今回は、こんな悩みについてです。
こんにちは、コアライミナトです。医師の働き方や転職についての、ブログを書いています。
医師って一般平均と比べたら、めちゃくちゃ高年収で、安定もしているはず。それでも将来について、不安に感じてしまうことってありますよね。
現状、日本は不景気ですし、医療経済の明るい未来も想像しにくいです。
そんなわけで今回の記事では、
・医師の仕事を取り巻く現状
・現状を踏まえて、未来のためにできること
(自分や周囲の人が、将来のためにやっていること)
を解説していきたいと思います。
医師の現状【6つの要素】
給料の推移
まずは医師の給料面をみていきます。賃金構造基本統計調査をもとに、平均年収の推移をグラフにしてみました。
この期間ではおおむね1100~1200万円くらいで安定しており、増えても減ってもいないことが分かります。
給料が年々増加している他国と比較し、昨今は「給料の増えない国」などと日本全体が言われていますが、日本の医師も同様のようです。
病院の経営状況
続いては病院の経営状況をみてみます。下のグラフは、「赤字病院」の割合です。
画像引用元:独立行政法人福祉医療機構 Research Report
赤字病院がどんどんと増えているというわけではありませんが、一般病院でいうと約40 %が慢性的に赤字であるということがわかります。
こんな現状を受けて、厚労省は全国の公立病院の3分の1に「統廃合を含めた再編の検討を求める」という方針を発表しています。
病院機能の統合によって、「効率化」というメリットはあるでしょう。ただ一方で、働いている病院が吸収されると、
・雇用条件が変わる
・病院の場所が変わる
・必要とされるスキルが変わる
・ポストが減って、職探しをすることになる
ということが起こりえます。
「普通に頑張っている病院は赤字」という現状に加え、少子高齢化が進んでいく中で、将来的に医療へ投入されるお金が増えていくとも考えにくいです。
働き方改革
医師の働き方改革が2024年に適応となり、「時間外労働の上限規制」がされることになります。
過酷な医師の労働環境の改善が期待される一方、規制の内容を簡単にまとめると、
・基本的には、年間960時間以下
・例外的に、年間1860時間以下(救急対応をする医師や、短期間で経験を積む必要がある医師)
と、依然として長時間の時間外労働が認められることになります。
ただ「医師の労働環境が全く改善していない」というわけでもありません。
下のグラフは、常勤勤務医の週あたりの労働時間を、平成28年と令和1年で比べたものです。
画像引用元:第9回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料3
どの種類の病院でも、労働時間が減っています。国が進める制度に先んじて、個々の組織でも対策はされ始めていることが分かります。
こういった労働時間の削減によるメリットは、下記の通り。
・医師に時間や体力の余裕ができる。
・サービス残業をしていたならば、それが減る。
・残業代を多く払っていた病院は、経営が改善する。
逆に想像できるデメリットとして、下のようなものが挙げられます。
・残業代がきちんともらえていたのならば、それが削られる。
・余力ができればバイトをする医師が増え、バイトをみつけにくくなり、相場も下がる?
家計の負担
医師は確かに額面でみれば高給ではありますが、それだけ負担や出費も大きいです。
こういった点に関しては、別の記事で解説していますので、そちらをどうぞ。
医師って意外とお金ないの?現実と対策を解説
【医師と子育て】改正児童手当法の医師世帯への影響
医師が医局人事で失うお金は○万円!?試算をしてみた
医療AI
「AIに取って変わられるのではないか」「仕事がなくなるのではないか」という問題です。
AIの専門家からそうでない人まで、さまざまな人が、それぞれの立場で未来予想図を描いています。
比較的多くされている予想は、下記の通り。
・診断に関する仕事の多くは、AIにとってかわられる。
・放射線科(読影)や病理といった画像診断の分野は、特に厳しい。
・人間ならではの、コミュニケーションや心情に関する部分は、代替されにくい。
こんな風潮に対して、日本病理学会が正式に声明を出したようです。興味深いのでご紹介します。
病理医を目指す若い人達へ
病理医は病理診断を専門とする医師です。医療において、多くの疾患は病理診断に基づいて治療がなされます。病理診断は、とても重要で、医療の基盤です。それを担う病理医は社会から求められており、その重要性は今後変わることはありません。益々重要な専門医となってくるでしょう。
しかしながら昨今AIが様々な社会インフラを置き換えはじめてきています。病理診断もAIが行うので病理医は必要がなくなる、と誤った情報が一部で流れています。日本病理学会では、将来病理医がAIを使うことがあっても、AIは病理医にとってかわるものではないことをここに明確にします。
日本病理学会
引用元:日本病理学会ホームページ
さらに続けて、病理医が必要とされ続ける理由が書かれています。僕なりに要約すると...
・病理医は診療だけでなく、「研究」という面でも貢献できる。
・診断という面でも、AIは決して病理医を超えることができない。
(臨床医とのコミュニケーション、患者の病態把握、各種検査からの総合判断など)
・法律面でも、AIが医行為をすることは認められていない。
・AIはあくまでも補助的なツール。
「確かに」と納得してしまう一方で、少しひねくれた見方をすると、「若い人が来なくなったら困る、というポジショントークの香りもする」と感じます。
一つ言えることは「AIが医師の仕事の多くを代替するかも」というのは、学会が正式に声明を出すほど、現実味のある話になってきているということです。
僻地医療問題
医師の偏在は深刻で、それを解決するために様々な取り組みがなされています。
本来であれば需要が供給を上回っている場合は、「高い給料によって人を集める」というのが基本ではありますが、残念ながらそういう方針にはなっていません。
国として、制度=強制力でもってこの問題を解決しようとしており、医師の居住地・勤務地の自由が少しずつ制限されはじめているように感じます。
具体的には下記の通り。
医学部の地域枠
大学医学部の地域枠は、下のグラフの通り、増加傾向にあります。
画像引用元:第 1 回 医 療 政 策 研 修 会. 第1回地域医療構想アドバイザー会議
受験生(後の医師)としては、地元の医学部に入りやすくなる一方で、「18歳くらいの段階ですでに将来の居住地、職場を固定されてしまうのはいかがなものか」という声もあります。
シーリング
専攻医におけるシーリングも、同じく居住地、職場を制限されてしまう要因です。
シーリングについて簡単に説明すると、希望者が集中しやすい「都道府県と科の組み合わせ」に定員を設けるという制度です。
専門医更新
2021年初めごろに、「専門医資格更新要件として、僻地勤務を義務付けることにしよう」という議論が起こりました。
あまりに反対意見が多く、現段階ではこの方針は取り下げられています。
ただ「専門医資格」という要素を使って、僻地医療を解決したいというのは国としての方針のようで、予断を許さない状況ではあります。
「専門医更新のための僻地勤務義務化騒動」の総括と、得られた教訓
このように、
・現段階では
・既に、専門医資格を取得した医師に関しては
なんらかの強制がされたわけではありませんが、未来の「医師が自由に働く権利」は、今ほど保証されないかもしれません。
漠然とした不安の正体
医師を取り巻く環境についてまとめると、下記の通り。
・医師として頑張っているけれど、生活は思ったほど楽ではない。
・急激な悪化傾向にあるわけではない。
・じわじわと厳しくなってきている。
・良くなりそうな要素は、あまり見当たらない。
・大きく崩れないことを祈っている。
こんな現状を前にして、
ポイント
多くの医師が抱える漠然とした不安を言語化すると、こういうことだと思います。
医学・医療を極めるといった「人生を賭けた、がむしゃらな努力」というのは、成功したときの「幸せな未来」が想像できるからこそ続けられるものです。
未来のためにできること
なんだか暗い話になってしまいましたが、将来のためにできることは、いくらでもあります。
上でも書いた通り、医師を取り巻く環境はまだ大きく崩れたわけではなく、備える猶予はまだあります。
僕自身、あるいは周囲の人がやっている「未来のためにできること」は、下の通りです。
早いうちに貯め込んでおく
「将来の給料の見通しが厳しい」というのは、言い換えると「今が1番良い待遇を得られる」ということです。
ベテランの医師は「実力さえつけば収入はあとからついてくるから、若いうちはお金のことは考えすぎないように」といいます。
これはある意味では正しいのですが、未来の待遇に期待できないというのであれば、若いうちから待遇も意識したキャリアプランが必要となります。
・給料のいい常勤ポストをみつける。
・空いた時間でアルバイトをする。
・日々の生活では、節約をする。
こういったことで、安定した生活に繋がっていきます。
画像引用元:第9回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料3
高く買ってもらえる技術を持つ
診療科によって、医師の給料にはばらつきがあります。
「転職やアルバイトでいい待遇が引き出しやすいか」「ポストが近隣でみつかりやすいか」といったことにも、専門分野間で大きな差が出てきます。
「40年後に必要とされる知識」を予想することはほぼ不可能ですが、「数年先で高く買ってもらえる技術」を知ることは難しいことではありません。
ただただ「言われた仕事をする」「指示された技術を磨く」のではなく、市場価値の高い知識や技術を把握し、そこから逆算して経験を積んでいくというのが、食いっぱぐれないためには重要だと思います。
転職エージェントへのキャリア相談がおすすめ。研修医・専攻医もOK。
出世をする
「大学などでどんどん出世をしていくのも、将来の安定のために意味がある」と予想しています。
現在は「大学教授になっても旨味がない、割りに合わない」と言われていますが、それは待遇のいい働き口がまだまだあるからです。
全体の待遇が下がり、ポストが不足してくると、「出世すること」のメリットが増してくるはずです。
どれだけAIなどに仕事が代替されても、下記のようなポストはなくならないでしょう。
・研究職
・管理職
・名誉職
・教育職
また待遇の良いポストにつくために、権力や肩書というのは、やはり意味があるものだと感じます。
転職活動時には「立派な病院で働いておられたのですね」という話に必ずなりますし、大学の(元)重鎮などアルバイトは、本当に切られにくいです(コネのないアルバイトから、切られていきます)。
元大学教授が、定年後にどこかの機関の理事や病院長になるというのも、よくある話ですよね。
医師の業務以外の仕事もする
「医師として(臨床医として)の業務以外の仕事もする」というのは、根本的な解決策でしょう。
僕の場合は、このブログがその1つです。医師の給料にはまだまだ及びませんが、少しずつ収入には繋がり始めています。
さらに金銭よりも大きな価値として、全く別の世界の「知識」や「話ができる人」が得られつつあります。
じっくり時間をかけて、これらを育てていき、医師という立場に全体重をかけている現状を変えていきたいと考えています。
それ以外にも、小さな勉強会を主催し、地域の医師と接する機会を増やしたことで、「ちょっと仕事を手伝ってくれない?」というお話もいただけるようになりました。
このように地域で名前を覚えてもらうというのは、先程書いた「出世をする」という方法のミニマムなステップかもしれません。
足りないのは時間
僕なりの結論
上の項で書いたとおり、「未来のためにできること」はいくらでもあります。ただ忙しい日々の中で、それをする時間を確保するのは簡単ではありません。
そんな中での、僕なりの結論は下記の通り。
・日々の業務で手一杯、将来のために種を蒔く時間がとれない。
・給料は少なめで、出費も多い。
・自由にアルバイトもしにくい。
・教授や院長を目指して研究や政治をするのは、どうも合わない(能力も足りない)。
こんな「出世する気がない、なんとなく医局員」みたいな昔の自分が、一番将来的に厳しい立場であると感じています。
「厳しい」というのは、「絶対に生き残れない、食いっぱぐれる」というわけではなく、右肩下がりの現実に対してできることが少なく、不安を抱えながら生きていかなければならないということです。
極端に振り切る必要はない
もちろん極端に振り切る必要はなくて、「若いうちから医療の第一線から引く」「いきなりフリーランス医師になる」みたいなことを勧めているわけではありません。
・今よりも少しだけ、余裕のある環境にうつる(時間的、金銭的に)。
・できた時間で、未来の自分の豊かさに繋がりそうな「なにかを」模索する。
このくらいが「今」と「未来」の、ちょうどいいバランスなのではないでしょうか。
僕自身、急性期病院のフルタイム常勤医という立場ではありますが、その割にはマイルドな勤務なので、色々なことに首を突っ込めています。
まとめ
ポイント
- 医師の待遇は、近年大きく崩れたわけではない。
- ただ少しずつ、待遇は厳しくなっている。
- 対処①:早めに蓄えをつくる。
- 対処②:需要から逆算して、キャリア設計をする。
- 対処③:安定したポストを得られる肩書を目指す。
- 対処④:医師(臨床医)以外の仕事をしてみる。
- 日々の業務しかできないのは厳しい。
- 少しの時間でも「将来のため」の準備を。
何か1つでも新しいことを始めてみたら、「不安」が「楽しみ」に変わるかもしれません。
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