今回は、こんな悩みについてです。
こんにちは、コアライ ミナトです。この記事を書いている僕は、医師歴約10年。どうにか主要な資格を取得し、「若手医師」と呼ばれる期間を終えつつあります。
医師3年目って、一つの山場ですよね。初期研修期間も忙しいものでしたが、それとはまた違った大変さがあります。
この記事では、若手期間を乗り切るための考え方について解説していきます。
この記事の内容
- 医師3年目の実態
- 医師10年目を一区切りとしたキャリアプラン
- 辞めたいと思ったときの考え方
では、いきましょう!
医師3年目の実態
まずは医師3年目の仕事や生活についてのデータから、みていきましょう。数値化して把握することで、現状を正確に捉えることができ、将来を考える基準になるはずです。
労働時間
まずは労働時間についてです。「3年目」に限定したものではありませんが、年齢ごとの労働時間の平均値は下記の通り。
※カッコ内は、平成28年のデータとの比較です。
引用元:第9回医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料3
かなりきちんとしたデータで、「アルバイト」や「待機」「教育・自己研鑽」といった時間も、きちんと含められています。
20~30代医師の労働時間は60時間/週程度で、3年目の医師も似たようなものだと思います(30代女性は短いものの、医師3年目であれば60時間の方に近いはずです)。
これは残業時間が約86時間/月、1000時間/年ということになります。
ちなみに同じ資料には、年間1860時間以上残業をする医師の、科ごとの割合を示したグラフも掲載されています。
救急医や外科医がハードなのは想像通りですが、右端の「3~5年目医師(全科平均)」もそれと同程度に大変であることがうかがわれます。
科ごとに多少の差はあっても、「専攻医」というだけで、一般的な救急医や外科医と同じくらいハードになりえるというわけですね。
年収
続いては、給料についてです。年齢ごとの勤務医の、平均年収をお示しします。
25-29歳 | 30-34歳 | 35-39歳 | 40-44歳 | 45-49歳 | 50-54歳 | 55-59歳 | 60-64歳 | |
男性 | 676.5 | 952.1 | 1262.8 | 1414.7 | 1503.9 | 1739.1 | 1745.2 | 1809.2 |
女性 | 653.2 | 855.9 | 1086 | 1317.8 | 1254.9 | 1510.6 | 1878 | 1361.7 |
単位:万円
同世代のサラリーマンと比較すると高年収と言えますが、実際に生活してみるとそれほど裕福には感じないのではないでしょうか。
医師って意外とお金ないの?現実と対策を解説
30代前半までは修業期間ということで低く抑えられているものの、その後は年功序列で増えていくので、それほど今の給料をみて焦る必要もないのかなと思います。
医局に入る専攻医の割合
医局に入って専攻医期間を過ごす割合は、8割程度のようです。
研修修了直前の全研修医を対象に行われるアンケートで、「入局予定」と答えた人の割合は、
73.7 % (H27)、74.2 % (H28)、76.8 % (H29)、77.9 % (H30)、79.3 %(H31)
となっています。
参照元:臨床研修修了者アンケート調査結果
医師3年目はつらい
ここまでみてきた通り、というか身をもって感じていることと思いますが、医師3年目はなかなかしんどい時期です。
勤務時間は長いし、給料はそこまで高くありません。
実際にできることは多くないにもかかわらず、〇〇科医と呼ばれ、専門家としての責任がのしかかってきます。
一人でできることが少ないため他人のペースで仕事をすることになり、うまく力を抜いたりもしにくいです。
医局に入ったら、朝早く起きて遠くのアルバイトに行かなければなりませんし、他人に住む土地を決定される人事異動もあります。
その反面、充実した時間でもありますよね。
1日中、1年中、自分が興味のある分野に触れることができ、自分の生涯を支えてくれる経験が、積み重なっていくのを感じるはずです。まさに「修業期間」。踏ん張りどころですね。
いつまで頑張ればいいのか
こんな悩みに対して、1つの答えをくれるデータをお示しします。
「医師何年目に、自分を医師として一人前と感じるようになったか」という、アンケートの結果です。
~5年:2.6 %
5~10年:18.6 %
10~15年:26.1 %
15~20年:7.7 %
20年以上:5.3 %
まだ「一人前」になったと感じていない:39.7 %
参照元:医師転職研究所
「まだ一人前でない」という自分に厳しい意見は除外し、どこかのタイミングで一人前になるとすれば、【約10年】というのが1つの区切りと言えそうです。
もちろん科にもよりますし、「なんでも自分でできるようになる」というわけではありません。ただ、「少し相談に乗ってもらえれば多くの業務がこなせる」「いつ、誰に相談すればいいかは分かる」という段階には来ているように感じます。
さらにこの頃から、「専門家として」仕事を選ぶことができるようになります。それは「どんな生活をするかを、自分主体で選ぶ事ができるようになる」ということでもあります。
常勤医として転職する場合も、アルバイトを探す場合も、求人の幅がぐっと広がります。
辛い修行期間を乗り切るためにも、人生を満足のいくものにするためにも、「ここから先は自分の好きに生きる!」という線引きは持っておきたいものですね。
この項の要点は、下記の通り。
・「自分の修行期間はいつまでか」を意識しておく。
・修行期間が終わったらどのような生活がしたいか、具体的に考える。
・そこから逆算して、必要なスキルや資格を手に入れる。
辞めたい、ドロップアウトしたいと思ったら
こんな場合は、下記の順番で検討していくことをおすすめします。
・近い人に相談
・転職エージェントに相談
・プログラムの中断・変更
・転科①
・転科②
近い人に相談
近い上司に相談するというのが、第一歩です。
相談をきっかけに、意外とすんなり解決することも多いです。少し仕事量をセーブしてもらう、指導が厳しすぎる場合はマイルドにしてもらうなどが考えられます。
若手に限らず医師の仕事には、「こなせている限りは、いくらでも仕事が増えていく」という特徴があります。
もし今を乗り切れたとしても、長い医師人生のどこかで「もうこのくらいまでで…」と仕事を断らなければならないタイミングが、必ず訪れます。
転職エージェントに相談
次のステップは、転職エージェントへの相談です。「このまま頑張って資格や技術を積み重ねると、どんなポストに就けるのか」「今すぐ転職をすると、どんな待遇になるのか」などの情報を得ることによって、より具体的に将来を考えることができます。
Q. 「専門医資格を諦め、別の道を考えたい」という若手医師には、どんなアドバイスをされますか?
A. まずは将来的なご自身の医師としてのキャリア像(できれば着地点)をお伺いしたうえで、専門医を絶対に取得された方がよいのか、専門医がなくても将来的に困ることのない働き方(もしくは診療科)なのか等、お一人お一人に合わせたメリット・デメリットを明確にしたうえでアドバイスを行っています。
また、この時期は結婚や出産等のライフイベントの適齢期でもあり、もちろん先生方お一人お一人によってご事情は異なります。
あくまで「キャリア」という視点でのエージェントとしてのアドバイスをさせていただきながらも、希望されるQOLを大きく損なってしまうことがないよう、先生の優先順位を尊重したうえで最適な施設、最適な働き方をご一緒に模索し、候補となる医療機関側とも相談をしながら進めています。
ただ、一般的には研修を通して医師としての経験・スキルを培っていただく時期ですので、安易な転職で将来的に先生がお困りになられることがないようにすることは、とにかく大切に考えています。
プログラムの中断・変更
いろいろな人に相談した結果、「どうしても継続が難しい」という場合は、専攻医プログラムの中断や変更を考えることになります。
分野によって多少異なるようですが、
・6ヶ月以内の休職であれば、研修期間を延長することなく修了できる。
・6ヶ月を超えても、期間を延長して修了することできる。
・これまでの勤務実績や経験症例を引き継ぎつつ、別のプログラムやカリキュラム制に移行できる。
といった措置がとられることもあるようです。
専門医機構や各々の学会に問い合わせ、専門医資格を取得できる道がないか探していくことになります。
転科①
転科をして、自分に合った働き方を探すというのも選択肢です。
まずは、転科をし再度専門医資格取得を目指すパターンです。
このパターンでは、改めて基幹病院を中心としたプログラムに入り、研修をはじめからやり直すことになります。年度の途中のプログラム変更は認められていないため、4月から開始ということになります。
正直、新専門医制度によってこのパターンのハードルが上がってしまったのは事実のようです。また先程も書いた通り、専攻医である以上、どの科であってもハードな時期です。
ただ科ごとに雰囲気や働き方は異なりますし、転科を成功させ、専門家として一人前になった医師はたくさんいます。
医師が転科をする理由と、うまくいく人の特徴
転科②
続いては、転科後に専門医資格の取得は目指さないパターンです。
実際、資格や経験不問で始められる分野もあります。新専門医制度による影響が少ない転科先は、下記の3つです。
・精神科(指定医は専攻医プログラム必要なし)
・在宅(初期研修での内科経験+大病院ではない市中病院・CLで取得可能)
・美容(入職時点で専門医資格を求められることは少なく未経験から相談可能)
この情報は、こちらのインタビューにて【医師転職ドットコム】からいただいたものです。
医師転職ドットコムを直接取材してみた~強み・評判・転職のトレンド~
専門医資格の価値
確かに医師の53 %が、「専門医の取得や更新の労力・コストが、メリットと見合っていない」と感じているようです。
参照元:医師転職研究所
一方で「転職」という視点では、また違った答えになります。転職エージェントの「専門医資格の価値」についての見解は、下記の通り。
専門医資格は、もちろん転職でプラスになる事はありますが、持っていない事でマイナスに働く影響の方が大きいです。募集段階で専門医資格を要件にしている医療機関は多くありませんが、書類選考の時点で専門医資格が無いことで落とされる事があります。
専門医維持にはコストも掛かるので、最低限基本領域の専門医だけは維持しておけば転職において不利になる事はないと思います。
参照元:エムスリーキャリア インタビュー
専門医があると強い診療科(内科系・外科系・産婦人科・麻酔科)もあれば、在宅・産業医など資格や経験不問で相談できる先もあり、診療科により様々となっております。
参照元:医師転職ドットコム インタビュー
また、近年は医療機関のウェブサイトや院内の掲示などから医師について下調べを行った上で受診する患者が増えています。そのため、医療機関の集患の観点からも専門医が望まれる傾向があり、特に都心部では専門医資格を保持していない医師は面接さえ受けることができないケースも少なくありません。転職を有利に進めるという観点からも、専門医資格を取得し、維持しておくことが大切です。
引用元:マイナビDOCTORホームページ
ポイント
というのが実態のようです。専門医資格をどうするかという判断については、このあたりも踏まえて決断することになります。
専門医資格の【本当の価値】とは。専門医なしで医局や専攻医を辞めるとどうなるの?
半分はゴールしている
若手医師として仕事に追われていると、
と不安になることもあると思います。
ただ10年くらい医師をやってきて、大抵の場合、あまり思い詰める必要はないと感じています。
先程も書いたとおり、専門医資格なしでも、常勤医として雇われることはできます。
アルバイトの相場は、専門知識がそれほど必要ないものでも、時給10000円程度です。週2日働けば年収は830万円になり、相当いい暮らしができます。
ポイント
実際、そうして暮らしている医師もいます。
週2日アルバイトで生活する医師の声
月々の収入は変わらず休日が増えたので、やりたい事に時間を使えてありがたいです。健康状態が著しく改善しました。
ずっと同じように仕事があるかという、将来への不安は少しあります。ただ今の生活が無事に続けられるのなら、「現状を続けることも選択肢の一つかも」と考えています。
そんなわけで僕自身は、
・「もしできなかったら」と躊躇せず、興味があることにチャレンジすればいい。
・つらい、合わないと思ったら、自分に合った道に変更することを迷う必要はない。
と考えています。
まとめ
ポイント
- 医師3年目の労働環境は、なかなかに過酷。
- 10年目くらいまでを、修行期間と考えるのが一般的。
- 辞めたいと思ったら、まず近い人に相談。
- プログラムの中断、変更が認められることも。
- 転科も選択肢。
- 専門医資格は、転職という視点からは役に立つ。
- 医師免許さえあれば、生活はかなり保証されている。
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