こんな疑問に答えます。
この記事を書いている僕は学生時代から色々な医局を見学に行き、入局してから約8年間、医局員として過ごしました。その後は退局、転職を経験し現在に至ります。
医局を内側、外側の両方からみたことでわかった、医局の実態をお伝えしていきたいと思います。今回は「医局の大まかな構造」についてです。
医局のメリットやデメリット、裏話といった話の前に、おさらいしておきたいポイントをまとめました。
医局を会社に例えると
ポイントは次の3点です。
・ 教授が社長、医局員が社員
・ 勤務先は大学病院と関連病院
・ 人事権とポストの独占権
教授が社長、医局員が社員
A大学 脳外科医局を例として説明します。
「A大学 脳外科」が企業名です。「教授」が社長で、「医局員」が社員にということになります。
勤務先は大学病院か関連病院
A大学病院 脳外科が本店です。近隣にある、A市民病院や私立A総合病院の脳外科は関連病院とよばれ、これらが支店にあたります。
関連病院は、主に中~大規模な急性期病院から構成されています。
ここでのポイントは、関連病院の全ての科を抑えているわけではないということです。
つまりA市民病院 脳外科は、A大学 脳外科医局のものです。しかし同病院の循環器内科は、A大学 循環器内科医局のものということになります。
人事権とポストの独占権
教授は人事権と、関連病院ポストの独占権を持っています。
教授は人事権を使って、大学病院と関連病院に医局員を派遣します。これによって、勢力圏の医療を維持していきます。
また教授にはこれらのポストの独占権があります。そのため医局員以外は、大学病院や関連病院で働くことはできません。
医局と会社の違うところ
人事は医局、雇用主は病院
医局と会社と大きく異なる点があります。医局には人事権とポストの独占権があるだけだという点です。
あくまで医局員を雇うのは個々の病院です。医局が医局員を雇用するわけではなく、医局から給与が支払われるわけではありません。
給与はそれぞれの病院の基準で支払われます。医局の指示で病院を異動するときは、自己都合での退職ということになります。
「医局の指示を受けて職場を異動するが、雇われるのは個々の病院に」このズレこそが、後に医局員にとって問題となります。
関連病院の決まり方
昔からの慣習で決まっている
医局の関連病院の範囲はどのように決まるのでしょうか。答えは、「昔からの慣習で決まっている」です。
県境ではっきりと区切られている、というわけではありません。A市民病院や私立A総合病院は、A大学 脳外科医局のもの(A大学系と表現されます)。でも同じ県内の南A病院は、B大学系ということが起こりえます。
あくまで一般論ですが、いわゆる旧帝大は関連病院が多く、地方の私立大学は少ない傾向があるようです。
勢力図が変わることはある
ときに勢力図の変更がおこります。医局が不人気あるいは退局者が続出した等、人員不足になったときです。
医局員が激減したA大学 脳外科医局は、A市民病院から撤退するしかありません。しかし市民病院も科を閉めるわけにはいかないので、かわりにB大学から脳外科医が派遣されるようになる、というわけです。
関連病院を失うこと、イコール医局員の働き口を失うことです。
医局は必死になって、昔からの関連病院を維持しようとします。
【医局の勢力】地方で強い?都会で弱い?単純ではないという話
医局の目的
このように医局員と関連病院のポストを抱え、医局は何を目指しているのでしょうか。
・ 教育
・ 臨床
・ 研究
答えは、この3本柱で説明できます。
教育:学生、医局員の教育
まずは医大生の教育です。大学医学部の教員は医師です。他の学部のように、専属の教員として医師を抱えることはできません。
そこで大学(病院)に配属されている医局員が、学生の授業を行います。プリント配りや出席確認のような仕事をしているのも医局員です。
若手医局員の教育も、重要な使命です。医局員の質は大学病院をはじめとした、勢力圏内の医療の質に直結します。
違う病院に所属していても、医局全体で若手の教育をしようという風土があります。
また定期的に配置転換があることで、知識や技能の幅は広くなります。
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臨床:勢力圏の医療を支える
医局には、勢力圏である地域の医療を支えるという使命があります。このため関連病院に医師を派遣し、欠員が出れば補充します。
また教育の項でも書きましたが、医局全体で若手の臨床能力を伸ばそうという意識が強いです。地域の子供を、周囲の大人がみんなで育てるイメージですね。
一般的に同じ医局の関連病院同士では、患者紹介やコンサルトがよりスムーズです。
医局の垣根を超えても当然可能ですが、全く知らない間柄よりは相談がしやすいです。コンサルト能力も、立派な医師の能力です。
研究:研究で成果をあげる
大学の教室は、研究で常に一定の成果を出すことが義務付けられています。
多くの医局員を抱えることで、研究に熱意を持っていたり、才能のある人材を発掘できるというメリットがあります。
また研究には労働力が必要です。「ちょっと2年間だけ手伝って」と、医局員は協力を要請されることがあります。
そして関連病院を多く抱えれば、希少症例を発見することができたり、大規模な研究を行いやすくなります。
医局の入り方
教授に挨拶にいくと入れる
医師であれば、教授に挨拶に行くことで医局に所属できます。それほどシビアな面接はなく、夕食を御馳走になって「ではよろしく」というパターンが多いです。
契約書を交わすことはなく、口約束のみです。
簡単に入局できる理由は
- 来るものは拒まず育てる という伝統
- 医局が医局員を雇うわけではないので、抱えておくのに金銭的なコストはかからない
という2点があげられます。
入局が断られることは
少ないですが、あります。医局員として抱えるのにコストはかかりませんが、関連病院(働き口)には限りがあるため、人気の教室は入局できないということがおこりえます。
近年はシーリングという制度も始まりました。簡単に言うと、都市部の人気科では専攻医(昔で言う後期研修医)の募集定員が絞られるという制度です。医局であっても、定員の上限を超えた新入局者の受け入れはできません。
また人格に明らかな問題ありと判断されれば、他の医局員への影響も考慮し断られることはあります。
ただし基本的に医局は人手不足で、希望すればほぼ入局ができます。
まとめ
医局の構造について大まかに説明しました。
・医局とは教授が社長、医局員が社員とした会社のような存在
・会社と違うのは、医局員は医局ではなく病院に雇われるということ
・医局の目的は、教育、臨床、研究
・教授に挨拶に行けば、基本的には入ることができる
今回は以上です。
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