こんにちは、コアライミナトです。
今回は、医師が副業をするための準備の1つ、「環境作り」というテーマで解説していきます。
副業をする上で「何をするか」を考えるのも重要ですが、それより前に「そもそも副業ができる環境か」を考える必要があります。
そこで今回は、下の2点を中心にまとめてみました。
・許可されているか【法律・規則】
・時間と労力が確保できるか【職場環境、時間を確保する工夫】
では、行きましょう!
副業禁止の環境を避ける
副業準備の第一歩として、兼業が禁止されている環境を避ける必要があります。
・公的病院
・大学病院・医局
・民間病院
・研修医
それぞれについて、規則や実態を解説していきます。
公的病院
結論から言うと、
ポイント
ということになります。詳しくみていきましょう。
独立行政法人
まず「公的病院で働いている医師=公務員」というわけではありません。
公的病院と呼ばれる組織は独立行政法人となっており、独立行政法人は下記のように分類されています。
独立行政法人、特定独立行政法人、地方一般独立行政法人、地方特定独立行政法人
独立行政法人・地方一般独立行政法人の職員は公務員ではなく、就業規則に違反しない限り、副業は禁止されていません。ただ法人役員は、副業が禁止されています。役員には、院長や理事長、副理事長、理事などが相当するため、かなり出世しない限りこれには該当しませんね。
特定独立行政法人・地方特定独立行政法人では、職員、役員ともに公務員(それぞれ国家公務員、地方公務員)であり、原則として副業は禁止されています。
つまり独立行政法人・地方独立行政法人で働いている場合は、公務員ではないわけです。ただ完全なる民間人かというと、全員がそうというわけではなく、「みなし公務員」という立場になっている可能性があるので注意が必要です。
みなし公務員(準公務員)
みなし公務員(準公務員)とは、
・公務員ではないものの
・公共性・公益性の高い職業に従事しているため、公務員とみなされ
・法律では公務員と同等に扱われることがある
こんな人のことを指します。
ちなみに、みなし公務員は法的に明確に規定された立場であって、
というのとは違います。
みなし公務員とは、公務員ではないが当該法人の設立根拠法において、「刑法、その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす」旨の規定(みなし公務員規定)を持ち、罰則について刑法が適用されるものをいう。
みなし公務員が副業をできるかどうかについては、「公務員に課せられている争議行為等の禁止や兼業の禁止等の規定は、みなし公務員には包括的に課されることはない」とされています。
みなし公務員の副業は、「公務員と同等に禁止されるわけではない」ということですね。ただし「では、どこまでOKか」は明確ではなく、個々の病院での規則に基づいた判断ということになっているのが実態のようです。
結論
公的病院医師の副業についての、まとめです。
・公務員か
・みなし公務員か
・就業規定に違反しないか
このあたりを職場に確認し、「許可が得られれば」副業ができるということになります。
大学病院・医局
国公立大学は、それぞれ国立大学法人・公立大学法人の形をとっており、これらの職員は独立行政法人と同様に「非公務員型」となっています。つまり就業規定に従って許可を得れば、副業は可能です。
国立大学法人制度は、独立行政法人制度の枠組みを利用しながらも、大学にふさわしい独自の制度となっています。
引用元:文部科学省ホームページ
私立大学職員に関しては、民間病院と同様です。
実態としては、大学病院の医師の給与水準が、アルバイトをすること前提のものとなっていることからも分かる通り。
ごく稀に、(研修日廃止による)実質的な副業禁止を行う大学病院も出てきていますが、あまりにも現実離れした決定であり、大量の離職者を出すこととなりました。
大学病院の場合は「勤務時間が長い」「行事などでイレギュラーに忙しくなる」など、むしろ時間の確保が問題になることが多い印象です。
また医局によっては独自のルールとして、斡旋しているもの以外の副業を禁止しているところもあるので、その点は注意が必要です。
医局が斡旋したバイト以外を禁止する理由とその対処法
民間病院
民間病院であれば、副業を禁止する法律はありません(日本国憲法第22条・職業選択の自由)。
病院は就業規則を設けることができますが、原則としてそれによって副業を禁止・制限することは許されていません。根拠は、下記の通り。
副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、例えば、
・労務提供上の支障がある場合
・業務上の秘密が漏洩する場合
・ 競業により自社の利益が害される場合
・自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
に該当する場合と解されている。
「副業によって具体的な弊害が出る場合」に限られるわけですね。
初期研修医
初期研修医が副業、アルバイトをすることは禁止されています。具体的な規定は、下記の通り。
医師法第16条の2
診療に従事しようとする医師は、臨床研修を受けなければならない。
医師法第16条の3
臨床研修を受けている医師は、臨床研修に専念し、その資質の向上を図るように努めなければならない。
「臨床研修に専念」が、どの程度を指すのかという問題はありますが、
・アルバイト(医師およびその他の業種)、つまり給与所得に相当するもの禁止
・事業所得や雑所得に相当する副業も、自ら労力をかけて行うものは禁止
・投資などを自ら労力を使わない形で行い、収入を得るのはOK
というのが、実際のところのようです。
バレるのはこんなとき
副業をしていることがバレてしまうのは、主に次の3パターンです。
現場をみられる
まずは副業をしている現場をみられてしまう、というパターンです。
例えば、こんな状況でしょうか。
・医師としてアルバイトをしている病院に、同僚やその家族が患者として訪れる。
・紹介状や検査結果などの書類に名前が残ってしまう。
自分で言ってしまう
続いては、自分から周りの人に言ってしまい噂になるパターンです。
副業が軌道に乗り儲かり始めると、どうしても周りの人に言いたくなってしまいます。また周囲へのちょっとしたアドバイスをきっかけに、副業をしていることを伝えてしまうというのもあるようです。
住民税の金額から
最後は、住民税の金額からバレてしまうというパターンです。
住民税は前年度の所得によって決まるため、これが本業の給料分よりも多いことで、経理の人に気付かれる可能性が出てきます。
住民税の納付方法を「特別徴収」ではなく「普通徴収」にして、自分で納税するということで対策をすることができます。
医局にいると難しいかも
副業を、ある程度以上の規模で継続してやっていきたいのであれば、医局に所属している状態では厳しいかもしれません。
医師以外の仕事
医師以外の仕事、特に自分でビジネスを作るのは、医局に所属しているとかなり厳しいです。医局に人事権を握られてしまっているので、いつ・どんな環境に異動になるかわからないからです。
困ってしまうのは、例えばこんな状況でしょうか。
・副業が許可されない(公的)病院に、異動になる。
・長時間労働が常態化している病院に、異動になる。
・仕事からフリーになる時間が取りにくい病院に、異動になる。
・給料が下がり、生活をするのに精一杯になってしまう。
・転居によって、副業の拠点から離れてしまう。
・単身赴任によって、家族の協力が得られなくなる。
・住所などが変わるたびに、開業届やクレジットカードなど個人情報の変更をしなくてはならない。
ビジネスは、時間をかけて丁寧に丁寧に、それこそ自分の子供のように育てていくものです。そのため「いつか白紙にされてしまうかも」と思いながら作るのは、精神的にもなかなか難しいものがあります。
医師のアルバイト
医局に所属している人(=人事異動があるかもしれない人)でも、医師としてのアルバイトならば、やりやすいでしょう。
単発=スポットバイトならば、異動のことを考慮する必要はありません。定期の非常勤も、ある程度の期間続けられそうならば、問題はないでしょう。
ただ先程も書いたとおり、独自のルールとして自由にアルバイトをすることを禁止している医局も多いので、その点の注意は必要です。
禁止されてもやりたいなら
特に公務員や研修医など、法律で禁止されている場合は。
確かに副業は楽しいですし、収入面のメリットも大きいです。ただやっぱり本業、つまり医師としての仕事が、人生を支える基盤です。これまで医師として費やしてきた時間や、築いてきた信用をリスクにさらしてまで、やるようなものではありません。
こんな方は、「収入を得ない形」で始めてみるのをおすすめします。収入を得なければ、副業ではなく趣味の範疇です。もちろんお金をあまりかけない形で、です。
例えば、「飲食店経営」に興味があるならば、まずはブログやSNS、Youtubeで「パスタに関する情報発信をしてみる」といったことですね。広告を貼らなければ、収益はでません。
こういった活動を通して、知識や経験、人脈、未来のお客さんを獲得していくわけですね。そして「ある程度成果が出たら、副業ができる環境に転職をして…」という戦略です。
時間を作るには
勤務医の現状
副業をしていく上で、「時間をつくる」というのも必須といっていいでしょう。ちなみに下のグラフは、勤務医の勤務時間を示したものです。
参照元:第9回医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料3
中央値は50~60時間/週で、これは年間の「残業時間」に直すと約780時間となります。ちなみに医師以外の職業では「年間残業時間が720時間まで」と定められており、医師の中央値はこれを超えてしまっているわけです。
安定して副業をしていきたいと思ったら、本業の勤務時間は医師の中央値くらいまで、できればそれ以下に抑えるのが望ましいです。
キャパシティを少なく見積もる
「時間」や「体力」に関連する話として、「自分のキャパシティを少なく見積もっておく」ことをおすすめします。
本業はなるべく余力のある環境が望ましいですし、副業もまずはあまり力を注がなくても継続していける設計にするといいでしょう。
頭の中を、本業と副業で2分割して、常にどちらかのことを考え続けるのは、慣れるまで本当に大変です。
医師の仕事一本であれば、多少の無茶を努力でカバーすることができてしまいますが、ここに副業の分まで加わってくると、努力でどうにかなる余地が半分になってしまうのですよね。
ここを見誤り、「自身の忙しさが原因で潰れてしまう」という失敗もよくみかけます。とにかく長く続けられるよう、考えるのがポイントです。
時間を作る工夫
医師が副業時間を作るためにできる工夫を、いくつか紹介します。
本業の職場
まずは本業の職場での工夫です。カンファレンスを業務時間内にするようにしたり、任せられる仕事は他のスタッフに頼んだりといったことですね。
やりすぎると嫌われてしまいますし、「副業をするから」という理由では通りにくいかもしれません。ただ現在進められている「医師の働き方改革」という視点からは、奨励されるべき工夫だと思います。
副業選び
続いては、副業選びについての工夫です。キーワードは「近く」です。
例えば家の近くでできる副業を選べば、移動時間が短縮でき、それだけ時間ができます。ネットを活用し、在宅でできるものを選べば、移動時間や外出準備は不要ですよね。
最近は、マイナビDOCTORがオンライン診療のアルバイトに力を入れているようです。
もう1つの「近く」は、できれば本業と近い分野を選ぶということです。遠い分野を選んでしまうと、本業、副業、プラス勉強の3つを並行してやらなければなりません。
副業界隈でよく言われる「勉強しながら、副業を進めていく」って、本業が忙しい医師には、なかなかハードルが高いです。
時短サービスの利用
3つ目の工夫は、時短サービスの利用です。詳しくは下の記事に、まとめています。
忙しい医師におすすめの時短サービス【5種類、13選】
転職
時間を作るための、最も根本的な方法は転職でしょう。
人数に対して業務量が多すぎる職場や、ゆっくり仕事をする文化のある職場では、なかなか改善が難しい場合もあります。
副業のためだけに転職をするのは、なかなかハードルが高いですが、
・どうしてもやってみたい副業がある
・趣味の範疇で続けてきたことが、軌道にのりはじめた
・もともと転職を考えていて、副業もその後押しの材料に
という状況ならば、ありかもしれません。
まとめ
医師が副業をするための、環境づくりについて解説してきました。
ポイント
- 「禁止かどうか」と「時間の確保」がポイント。
- 公的病院、国公立大学病院では、許可が下りれば副業ができる。
- 初期研修医は、副業ができない。
- 医局にいると、できる副業が限られる。
- 禁止されているなら、収益をあげない形でやってみるのはあり。
- 勤務医は、時間の確保も重要。
- 時間を確保するために、本業の進め方や副業選びの工夫を。
副業は楽しいですし、人生経験という意味でも大きなプラスになります。
一方で簡単なものではなく、「バレないように…」「忙しすぎる仕事の合間を縫って…」という状況では、継続していくのはなかなか難しいです。
さて今回は以上です。
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