今回のテーマは「医師が搾取から抜け出すための方法、考え方」です。
医師の労働環境って、楽ではないですよね。
常にオンコール対応をしなければならなかったり、当直明けでも通常の勤務をしないといけなかったり、頻繁に異動があったり…
そこで今回は、ホワイト病院に転職をしてのんびり働いている医師が、
医師としての仕事の枠内で実行でき、搾取されにくくなる考え方
を解説します。
※節税や投資、副業、起業など、医師の仕事以外の話は今回除外します。
平均的な待遇を知る
最も重要なことは、「医師の中でも、特に搾取されている医師」にならないことです。このためには、まず一般的な医師の労働条件を知る必要があります。
金銭面、勤務時間からみた医師の平均的な労働条件は下記のとおりです。
給料
勤務時間
画像引用元:第9回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料3
もしこれを大きく下回っていたら、搾取といえる状況かもしれません。現状を把握するというのが第一歩です。
「大学だから仕方ない」?
「大学病院はある程度、過酷な労働環境であっても仕方がない」という風潮があります。
ただ一口に大学病院といっても、その労働条件は様々です。
勤務時間
例えば上記のデータによると、大学病院医師の労働時間の中央値は50-60時間の間に収まります。
注目すべき点として、年々、勤務時間が削減される方向に進んでいることが挙げられます。
画像引用元:第9回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料3
大学病院に限定しても、3年の間に、週に4時間=半日分くらいの勤務が削減できているのが普通というわけです。
そんな全体としての流れの中で、現在の所属先が「何も変わっていない」ならば、将来への希望が持ちにくいかもしれません。
アルバイトの頻度
大学病院医師は複数の職場を兼任しているなどの理由から、年齢ごとの正確な給料を把握するのは難しいです。
転職サイトなどの統計で「大学病院医師の年収」が発表されてはいますが、転職を考える=若い医師の占める割合が多いのでは?と個人的には考えています。
ただ大学病院医師の収入の大きな柱である、アルバイトの回数については、はっきりしたデータがあります。
週二回のアルバイトができているならば中央値、それ未満であれば収入がかなり少ない可能性があります。
このように、「本来自分はどのくらいの労働条件が期待できるのか」を知ることが、搾取を抜け出す第一歩になります。
STEP 1
やりがい搾取ならOK。ただ…
と言うつもりは全くありません。仕事にやりがいは必要です。
「やりがい」搾取ならば、つまり「やりたい仕事のために、希望して」待遇を下げているならば、それは構わないと思うのです。
アスリートが、優勝するために相場より安い給料で強いチームに移籍する、というのはよくある話です。
重要なのは「本当に、そこにやりがいがあるのか」です。
というのも僕が大学で働いていた頃、医局内の同僚の7-8割くらいは「さっさと関連病院に出たい…」と呟いていました(僕もその一人)。
そんな光景をみて、
と思ったのをよく覚えています。
・夜中に、暗~い顔で雑用をしていませんか?
・無給で働いている大学院生は、それでもその研究がしたいですか?
というわけでSTEP 2です。
STEP 2
医師大学院をつらい/辞めたいと思ったら【6つの確認事項】
評価をされる努力をする
きちんと評価されるため、そして自分がなりたい姿に近づくための「正しい努力」も必要です。
評価される人材になる努力
漠然と努力をして、できることが増えていっても、それが周囲から評価されるものでなければ、待遇の改善には繋がりにくいです。
例えば医局においては、やはり論文を書いたり、学会や勉強会で講演をしたりという実績が評価されます。こうなると大学で出世したり、人事で望むポストを得やすくなります。
医局外、つまり転職をするときにも、転職しやすくなるような資格・肩書・専門領域とそうでないものがあります。
自分が望む労働環境から逆算して、そこで必要とされる人材となっていくのが待遇改善への近道です。
例えば、将来的に転職を考えているなら早いうちからエージェントにキャリア相談をすることで、「自分がこれから習得するべきこと」を知ることに繋がります。
転職エージェントへのキャリア相談がおすすめ。研修医・専攻医もOK。
待遇を改善するための努力
どれだけ成長するための努力を続けても、黙っていたら、なかなか労働環境は良くなっていきません。
と言いつつ、過酷な環境で働き続ける医師を多くみてきました。
というよりもむしろ医師の世界では、黙って仕事をこなせてしまう人のところには、どんどん仕事が集まっていく傾向にあります。
結局のところ、
・自分を高める努力
・自分を高く売りこむ努力
この2つは両輪で、どちらが欠けても、いい方向には進んでいけません。
STEP 3
Noを言えるようにする
自分の価値を下げないために
自分の価値=受け取るべき待遇を自分で線引きし、それよりも不当に低い労働条件で働くことは「拒否する」。突き詰めると、これをしないことには、自身の価値を保つことができません。
どれだけ素晴らしい仕事をし、「正当に評価をしてほしい」と声を上げたところで、結局低い労働条件で仕事を引き受けてしまったら、それがあなたの価値になります。
・不当、不公平な仕事の割り振りを拒否して、時間を作る
・認められないようであれば、その組織を離れる
こんな選択肢は、持っておいたほうが良いでしょう。
「外」にも候補を持つ
いざというとき自分を雇ってくれるのが、今いる組織のたった1つしかなかったら待遇の改善は期待しにくいです。どうしても組織には浮き沈みがありますし、常に適切な評価をしてもらえるわけではありません。
他の医局や病院とも交流をもっておく、非常勤などで一緒に仕事をする。こういったことは意味のあることだと思います。
あるいはエージェントから自分の市場価値を聞いておくというのも、おすすめです。
土地にこだわると厳しい
逆に「どうしてもこの土地で仕事がしたい!」というこだわりを持ってしまうと、搾取に繋がりやすいです。
医師免許や専門医資格の最大の強みは、日本全国で仕事を得られることにあります。
好条件を追い求めて、各地を転々とする生活が幸せだとは思いませんが、「働いてもいいと思える地域」を広くもっておくと、
・医局の言いなりになりにくい。
・良い待遇を得やすくなる。
というメリットがあります。
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STEP 4
幸せを先延ばしにしすぎない
「今」も大事
医師のなかには、「将来のために今は我慢する」という選択を、毎回のようにしてしまう人が多いのではないでしょうか。
医学部に入る・卒業する、医師免許を取る、専門医資格を取るといった関門を突破していくためには、常に先のことを考えて、行動を積み上げる必要があります。
日々の仕事についても同様で、「そのうちやろう」では、手遅れになってしまう可能性があります。
こうして、「今」を楽しむ。「今」心地いい環境に行くという選択をすることに、不安を感じるようになってしまうんですよね。
そしてどうしても、「修行期間」や「自然と学べるような環境」は、労働条件が低く設定されており、どうしても搾取に繋がりやすいです。
確かに下積み期間は重要だと思います。この期間に、医師として生きていくための礎ができたのは確実です。
どれだけ最先端の環境にいたところで、結局そこを離れてしまえば、使わなくなった技術は劣化しますし、情報は古いものになっていきます。
それよりも、いろいろなところに頼れる人はいるので、「その場その時に必要となったものを吸収する姿勢」を持っていることが重要だと思います。
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人事は基本、その場しのぎ
「ゆくゆくは良いポストにつけてやるから、今は…」
こんなことを言われて、頑張っている医局員もおられると思います。
ただ多くの医局では、人事は「毎年、とりあえず穴を埋めてしのぐもの」となっていて、中長期的な辻褄はあまり考慮されていません。
約束をしてくれた教授や医局長も、時間が経てば顔ぶれが変わっていきます。
みんなで支えている「働かないおじさん」や「ゆるふわ医師」が、バリバリ働いてくれる日は、おそらく来ないでしょう。
人事の「ゆくゆくは」を信じて、短期的な搾取を受け入れることは、おすすめできません。
STEP 5
まとめ
医師が搾取されないための、5つのSTEPを解説しました。
5つのSTEP
- 自身の労働環境が、一般的かどうか知る。
- 「対価を支払うだけのやりがいがあるのか」を考える。
- 自分のなりたい姿を想像し、そこを目指して進む。
- 「いざとなったら拒否する」という選択肢をもつ。
- 短期目線でも、幸せに生きることを目指す。
どれも過去の自分、あるいは過酷な環境で働いている元同僚に対して思うことです。
とはいえ元同僚は愚痴を言いながらも、実は現状が幸せで、大きなお世話なのかもしれません…
もし「搾取されている」「本気で現状を変えたい」と思っているのであれば、参考にしていただけたらと思います。
今回は以上です。
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