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働き方/その他

すべらないCPCマニュアル~スライド・発表・レポート作成例~【研修医向け】

2021年12月26日

CPCマニュアル

 

こんにちは、コアライ ミナトです。このブログでは、医師として働くうえでちょっと役立つ情報を発信しています。

今回のテーマは「CPC (Clinico-pathological conference)」です。

 

CPCの担当って、それほど頻繁に当たるものではありませんが、それだけにいざ担当になると、

え...どうすればいいの?

となりますよね。若手医師や研修医であれば特に、ではないでしょうか。

 

そこで今回、病理医の友人に協力してもらいながら、CPCのポイントについてまとめてみました。

テンプレートもありますよ。

では、いきましょう!

 

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CPCについて

 

まずはCPCの概要について、解説します。

 

定義・目的

CPCは、以下のように定義されています。

CPC (Clinico-pathological conference)とは,その症例の診療に関与した臨床医と病理解剖に関与した病理医を中心として,剖検例の肉眼的,顕微鏡的病理所見と臨床所見との関連について双方の立場から意見交換をし,詳細な病態および死因の解明に向けて検討を行うものである.

この目的を達成できるものであれば、その規模や主催者の如何を問わない.病院全体や内科全体のCPCだけでなく,従来,担当病理医と主治医等が少人数で行っていた,いわゆる剖検整理会(剖検報告会)といったものもこの目的に沿ったものであり,CPCとみなされる.

また,大学附属病院等で学生CPCが実施されている場合はこれも含める.

引用元:日本内科学会ホームページ

 

まとめると、

・解剖を行った症例の、病態を把握する目的で行う
・臨床所見と病理所見を照らし合わせながら、検討をする場
・最小の場合、主治医と担当病理医の2人の会でも、CPCと呼べる

というわけです。

実際は主治医や担当病理医だけではなく、研修医や他科の医師も含めた大人数が参加し、研修医が症例提示を行うことが多いです。

 

流れ

CPC前後の、大まかな流れは下記の通りです。

CPC症例と担当者の決定
→(研修医など若手であれば、主治医の指導を受けつつ)スライドを作成
→担当病理医との打ち合わせ
→CPC本番
→レポート作成

 

CPC本番の流れは下記の通りです。

臨床所見の提示
→臨床所見についての、質問・討論
→病理所見の提示
→病理所見についての、質問・討論
→臨床側からみた総括・考察・勉強スライドなど

 

発表・スライド作成例

 

臨床所見の提示をする場合の、発表・スライド作成方法を解説します。

 

基本となる考え方

テンプレートの前に、まずは基本となる考え方を解説します。ポイントは2つです。

・生前の経過から考察する。
・所見の「解釈」を行う。

 

1つ目は、「あくまでも生前の経過から考察する」ということです。

そもそも解剖は、経過中にわからないこと・決めきれないことがあって、それを究明するために行うものです。

臨床所見からはわからないことがあって当然なので、無理に解剖結果(=正解)を当てにいくプレゼンテーションをする必要はないわけです。

生前全く疑われていないのに「解剖結果がこうなので…」と、それに寄せたプレゼンテーションをすると、よくわからない発表=すべることになってしまいがちです。

病院によっては、CPCの段階ですでに、解剖報告書が返却されていることもあるようですが。

 

2つ目は、それぞれの所見について、一つ一つ「解釈」を述べていくということです。

この貧血の原因は、〇〇を考えます。
この画像は、こんな病態を反映していると思います。

といった感じです。

 

・持っている知識の方向性が異なるスタッフたちが
・複雑で長期に渡る経過を
・初めてみながら、議論していく

というのがCPCです。

黙々とデータや画像を映していくだけで、なんとなく全員が同じ考え・結論にいたる「いつものメンバーのカンファレンス」とは、ちょっと違うわけですね。

 

普段のカンファレンス以上にこのあたりを意識すると、「よくわからない」「静まり返った」CPCにはなりにくいです。

 

テンプレート

それでは、発表やスライドのテンプレートをお示しします。

① タイトル

〇〇病の経過中、〇〇を引き起こした症例
所属 氏名

 

② 症例

【症例】○歳代 ○性
【主訴】
【現病歴】
○年○月:・・・経過・・・
・・・
○年○月○日:・・にて入院。

最後の入院までの経過を書くのが、一般的です。

 

③ 背景

【既往歴】年齢順に。
【内服歴】
【生活歴/アレルギー/職歴など】

それぞれ必要に応じて書き、書いていないものも、把握はしておくというイメージです。

 

④ 入院時現症

【身体所見】バイタルサイン他、特記すべき所見。
【血液生化学検査】異常値は色を変える。
【生理学検査】
【画像検査】
【培養】
など、必要に応じて。

先程も書いたとおり、発表するときはそれぞれの所見についての「解釈」をするのがポイントです。

 

⑤ 入院後経過

○年○月○日:・・・経過・・・
・・・
○年○月○日:・・にて永眠となった。

必要に応じて、経過や症状の変化を盛り込んだグラフを作成するとよりわかりやすいです。

 

⑥ 臨床上の疑問

1. ・・・?
2. ・・・?

経過から考えられる仮説を、それぞれに対して付け加えられると、さらにいいと思います。

本番ではここから質疑応答の後、病理側にバトンタッチとなります。

 

⑦ 総括・考察・勉強スライド

基本的には⑥までで症例についての検討は終了ですが、病理所見の発表後に、臨床側が総括や考察、勉強スライドの発表を行うことが多いです。

この部分に関しては、病院ごと、指導医ごとにバリエーションがあります。必要な内容を選んで、参考にしてください。

【総括】

症例のまとめや病態を、改めてコンパクトに説明します。

【考察】

・(主には臨床上の疑問に対する)病理側の回答が、臨床像と合うかどうか。
・病理所見を元に、どう診断、治療すべきだったか。
・典型的な病態と比べて、異なる点はなかったか。
など。

【勉強スライド】

・主病変、副病変に挙げられた疾患の、疫学、症状、診断方法、治療方法、予後など。
(担当症例と対比させながら解説すると、よりわかりやすいと思います)

単に〇〇病の一般論を教科書などからコピーするのではなく、「その症例ならでは」の内容をまとめられると、すべらない発表になるのではないでしょうか。

 

よくある質問

・この診断に至った根拠は?
・この治療を行った/行わなかった理由は?
・この症状が起こった理由は?
・この異常値の理由は?

こういった内容に対する答えが準備できたらベストですが、「そもそも診ていない症例」であることが多いはずなので、困ったら指導医を頼るというのも仕方ないですよね。

 

レポート作成例

 

CPCレポートのテンプレートは、下記の通りです(あくまでも一例です。病院によっては形式が指定されていることも)。

 

① 臨床診断

1. 〇〇
2. 〇〇

生前の臨床像から推測される診断を書きます。

 

② 病理診断

【主病変】
1. 〇〇
2. 〇〇

主病変には、「死に直接関与した、などの重要な病態」が書かれることが多いです。

【副病変】

1. 〇〇
2. 〇〇

副病変には、「主としてあげるほどではないものの、重要な病態」が書かれることが多いです。

 

③ 臨床経過

【主訴】
【既往歴】※年齢順に並べるときれいです。
【内服薬】
【生活歴/アレルギーなど】
【現病歴】
最後の入院までの経過を書きます。
【入院時現症】
【主な検査所見】
<血液生化学検査>
<生理学検査>
<画像検査>
<培養>
など。
【入院後経過】
【臨床上の疑問】
1 ・・・?
2 ・・・?

発表スライドと、基本は同じです。

 

④ 病理所見

【主病変】
1. 〇〇
・・所見文・・
2. 〇〇
・・所見文・・

【副病変】
1. 〇〇
・・所見文・・
2. 〇〇
・・所見文・・

【その他の病理所見】
・・所見文・・

【総括】

○病で経過観察中。○○を引き起こし、治療するも改善せず、亡くなった症例である。
肺では、○○の像がみられた。また〇〇の合併もあり、これらが呼吸状態の悪化に関与したと考える。
腎臓では・・・。心臓では〇〇の像がみられたが、これが大きく関与した可能性は低い。最終的に、○○によって死亡したと考える。

 

書き出しの1~2文で経過をまとめます。その後に重要な病理所見をコンパクトにまとめ、最後に結論でしめます。

それぞれの病態が、どう影響したかまで書けるといいですね。

 

【臨床の疑問に対する考察】
1 .・・疑問・・?: ・・考察・・
2 .・・疑問・・?: ・・考察・・

 

⑤ 考察

考察の書き方は、大きく2パターン挙げられます。

1つは、主病変となった疾患についてまとめるというものです。その疾患の起こる頻度やリスク因子、症状、治療などですね。

もう1つは、「その症例ならではのこと」を考察するというものです。例えば、下記のように。

・臨床診断と病理診断に、違いはなかったか。
・違っていたとしたら、どんな検査や考え方をすべきだったか。
・治療方針は正しかったか。どの程度効果があったか。
・(解剖をしても答えが出ない内容があったとき)自分はどんな仮説を立てるか。
・その症例の、学術的に興味深いところ。
・「実際に○○病の肉眼像・病理像がみられてよかった。今後の診療に活かしたい」などの感想。

 

どちらかと言うと「その症例ならではの考察」をしたほうが、学べることが多いように思います。

 

まとめ

CPCのテンプレートや、基本となる考え方について解説してきました。

ポイント

  • 臨床経過を元に、症例提示をする(無理に解剖結果を当てる必要はない)。
  • それぞれの所見の「解釈」を述べる。
  • その症例ならではの、まとめをする。

 

さて、今回は以上です。参考していただけたら幸いです。

 

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