今回はこんな悩みについてです。
この記事を読むと分かること
- 都道府県ごとの医局勢力の強さ(目安)
- 勢力の強い医局のメリット・デメリット
- 医局など、修行をする場所を選ぶときの考え方の例
こんにちは、コアライミナトです。このブログでは、医師の転職や医局について解説しています。
・地方は、まだまだ医局の勢力が強いぞ
・地方では、医局を辞めた後に苦労するぞ
これらは時々聞く言葉ですよね。僕自身も誰かにこのようなことを言われ、漠然とそんなイメージを持っていました。
ただそれを証明するようなデータをみたことはなかったですし、本当に差があるとしてもどの程度のものなのかは、はっきりイメージすることができませんでした。
そこで今回は、「都会・地方と医局勢力の関係」について調査してみました。
医局勢力の実態
医局に頼っている病院の割合
早速ですが、参考になりそうなデータがみつかったのでお示しします。都道府県ごとの、【大学(医局)に医師の採用を依頼している病院の割合】のデータです。
このデータを、都道府県を人口の多い順に(都市部から順に)に並べ、グラフにしてみました。
参照元:日本医師会総合政策研究機構 「病院における必要医師数調査結果」
例えば東京は、最も人口が多く(一番上に配置)、調査に協力した東京の病院のうち69.3 %が医局からの医師派遣を受けているということになります。
どうでしょう?都市部(グラフの上半分)の方が、全国平均(緑線)よりも医局に頼っていないという傾向が、うっっっっっすらあるでしょうか。
・全体を「都市」と「地方」で2分割すれば、医局の勢力に僅かな差はあるかもしれない
・一般化できるほどの差ではない
・県ごとの差は、そこまで大きくない
ちなみに「旧帝大は勢力が強い」というのもよく聞きます。ただ旧帝大のある都道府県に赤線を引いてみましたが、県単位でみれば、特に傾向はなさそうです。
科による
医局の勢力を認識しにくくしている要素の1つに、「科ごとに状況がかなり異なる」ということがあります。
こんなこともよく起こります。独自の教育システムや研究、専門性など人気となる場合ですね。
時期による
さらに複雑なことに、同じ医局でも、時期によって勢力が強くなったり弱くなったりします。
医局の勢力は、
・教授など医局上層部のキャラクター
・医局員の数
という要素で変動します。
医局上層部に人を惹きつけるものがあれば医局員が増えますし、どんどん勢力を強めようという方針であれば関連病院は広がっていきます。
医局員の数も重要な要素で、人数が多ければ広い範囲に安定して派遣できるため、自然と勢力は強くなります。
こうして医局員や関連病院が増えれば、「急な欠員が出やすくなる」「遠方にも安定して派遣しなくてはならない」といった状況になり、どうしても人事は強権的になっていきます。
逆にもともと大きな医局であっても、医局員の希望と異なる運営をすると、ごっそり退局者が出て勢力を縮小していくことになります。
シーリングという要素
シーリングも、状況を複雑にする要素です。
シーリングは簡単に言うと、都市部など医師過剰地域の人気科では、専攻医数に定員を設けると言う制度です。
定員が絞られるなかで、専攻医を採用できるような病院をおさえている医局は、
・この都道府県で専攻医になるなら、入局すること
・入局したいならば、人事異動を受け入れること
という条件を、若手医師に対して出せるというわけですね。
このデータの問題点
「医局に頼っている病院の割合」から医局勢力を推測するということには、問題点もあります。
A県:所属医師の1 %を医局に頼っている病院が75 %
B県:所属医師の100 %を医局に頼っている病院が75 %
例えば上記にように、同じ75 %の県でも実態は大きく異なるという点です。ですから、あくまで「目安の1つ」ですね。
ただ医局勢力全体を数値化できる数少ないデータで、やはり参考にはなると思います。
結論として、医局の勢力を把握するのは難しく、「都市だから、地方だから」と一括にはしないほうがいいということですね。
勢力の強い医局のメリット、デメリット
そもそも勢力の強い医局、弱い医局どちらがいいかという話です。
それぞれにメリット・デメリットがあり、一概にどちらがいいということは言えないと思います。
強い医局のメリット
「医局員や関連病院が多く、人事異動がしっかりある」そんな医局のメリットは下記のとおりです。
・人数が多く、活気がある
・関連病院が十分にある
・非常勤先が十分にある
・欠員が出たときの補充がされやすい
やはり人数が多いというのはそれだけで活気につながりますし、経験できることや接点を持つことができる人も増えていきます。
十分な関連病院を持っているというのも、重要です。そうでないと「特に大学向きの人材ではないけれど、関連病院のポストが足りず、なんとなく大学にいる」ということが起こってしまいます。斡旋できる非常勤数の大小は、大学病院勤務期間の収入に直結します。
また欠員が出た場合、人事の力が強いので、そのポストが補填されやすいというのもメリットです。
強い医局のデメリット
・異動が広範囲に及ぶ
・人事が強制的になりがち
多くの医局員や関連病院を抱えると、異動する可能性のあるエリアは広くなります。
異動そのものも負担ですし、関連病院が増えると「不便な土地にある」「給料が異常に安い」といった不人気病院も出てきます。
また人が増えれば急な欠員も出やすくなり、それを埋めていくために異動が増え、強制的にならざるを得ません。
こうして「みなに均等に人事異動をさせるのか」「事情に配慮し、異動に差をつけるのか」など、主に人事という面で問題を抱えやすいのがデメリットです。
医局の選び方を徹底解説 チェックしたいポイント10選
では、どう考えるか
ここまで医局の勢力について解説してきましたが、では「医局に入るかどうか」「どの医局に入るか」を判断する上での、考え方の例を提示したいと思います。
医局の勢力、重視するなら
まず医局の勢力(人数や関連病院、人事)についてしっかり把握した上で、判断したい場合です。
これまで解説してきたように、ほとんどの人が(あるいは全ての人が?)全体像を把握できていないまま、なんとなくのイメージで語っているのが実態です。
なんとなくのイメージを信じるのではなく、
・「医局に頼っている病院の割合」など、きちんとしたデータ
・それぞれの医局に貼っている、関連病院と医局員一覧
・医局員への聞き取り調査(どんな人が、どんな頻度で異動しているか)
などを丁寧に確認することをおすすめします。
医局の選び方を徹底解説 チェックしたいポイント10選
そこまで調査しないなら
・そんな調査をするような労力は割けない
・学生や研修医のうちから、全体像を把握することは難しい
一方でこんな声も、もっともだと思います。僕自身、よくわからないまま医局に入りました。
そんな人は、下の記事を読んでみてください。
入局してはいけない医局。そのたった1つの特徴とは
内容をまとめると、
・もし離れることになっても、その時に大きな労力を必要としない医局であれば、それほど苦労することはなさそう
・どれだけいいと思った医局でも、年齢とともに価値観は変わるので、「もし離れるなら」は考えておいたほうがいい
というものです。
また「自分や医局を取り巻く状況がわかるようになるまでは、決断を見送る」というのもありだと思います。働きたい地域×志望科の組み合わせが、入局なしで修行が始められるのであれば、かなりいい選択肢です。
永住予定地以外での修行は...
とはいえ、「医局の勢力どうこうはさておき、一旦は都会に出て修行をする」というのはメリットのある考えだと思います。
さまざまな環境・流派を経験することで勉強になることは多いですし、医師として生きていく上で不可欠な「人とのつながり」も増えていきます。
「出身大学でないところの医局に入ったから」「途中入局をしたから」冷遇された、という話はほとんど聞きません。
「どうしても一生住み続けたい土地」であれば、もし医局を離れたくなったときかなり気を使わなければなりませんが、縁の薄い土地であればそんな必要もありません。
出身大学以外の医局に入るのって、どうなの?【元医局員が解説】
まとめ
「医局の勢力」というテーマで、解説してきました。
ポイント
- 地方だから、都会だからというのは単なるイメージ
- 他所も含めての実態を正確に把握している人は、ほとんどいない
- 勢力が強い医局には、メリット・デメリット両方ある
- きちんと根拠を持って行動するのがおすすめ
- 「考えが変わったとき」も想定して、決めたほうがいい
医局に入るかどうか、どんな医局に入るかは、人生への影響も大きいので迷いますよね。この記事がそんな迷いを解決する参考になれば、幸いです。
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