今回は、こんな疑問に答えます。
この記事を書いている僕は医師歴約10年。その大半を医局員として過ごし、その後退局、転職を経て現在に至ります。
医局でのキャリアのなかで、比較的多くの病院での勤務を経験してきました。
僕はどちらかというと人事異動を負担に感じていて、それもあって医局を辞めてしまったのですが、異動をすることにメリットがあるのもまた事実です。
こういった経験をもとに、仕事面、生活面からみた人事異動のメリットを解説していきます。
診療経験を積める
まず第一に多くの病院で勤務をすることで、多様な診療経験を積むことができます。
病院が変われば、経験できる疾患そのものがかわります。それだけではなく同じような症例に対しても、病院や医師ごとに考え方やアプローチの仕方が異なります。
若いうちはこうした違いに戸惑うことも多かったですが、結果として自分の中でのバランスのとれた診療の芯ができたように感じます。
頼れる人が増える
一緒に働いた経験のある人は、ちょっとした時に頼りやすい存在です。そして複数の病院で働くことで、こういった人がどんどん増えていきます。
もちろん正式な形でコンサルテーションや紹介をすると、それまで接点のなかった医師の力も借りられる場合が多いです。
ただ「ちょっとしたときに相談ができる」というのは、日々の仕事をスムーズに行っていく上で非常に大きなメリットとなります。
個人の力は限られていて、「頼れる人が多い」というのも、医師として大切な能力です。
特に僕のように医局を離れ、新しい人と出会う機会が減ってしまった医師からすると、これまでに一緒に働いた人々は本当にありがたい存在です。
マネジメントを学べる
医師としての経験年数が上がっていくと、大なり小なり組織や部署のリーダーとなっていくことが求められます(働き方によりますが)。
異動によって多くの先輩医師の下で働くことで、こうしたマネジメントについて学ぶことができます。
当然ながらうまくいっている人ばかりではありません。ギスギスした職場では、なぜうまくいかないかを分析し反面教師にすることができます。
またシステム面でも同様です。どんな病院にも、効率の悪いローカルルールや必要な設備/物品の不足といった、改善点があります。
複数の環境を比較することで、今いる病院の環境改善に貢献することができます。
人間関係で煮詰まりにくい
医師はもともとストレスがかかりやすく、日々接するスタッフの数もそれほど多くないことから、人間関係で煮詰まりやすい職種の一つであると感じます。
固定されたメンバーが、長期間1つの職場で勤め続けると、よりその傾向は強くなります。
同じ部署で働いているけれど、実は十年来の不仲であるという話も珍しくはありません。
定期的に変化があることによって、程よい緊張感や距離感を保つことができます。
いろいろな土地に住める
さまざまな土地に住む経験できることは、メリットでもあります。
地域の美味しい店や美しい景色、雰囲気のいい散歩道や公園を開拓するのは楽しい時間です。
県をまたぐような異動があれば、日帰り~1泊くらいの旅行の行き先が変わってきます。
いろいろな地域に友人ができるかもしれません。
人生の限られた時間でこういった経験を多くしたいのであれば、異動を伴う仕事も悪くないものです。
人事ならば、転職時にネガティブに感じられにくい
最後は自らの意志ではなく、人事によって多くの病院を経験するメリットです。
「多くの病院を転々としている医師」は転職時にあまりイメージが良くないようで、面接で必ずその理由を尋ねられます。
その際に「医局人事で…」と伝えると、「ああ、それは仕方ないですね。大変でしたね。」と理解してもらえ、ネガティブなイメージを払拭することができます。
ココがポイント
あくまでも人事で病院を移っていくことで、自らの経歴をネガティブなものに変えることなく、多くの病院を経験することができます。
まとめ
医局人事によって異動するメリットをまとめました。
メリットはこちら
- 診療経験を積める
- 頼れる人が増える
- マネジメントを学べる
- 人間関係で煮詰まりにくい
- いろいろな土地で住める
そして「病院を転々とする医師」というイメージを持たれることなく、これらのメリットを享受することができます。
普段は人事異動を含めて医局のデメリットも多く記事にしていますが、これらにはメリットもあり、それが今の僕の基礎となっていることも事実です。
こうした経験や人との縁があるからこそ、どうにか今日も仕事ができています。
異動に対して、気が重いと感じている人もいるかもしれません。
ただどうせ異動があるのであれば、少し労力を使ってでも、こういったメリットを取り漏らさないようにしたいものです。
今回は以上です。
どうしても人事異動が辛くなってしまった方は、こちらの記事をどうぞ。
医局人事って拒否できる?状況ごとに解説