働き方/その他

進路や志望科が決まらない研修医・医学生に伝えたい8つのこと【医師の進路】

2021年12月9日

進路に悩む学生・研修医

 

何科に進もうか、どこで働こうか迷っています。決断するときに、どんなことを決め手にしたらいいのかわかりません。

今回はこんな疑問に答えます。

 

この記事を書いている僕は、医師になって約10年。

・進路に悩んだり
・医局に入ったり
・医局を辞めて転職をしたり
・いろんな医師のキャリアを眺めたり
・相談をしたり、されたり

といったことを経て、現在は医師として働きながらブログを書いています。

 

志望科や働く場所を決めるときって、めちゃくちゃ迷いますよね。「一生を決めてしまう」とまではいいませんが、大きな決断であることは確かです。

そんな方のために、「10年前の自分が知っておきたかった情報」をまとめてみました。

 

主観に偏りすぎず、できる限り根拠をもって解説したいと思います。

では、いきましょう!

 

\研修医もOK!キャリア相談なら、エムスリーキャリア/

 

 

① 科によっての違い

まずは数値化しやすいところから、みていきましょう。科や専門分野によって、実現しやすい生活や労働条件に違いがあります。

 

労働時間

下記は、全科の平均勤務時間を1とした時、それぞれの科の平均勤務時間がどれくらいかを示した表です。

 

診療科内科小児皮膚精神外科整形
平均比0.991.010.850.911.141.00
診療科産婦眼科耳鼻泌尿脳外放射
平均比1.040.850.891.091.130.99
診療科麻酔病理臨検救急形成リハ
平均比1.011.060.951.211.020.92

引用元:医療従事者の需給に関する検討会 第28回 医師需給分科会 参考資料5

最も忙しい救急科は、眼科医や皮膚科医の1.4倍働いているわけですね...

 

給料

科ごとの平均的な年収は、下の通りです(変なまとめ方をされているところもありますが...)。

単位:万円

脳外科1480.3産婦人科1466.3
外科1347.2麻酔科1335.2
整形外科1289.9呼吸・消化・循環1267.2
内科1247.4精神科1230.2
小児科1220.5救急科1215.3
放射線科1103.3眼・耳鼻・泌尿器・皮膚1078.7

参照元:マイナビドクター ホームページ

高給な科とそうでない科では、数百万円程度の差になることが分かります。

手取りになおすと、100~200万円/年くらいの差ということですね。

 

ちなみにこういった収入ランキングをみるとき、注意したい点は下記の3点です。

・統計によって、順位が入れ替わることがよくある。
・平均値なので、地域や雇用形態でばらつきが大きい。
・高給であることは、単に長時間労働の結果かもしれない。
(時給が高いとは限らないので、労働時間との比較が必要)

こんな理由から、参考程度としたほうがいいとも思います。

 

生存率

科ごとの生存率、つまり「何%が転科・引退・ドロップアウトをすることなく続けられるか」を示すデータも紹介します。

・長く続けたいと感じるかどうか
・実際に長期間続けられるかどうか

は、ある程度「働きやすさ」を反映していると思います。

 

生存率男性

グラフが細かすぎるので解説すると、男性医師での傾向は下記の通り。

・リハビリテーション科・精神科・内科は長く続けやすい。
・救急科・形成外科・麻酔科は離れてしまう人も多い。
・救急科・小児科は、初期に離れてしまう人が目立つ。

 

生存率女性

女性医師の傾向は、下記の通り。

・続けやすいかどうかが、2極化している。
・内科・眼科・精神科・小児科・耳鼻科・皮膚科が長く続けやすい。
・救急科・泌尿器科・臨床検査科は早期に離れてしまう人も多い。

参照元:医療従事者の需給に関する検討会 第29回医師需給分科会参考資料

 

「科ごとの忙しさランキング」みたいなものを作るのは、正直難しいです。

主観が入るし、そういうものを叩く人も多いので。

かわりにこういった、公的な機関が出している「労働時間」や「生存率」などのデータをみて、雰囲気を掴んでもらえたらと思います。

 

② 修行期間はどこもハード

上で書いたとおり、科によって労働・生活面での傾向には違いがあります。とはいえ修行期間は、どこの科もハードです。

例えば下のグラフは、残業時間が年間1860時間を超える医師の割合を、科ごとに表したものです。

科別1860時間

参照元:第9回医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料3

外科医、脳外科医、救急科医が多いのはイメージ通りですが、「卒後3~5年目の専攻医(全科)」も、それと同程度に忙しいことがうかがえると思います。

実力はまだまだなのに、責任は増えるというしんどさもあります。

 

やりがい(楽しさ・興味)か、QOLか

 

これは進路を決める上で究極の選択だとは思いますが、「QOL」を選んでも修行期間は同じように大変です(QOLを実感するのは、しばらく先)。

修行期間を乗り切れるくらいの、やりがい(楽しさ・興味)は最低限必要かなと思います。

 

そして決断をしたあとは、「QOL重視で選んだこと」を忘れるのをおすすめします

「QOL重視で選んだはずなのにキツイ…自分は医師に向いていない」というふうに思ってしまう人も、いるようなので。

※ちなみに1860時間以上の残業は、働き方改革によって2024年から禁止されるので、現状より改善することは期待できます。

 

③ 修行期間をどう過ごすか

「若手の期間を、どのように過ごすか」ということについてです。

例えば、厳しい環境に身を置くか、少しゆとりを持っておくかという選択ですね。

 

色々試した結果、

・修行期間であることを意識して、やっぱり頑張ったほうが良い。
・ただし、自分が頑張ったと思える範囲で。

というのが、僕の結論です。

 

仕事に費やす時間は、どうしても人生のかなりの部分を占めることになります。

努力不足で、不安や引け目を感じながら働いていると、仕事がよりつらいものになってしまいます。仕事以外の時間にもそれを引きずってしまうこともあるでしょう。

 

ただし、そもそも医師の世界は厳しい世界です。「普通の医師」が、すでに過労といえるレベルに達しています。

参照元:第9回医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料3

「人と比べて」頑張っていると思えるほどの努力してしまうと、そのラインを軽く超えてしまいます。あくまでも【自分ができる精一杯】を目指していくことを、おすすめします

 

④ 10年を一区切りに

では、いつまで頑張ればいいのでしょう?

 

こんな疑問に対して、1つの答えをくれるデータを紹介します。「医師歴何年目で、自分のことを医師として一人前と感じるようになったか」という、アンケートの結果です。

~5年:2.6 %
5~10年:18.6 %
10~15年:26.1 %
15~20年:7.7 %
20年以上:5.3 %
まだ「一人前」になったと感じていない:39.7 %

参照元:医師転職研究所

「まだ一人前でない」というストイックな意見はさておき、どこかで一人前になるとすれば、【10年前後】というのが1つの区切りということになります。

ざっくりいうと、医師歴8~12年くらいですね。

 

このあたりから、「自分を主体にキャリアを動かしていける時期」に入っていきます(好きな条件を選べる立場になります)。

早すぎると、「もうしばらく修行ができるポストで」「未経験~半人前でもつけるポストで」などの制約が、かかってしまいます。

 

このように「ここから先は、自分の好きに生きる」というラインは、意識しておきたいものです。修行期間を乗り切るためにも、その後の人生で後悔しないためにも。

一人前になった後の期間は、キャリアプランにおいて「経済的回収期」とも呼ばれたりしますが、経済面だけに留まりません。努力して育てた成果をきっちり収穫して、快適に過ごしたいですよね。

もちろんその後もバリバリ働きたければ、それをするのも「収穫」です。

 

⑦ 価値観は変わる

価値観は変わる

「時間が経てば価値観は変わる」という前提で、計画をたてることをおすすめします。

体力は確実に落ちていきますし、家族との時間を重視したくなるかもしれません。職場の雰囲気も変わりますし、社会構造もきっと変わっていくでしょう。のんびり過ごすつもりが、のめり込める仕事をみつける人もいます。

未来の自分に選択肢を残してあげられるような選択を、心がけたいものです。

具体的な話は、次の項で。

 

後戻りしにくい決断はリスク

時間とともに価値観は変わるということを踏まえると、「後戻りしにくい決断は、それだけでリスクである」と言えます。例えば、

・辞めにくい医局に入る
・医局外で働きにくい分野に進む
・ニッチな分野に進む

などです。

 

辞めにくい医局については、下の記事で書いています

関連記事
入局してはいけない医局
入局してはいけない医局。そのたった1つの特徴とは

 

医局外で働きにくい進路というのは、例えば「大きな病院でないと専門性が活かしにくい(小さい病院ではあまり標榜していない)」科のことです。

ニッチな分野の面白さや、希少な技術に価値があることはよく分かりますし、そもそも「何がニッチか」の定義は難しいです。ただやはり働き口の選択肢が少ないのは、デメリットになりかねません。

これらが悪い選択というわけではありませんが、リスクについては理解しておいた方が良いと思います。
急に職場の雰囲気が変わることも、珍しくないので。

 

⑧ 進路の変更はあり

いろいろと解説してきましたが、「全然思ったのと違った」「ついていけない」と感じたら、進路の変更は大いにありです。

 

例えば、転科ですね。僕の周りにも、転科して成功している医師がたくさんいます。こういった人をみていると、進路の変更は決して失敗ではないと感じます。

確かに新専門医制度によって、「転科した後、専門医資格を取得すること」のハードルが、上がってしまったのは事実です。

とはいえ専門医資格なしでもできる仕事も、多くあります(在宅、産業医、美容分野など)。入り口が未経験者OK、資格不要の分野でも、奥深さや、やりがいはあるはずです。

この話の詳細や根拠は、こちらのインタビュー記事で。

関連記事
ドットコム取材
医師転職ドットコムを直接取材してみた~強み・評判・転職のトレンド~

 

転科まではいかず、「専門性を少しだけ変える」「働き方・働く場所を変える」ということであれば、イメージほど難しいことはありません(医師免許や医師としてのスキルの力ですね)。

 

ポイント

医師免許を持っていて、その時にできる努力をする姿勢があれば、選択の先で「詰んでしまう」というのは考えにくいです。

これを知った上で、「今の自分の心に正直に、チャレンジをすれば良い」と思います。

医師人生って、長いので。

 

まとめ

進路に悩んでいる人に伝えたいことは、下の通りです。

ポイント

  • 科によって生活の傾向に違いはある
  • 修行期間はどこもハード
    (自分なりに「頑張った」と思える程度に)
  • まず10年を一区切りに考える
  • 時間とともに価値観は変わる
  • 後戻りしにくい決断はリスク
  • 進路の変更はあり

 

抽象的な話や個人的な考えも多かったですが、参考にしてもらえると幸いです。

具体的な情報を元に、将来についてきちんと考えたいのであれば、転職エージェントにキャリア相談をしてみるのもいいかもしれません。

・どの科の求人が多いのか
・どの地域で医局の力が強いのか
(入局必須でない求人がしっかりあるか)
・良い待遇を得られるのは、どの分野、どのスキルか

こんな情報がもらえれば、根拠をもって進路を決めることができるはずです。

 

「研修医も利用OK(相談だけでも)」と明言している転職エージェントは、下の2社です。

【医師転職ドットコム】(全科)

【美容医師求人ガイド】(美容分野特化)

この2社で保険診療、自由診療ともに、大体をカバーできると思います(いずれも無料で利用できます)。

 

さて、今回は以上です。

-働き方/その他

© 2022 勤務医のマーチ