入局をするかどうか... 医局に入ると、どんなメリットがあるのかな?
こんな疑問に答えます。
この記事を書いている僕は入局してから約8年間、医局員として過ごしました。その後は退局、転職を経験し現在に至ります。
最後は退局してしまいましたが、医局員としての生活にメリットを感じていたことも確かです。
そんな経験を活かして、「医局に入るメリット」についてまとめました。入局するか否かの判断材料の一つになると思います。
また入局を決断した方にとっては、前向きな気持ちで、メリットを意識した修業をする手助けになるはずです。
① 関連病院で働ける
医局は関連病院のポストの独占権を持っています。医局外の医師は、関連病院では働けません。医局の関連病院は主に大~中規模の病院です。
東京や大阪といった大都市では、医局の支配が及んでいない病院がそれなりにあるようです。
しかし地方ではまだまだ医局の力が強く、多くの大~中規模病院は医局の関連病院となっています。
若手医師のほぼ全員が、一定期間は大~中規模病院で働くことを考えるのではないでしょうか。専門医の取得条件を満たす必要もあります。
専攻医の時期に限れば入局を避けられる可能性がありますが、専攻医の雇用契約は多くが専門医資格を得るまでのまでの期間限定です。
そのため、専門医資格取得「見込み」での転職活動をすることになります。
地方や科によっては、入局を避け続けるというのはなかなか難しいかもしれません。
② 休職するとき代理を立ててもらえる
妊娠/出産/育児、病気、介護などで、仕事を休む時には医局が代理を立て、復帰するときは代理を引き払ってくれます。
これによって休むことになっても、職場への気兼ねが減ります。
またなんらかの事情で常勤が難しくなった場合は、非常勤先を用意してもらえます。
③ 頼れる人が増える
「昔は、地域の大人みんなで地域の子供を育てていた」というような話を、聞いたことがあるのではないしょうか。
医局も昔ながらのもので、似たような風土があります。
同門会や医局の斡旋するアルバイト、関連病院間の異動、難解症例のコンサルトなどをきっかけに、頼ることのできる先輩が地域に増えていきます。
そこで出会う先輩は接する機会が少なくても、後輩のように指導してくれます。
医師としての実力は、個人の知識やリサーチ能力にはとどまりません。一人でできることは限られており、コンサルテーション力(あるいはコネクション)も立派な医師としての実力です。
④ さまざまな環境を経験できる
異動は環境の変化などで、多くの労力がかかります。ただメリットがあるのも確かです。多くの病院で働くことで、幅広い経験をすることができます。
単純に経験する疾患が増えます。また同じ病態であったとしても、微妙に異なるアプローチをとっている場合もあるでしょう。
医学的なことだけではなく、いくつか病院をまわったあとには、病院ごとのシステムの差異がみえるようになります。
いいチーム運営のコツが学べたり、逆に非効率的なローカルルールを発見しそれを改善できるようになります。
これらはいずれ現場を率いていくうえで、重要な経験です。
医局人事で異動をするメリット6選【元医局員が解説】
⑤ キャリアについて迷わずにすむ/転職活動が不要
医局員として過ごしていれば、医局がある程度のレールを敷いてくれます。これによりキャリアについて自分で決定/行動する機会が減ります。
これには良い面も悪い面もありますが、若いうちは良い面が勝るかもしれません。
迷う、悩む、決めるということには、膨大なエネルギーがかかります。
医師3年目から定年まで、1つの病院で勤め上げる可能性は極めて低いです。医局に属していなければ、どこかのタイミングで転職活動をしなければなりません。
「一通り一人で」ができるようになり、人生に目を向ける余裕ができるまで、医療だけに集中できるというのはメリットではないでしょうか。
⑥ 専門分野がもてる
主に大学病院での勤務、あるいは学位の取得をした場合です。
市中病院でも専門的な診療をしているところはありますが、専門性という意味では大学病院が上です。
若いうちは、「まずcommonな病態一通りを、自分で対処できるようになりたい」という欲求があるでしょう。確かにこれには、市中病院のほうが近道です。
しかし門前の小僧の耳学問程度であっても、専門分野を持っておくことは「その分野に強い」以外にも良い点があります。主なものは次の3つです。
・持ちつ持たれつの関係が作れる
・交流が広がる
・他分野の理解が早い
一度何かの分野を深く掘り下げて理解したことがあれば、似たようなアプローチをすることで他分野を理解するスピードも早まります。
一分野を一生かけて突き詰めた教授が、他分野の内容で深い議論をしているのをみることがよくあります。
これは自らの専門分野を軸に、共通する点、異なる点を探りながら理解を深めているではないかと考えています。
・持ちつ持たれつの関係が作れる
自分が何かの専門家であれば、別の分野の専門家と持ちつ持たれつの関係を作ることができます。
多くの専門家は、尋ねれば見返りを求めず教えてくれます。しかし自分も専門分野をもつことで、継続した良い関係を築きやすくなります。
また部署内や病院内といった、狭い範囲であっても同様です。年相応の知識を平均的に持っているだけよりも、加えて得意な分野があると、より早くから貢献ができるようになります。
教えられてばかりの立場からの、脱却するきっかけになります。
・交流が広がる
学会などで、先輩が遠く離れた土地の医師と何やら親しそうに会話していて、それをうらやましく思ったことはありませんか?
専門分野が似ていて、学会などで何度か会っているうちに仲良くなるということはよくあります。
若いうちに「専門分野」に手を出すことは、「一通り自分で」には遠回りかもしれません。それによる焦りもあるでしょう。
しかし最終的に大きく育つための、土台になるとも思います。
⑦ 定年後も仕事が用意される
人生100年時代、定年後も45 %程度の人が仕事を続けるそうです。60-70歳台に限れば、さらに多いでしょう。この状況にあって、定年後の仕事の確保は重要です。
医局員として定年を迎えた医師には、定年後も医局から仕事を斡旋してもらえます。
定年を迎えた病院を継続する場合が多いです。それ以外では、近隣の病院、医局の後輩が常勤として働いている病院、以前勤めたことのある病院のポストが用意されます。こういった環境では、仕事がしやすいですよね。
この点に関しては、高齢化が進んでいくにつれて、より大きなメリットとなっていくでしょう。
まとめ
医局に入ることのメリットを、7個あげました。
医局に入るメリット
- 関連病院で働ける
- 休職するとき代理を立ててもらえる
- 頼れる人が増える
- さまざまな環境を経験できる
- キャリアについて迷わずにすむ/転職活動が不要
- 専門分野がもてる
- 定年後も仕事が用意される
改めて眺めてみると、特に若いうちにメリットが多い制度なのかなと感じました。
この記事が、キャリアを考える上での参考になれば幸いです。
今回は以上です。
下の記事では、医局に入るデメリットを解説しています。よろしければそちらもどうぞ。
医局に入るデメリット5選【元医局員が語る】