうなるの?

2021年6月29日

専門医資格の本当の価値

 

こんにちは、コアライ ミナトです。転職など、医師のキャリアに関するブログを書いています。今回のテーマは「専門医資格の価値」です。

専門医資格に関しては、いろいろな意見がありますよね。

 

専門医くらいは持っておいたほうがいい。
専門医なんてなくても大丈夫。さあ転職をしましょう。

などなど。

 

でも持っていると何が「いい」のか?なくても「大丈夫」ってどういう状態なのか?このような具体的なところが、示されていないように感じます。

そこで今回は、医師転職エージェントへの独自取材から分かったことをもとに、専門医資格について解説していきます。

 

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転職エージェントが考える専門医資格の価値

各社の回答

大手の医師転職エージェントは、多くの求人を抱え、多数の医師の転職に携わっています。そんなエージェントのうちの4社に、「専門医資格ってどんな価値があると思いますか」という質問を投げかけてみました。各社の回答がこちら。

 

エムスリーキャリアエージェントの回答

専門医資格は、もちろん転職でプラスになる事はありますが、持っていない事でマイナスに働く影響の方が大きいです。募集段階で専門医資格を要件にしている医療機関は多くありませんが、書類選考の時点で専門医資格が無いことで落とされる事があります。

専門医維持にはコストも掛かるので、最低限基本領域の専門医だけは維持しておけば転職において不利になる事はないと思います。

 

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Dr. 転職なびの回答

「専門医を持っていないと応募できないポジション」というのが、確実に存在します。そういう意味では専門医を持っている方が選択肢が広がることは事実です。また、専門医を持っているかどうかで待遇に差が出ることもあります。

特に専門医を取得している医師の割合が高い診療科においては、専門医を取得していないことがマイナス評価になる可能性があります。

一方で在宅医療や健診・ドック、美容医療などあまり専門医資格の有無が転職に影響しない診療科もあります。先生の希望の働き方によって専門医を取得することのメリットは変わってきます。

 

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マイナビDOCTORの回答

また、近年は医療機関のウェブサイトや院内の掲示などから医師について下調べを行った上で受診する患者が増えています。

そのため、医療機関の集患の観点からも専門医が望まれる傾向があり、特に都心部では専門医資格を保持していない医師は面接さえ受けることができないケースも少なくありません。

転職を有利に進めるという観点からも、専門医資格を取得し、維持しておくことが大切です。

引用元:マイナビDOCTORホームページ

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医師転職ドットコムの回答

専門医があると強い診療科(内科系・外科系・産婦人科・麻酔科)もあれば、在宅・産業医など資格や経験不問で相談できる先もあり、診療科により様々となっております。

 

取材記事はこちら。

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エージェントの結論

4社ともよく似た回答ですよね。重要なポイントはこちら。

・専門医がないと、転職に不利になることがある
(公開されている募集要項には、記載されていないことも多い)
・都市部など、人気のポストで不利になりやすい
・専門医取得者の割合が高い科で、影響が大きい
・在宅医療、美容、産業医、アルバイトなどは影響が小さい
・資格の有無で、待遇に差が出ることもある
・基礎領域のみでも、転職では不利にはならない

 

各要素について詳しく解説

 

ここからはエージェントたちの結論について、実際のデータや、体験談を交えながら詳しく解説していきます。

 

科ごとの専門医の割合

Dr. 転職なびの回答で、「専門医を取得している医師の割合が高い診療科においては、専門医を取得していないことがマイナス評価になる可能性」というものがありました。

そこで基礎19領域における、専門医の割合について調べてみました。

専門医数主たる従事医師数専門医割合(%)
内科14753~34429※6187856
小児科148271587093
皮膚科5956847070
精神科100991420171
外科2181616704131
整形外科175461997588
産婦人科122271236999
眼科105941279783
耳鼻科8501903294
泌尿器科6353651498
脳外科71116695106
放射線科59145597106
麻酔科6345772182
病理21881515144
臨床検査652480136
救急科33822267149
形成外科2102213598
リハビリ科1787190994

参照元①参照元②

※内科に関しては、新専門医制度によって「内科専門医」「総合診療専門医」という枠組みとなったり、旧認定内科医から総合内科専門医への移行措置があったりと、専門医数の実態が把握しにくいのですが、30000人~くらいというのが、実態に近いと思われます。

 

(正確な割合は把握しにくいものの)内科に関しては専門医の割合が低く、資格がなくても不利になりにくいと言えるでしょう。

 

皮膚科、精神科、眼科、麻酔科も低いですが、これには「資格をとったものの返上した」という医師も含まれていると思われます。また「標榜医」制度も関係しているでしょう。一度も専門医を取らないまま、これらの領域で働いていくのは難しいかもしれません。ただ資格を手放すことに関しては、他科よりハードルが低そうです。

 

総合内科的な仕事であれば、専門医なしでも大丈夫そうです。そういった意味で、内科専攻医は他科より選択肢が多いわけですね。

 

人気のポストは競合する

マイナビDOCTORの意見で、「特に都心部では専門医資格を保持していない医師は面接さえ受けることができないケースも少なくない」というものがありました。

僕自身、転職活動をした印象として、皆が働きたいようなポストってかなり競合するのですよね。

・都市部
・子供の教育に良い
・給料が良い
・仕事量が適切

こういった求人はすぐに埋まっていました。好ましい条件の病院は、「雇う医師を選ぶ」ことができます。そんな病院で働きたいのであれば、資格の有無は大きいです。

 

医局人事と違い、常勤医は一度雇ってしまうとなかなか解雇ができません。また雇ってみないと「本当の能力」や「人間性」は把握できません。このため、ある程度の能力と信頼性を担保するものとして、「専門医」を重視する病院が多いです。

「専門医の有無で実力は計れない」は事実ではありますが…一般職の就職活動における「学歴」のようなイメージでしょうか。

 

待遇の差(常勤)

Dr. 転職なびからの回答で、「専門医を持っているかどうかで待遇に差が出ることもあります」という内容がありました。

僕の経験では、月に1~数万円という専門医手当が出るのが一般的です。

 

30年間働くとしたら、差額は300万円~といったところでしょうか。「このために大きな代償を払うほどではないけど、あったら嬉しい」といった金額ですね。

 

待遇の差(非常勤)

医師免許さえあれば、非常勤の時給は10000円くらいが相場です。これでも十分に高給で、週2日くらい働けばそれなりの生活ができますよね。

ただ領域によっては専門医があると、その何倍も高時給の非常勤ポストを得ることができます。麻酔、透析、内視鏡などが有名ですが、それら以外にも各領域に「隠れおいしい非常勤」があるようです。非常勤に関しては基礎領域だけではなく、サブスペシャリティも関係してきます。

専門医を取ることで「おいしい非常勤」にアプローチするメドが立つなら、諦めるのはもったいないかもしれません。

 

ただ専門医には更新基準があり、非常勤だけでは維持できない領域もあるのでそのあたりもチェックしておきましょう(今後厳しくなっていくかも)。

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こんな場合は「大丈夫」かも

以上の根拠から、こんな場合は資格がなくても影響が小さいと推測されます。

・総合診療系の内科医、美容医、産業医、あるいは非常勤をする
・基礎領域の専門医はもっている
・土地(都市部)や人気病院にこだわらない
・このまま専門医をとっても、圧倒的な高時給は見込めない

 

「辞めたい」と感じたときできること

 

ここからは「専攻医の仕事がきつい。医局が合わない。辞めてしまおうか」と感じた時に考えたいことや、やるべきことを解説します。

ここまで書いてきたとおり、専門医資格は必須ではないもののメリットは確実にあるものなので、諦める前にはできることをやっておいたほうがよさそうです。

 

「つらい」と伝える

まずは「つらい」ということを、きちんと伝えることをおすすめします。「近い上司や先輩に」というのがハードルは低いですが、より上の立場の人に直接話をすると大きな変化に繋がりやすいです。

「きちんと伝えること」はイメージする以上に、効果が大きいです。問題をオープンにすることで医局や病院の対応が変わり、そのまま専門医取得ができるかもしれません。

 

シンプルに上司の言動などが原因の場合は、特に改善が期待できます。問題のある医師については、組織も認識をしている可能性が高いです。仕事量や仕事内容、人事といった問題も、ある程度の変化は望めます。

最近では「個々の事情に配慮しない医局・病院」というのは、むしろ珍しくなっています(人がいなくなってしまうので)。「言ったもの勝ちになってしまう」という問題を抱える組織も出てくるほどです。

 

医師を長く続けていると「つらい時期」は必ずやってきます。今回は自力だけで乗り切れたとしても、いつか必ず、人に頼らなければならないときが来るはずです。

「人に頼る練習」だと考えて、いろいろな人に相談してみてください。

 

休職をする

「そもそも仕事を続けることが難しい」という場合は、休職を検討することになります。産業医など、職場内にも専門部署が設けられているはずです。

専攻医制度としても、6ヶ月以内の休職であれば、研修期間を延長することなく受験資格を手に入れられるなどの配慮がなされています。それを超えた場合も、期間を延長して修了することが認められています。収入面でも、日本には手当てなどで補償をする制度があります。

何よりも「仕事を辞める、資格を諦める」といった判断は、冷静な状態で行うことをおすすめします。また最終的に辞めるという判断をするとしても、休職期間中にゆっくりと「次」を考えることができます。

転職活動には、時間も労力も精神力も必要です。

 

環境を変える

専攻医がつらいというよりは、「医局を辞めたい」「今の病院・部署が合わない」という人も、多いのではないでしょうか。

例えば、医局。医局制度はある意味で理不尽な制度です。さらに入って数年以内に辞めたくなる場合、その組織そのものに問題がある可能性もあります。

もし医局が合わないことを理由に専門医を諦めようとしているのであれば、それはもったいないように思います。

そういった方には、環境を変えることをおすすめします。

 

プログラムを変える

まずは現在の医局や病院は辞めつつ、専攻医を継続していく方法です。

現在運用されている新専門医制度では、科によって3~5年間の中で、年次毎に決められた内容に基づきカリキュラムを履修する「プログラム制」を原則としています。

パッケージ化された1つのプログラムを全て修了することを原則としていて、あれこれ移っていくことは認められていません。

 

ただしこれまでの勤務実績や経験症例を引き継ぎつつ、プログラムの変更やカリキュラム制への移行(単位制:プログラム外でも規定の勤務時間と経験症例の条件を満たすことで、受験資格を得る)が認められる場合もあります。

パワハラや出産・育児などの事情に関しては、専門医機構も認識しており、こういった方々への代替措置は、学会ごとに用意されているわけです。

専門医を諦める前に、日本専門医機構や各学会に問い合わせてみてください。これまでの勤務実績や経験症例を引き継いで、専門医を取得できる道を探ってみましょう。

 

プログラムをやり直す

・プログラムの変更やカリキュラム制への移行が認められない
・それでも専門医がとりたい

という場合は、別のプログラムに入り直すことになります。勤務実績などをリセットし専攻医を始めからやり直すことになるので、できれば避けたいですが、理論上は可能です。

 

医局はもうこりごり…
医局に入らなくても、入ることのできるプログラムはあります。

 

市中病院を基幹病院としたプログラムであれば、入局を避けられるものもあります。その正確な割合は分からないものの、

・初期研修終了後に、大学病院以外で勤務を希望する医師のうち

入局予定:54.6 %
入局する予定がない:26.8 %
わからない、まだ決めていない:18.0 %
無回答:0.6 %

というデータがあります(この回答をした学年は、新専門医制度の対象です)。

引用元:平成31年臨床研修修了者アンケート調査結果

 

つまり市中病院の専攻医の枠のうち、1/4程度は医局に属すことなく登録できるのではないかと推測されます。

解答者が多く、回答時期も2年目の3月であることから、信用できる結果だと思われます。

 

転科する

「その科の働き方も合わない」と感じているのならば、転科するのも選択肢です。昔からキャリアのリセットとして、転科を選択する医師は多いです。それによって自分に合った働き方を手に入れた医師を、これまで何人もみてきました。

転科のメリットは、働き方を変えられるだけではありません。同じ科で働く場合、生活の拠点を変えない限りは、今の医局や職場の近くで仕事を続けることになります。

地方であればまだまだ医局の影響力は強いです。勉強会などで顔を合わせる機会も多いでしょう。転科をすれば、働く場所が近くても元いた医局と関わる機会は大きく減ります。

 

一旦は専門医を諦める

一旦は専門医を諦め、自分にあった道を探るというのもありです。完全に諦めるというわけではなく、白紙の状態で将来について考える期間を作るということですね。

上でも書いたとおり、総合内科的な働き方や産業医、美容医療、あるいは非常勤医としてであれば、ポストを得ることはそれほど難しくありません。

 

この道を選ぶ人は、僕の周囲も含めてそれなりの数います。専門医を取らず、フリーランス医として働いている人の声はこんなかんじ。

 

フリーランス医の声

月々の収入は変わらず休日が増えたので、やりたい事に時間を使えてありがたいです。仕事の日が来るのが憂鬱でなくなり、健康状態が著しく改善しました。休日が完全なる休日である事のありがたみを享受しています。

「今の生活が無事に続けられるのなら、それも選択肢の一つとして入るかもしれない」という気持ちは正直あります。

将来への漠然とした不安感はありますが、いざとなれば新たに医局に入ったり、専攻医になったりするのも選択肢かと。

やってみると合う人も多い生き方のようですし、一度専攻医や医局を辞めたからといって、二度と元の道に戻れないというわけではありません。

 

キャリア相談はしたほうがいい

 

専攻医や医局がつらい、辞めたいと感じたときの具体的な行動について解説してきました。どの選択肢も悪いものではありませんが、決断をするにあたっては転職エージェントへのキャリア相談をおすすめします。

 

結局のところ、「専門医の有無で、働ける場所がどのくらい違うのか」というのが最大の論点ですよね。

今のままであれば求人はこれですが、専門医さえ取ればこれだけ幅が広がります。

こういった具体的なアドバイスがもらえたら、資格取得への励みになるかもしれません。あるいは「全然変わらないから、資格に未練なし」という判断になるかもしれません。

 

今回協力してくれたエージェントは、デメリットも含めて教えてくれる会社なのでおすすめです。

 

まとめ

専門医資格の価値や、専攻医の仕事がつらいと感じたときの対策を解説してきました。ポイントはこちら。

・専門医がないと、転職に不利になることがある
・都市部など、人気のポストで不利になりやすい
・専門医の割合が高い科で影響が大きい
・在宅医療、美容、産業医、アルバイトなどは影響が小さい
・資格の有無で待遇に差が出ることもある
・基礎領域のみでも、不利にはならない
・周囲に伝えるのが第一歩
・休職も選択肢
・プログラムの変更や転科はあり
・一旦専門医を諦めても、再度挑戦することはできる
・具体的なデータや求人を元に決断を

 

改めて今回、情報提供をしてくださった転職エージェントはこちらです。

【エムスリーキャリアエージェント】 

【Dr.転職なび】

【マイナビDOCTOR】

【医師転職ドットコム】

 

この記事が価値観に合った進路を選ぶための、参考になりましたら幸いです。今回は以上です。

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