こんにちは。コアライ ミナトです。
今回のテーマは、ネット(ブログやSNS)でよくみかける、「医師のキャリアでの〇〇不要論について」です。
よくみかけるものは、下記の4つ。
・医局(入局)
・専門医資格
・博士号
・常勤先
ただネット上でこれらを議論するのは限界があって、話半分にとどめておくのがいいのではないかな、と思います。
自らの転職経験も交えながら、「医師の肩書」について考察していきます。
この記事を読むと分かること
- ネットでの〇〇不要論の問題点
- どれかを手放すときの考え方
- 僕自身の考え(参考程度)
問題点①:全員医師としての能力は十分という前提
ネット上で〇〇不要論を語る、最大の問題点は、その人の医師としての能力が見えないままで話が進むということです。
というところから話が始まります。
そして
と展開していきます。
でも「医師としてきっちり仕事をする」というのは、簡単なことではないでしょう。一生をかけても実現できるかどうか、という課題であるはずです。
例えば専門医資格について。
・信頼できる仕事をする医師が「専門医資格は不要」と言っている。
・臨床能力に問題のある医師が「専門医資格は不要」と言っている。
全く、イメージが違います。ここがネット上では見えません。
多くの場合、ネット上での「専門医資格」の意味とは
・証明書(紙)
・それよって得られる待遇
だけを指しています。
資格を手にする過程で得られる、知識や経験は考慮しようがないわけです。
問題点②:平常時が前提
先程も書いたとおり、不要論を語るとき、
・証明書(紙)
・それよって、普段得られる待遇
これだけをみて、「それほどメリットを感じない」という結論へと流れていきます。
確かに、普段はメリットを感じにくいかもしれませんが、キャリアの非常時には役に立つものも多いと感じます。
非常時とは、例えば下記のような場合です。
・仕事が辛くなり転職をするにあたって、希望のポストが競合したとき
・一度離職し、復帰するための新たなポストを探すとき
転職活動を経験してみて分かったことですが、仕事をもらうためには、自分のことを知らない人に評価(=信用)してもらう必要があります。そして評価者には、医師以外の病院関係者も含まれます。
面接官の目の前で手術をしてみせるわけにもいかない以上、肩書というのは馬鹿にはできません。
・大学院では、どんな研究をしていたのですか?
・立派な病院におられたようですね。
・多くの病院で勤めたようですが、これは人事ですか?
面接では、意外とよくこういった話になります。
・身元をはっきりさせておく
・輝かしそうな経歴にしておく
・資格を持っておく
・多数派に属しておく
・すぐに旨味がなくとも、できることを増やしておく
こういったことは、「自分のことを知らない人からの信用」という数字には現れないメリットになりえます。
問題点③:現状の制度ではという前提
未来は誰にもわからない
問題点の3つ目は、「あくまで現状の制度では」「現状から予測できる範囲では」という前提で話が進むということです。
未来予想図を描いたうえで、「だから不要である」という流れもみられます。
ただ未来の社会構造を正確に予想することは、なかなか難しいでしょう。
医療全体が衰退する中で
未来はわかりません。とはいえ、日本全体が衰退傾向にあり、医療もその煽りを受けるというのはどうやら既定路線のようです。
これまでのように売り手市場で、業界としてゆとりがあるのならば、誰でもそれなりに希望する仕事につけたかもしれません。
そういった状況では
肩書を得るためのコスト>>>肩書を持つメリット
だったのでしょう。
ただ他の医師と比較され、選択される側になったときに、これは逆転するかもしれません。
問題点④:その他
不安を考慮していない
「日々心安らかに過ごせるか」というのも、価値の一つです。
支払うコストにもよりますが、持っていることで安心感につながる肩書はそれだけで価値があります。
例えばSNS上で専門医不要論を叫んでいる人をみると、「不安なのかなぁ」と思ってしまいます。
僕自身、医局を辞めたことに後悔はないですが、そのことにより「必ず近隣の地域でポストが得られる」という安定感を手放してしまったなと感じています。
持ったことがないと価値がわからない
といった意見も目にします。
僕自身も、入局は必ずしも重要ではないと考えています(科や地域、個人の努力によっては)。
「僕はスマホを持ったことはありませんが、幸せですよ」と言われて、スマホを手放す人はいないでしょう。
【番外編】医局員の不要論も信じにくい
ネットでの意見だけではなく、医局員が言う〇〇不要論を信じるのもリスクがあります。
医局制度の衰退/崩壊と言われながらも、医局に属しているということは、未だに最強の身分証明となります。
主な理由は、下記のとおりです。
・大きな組織で、歴史もある。
・いざとなれば、問題のある医師を医局に引き取ってもらえる。
・部署/科全体として医局員が、ある程度カバーしてくれる。
人事異動で送られてくる医局員に対して、面接すらしない病院もあります。
医局員の言う〇〇不要論は、後ろ盾あっての意見なので、信じすぎないほうが良いでしょう(今後、医局に属さない可能性があるなら)。
対策:現実でみたものを信じること
確かにネット上の意見は、
・身の回りにない視点を与えてくれる
・選択肢を知る
という点で有用です。ただ決断をするときは、自分の目で見たものを信じたほうがいいでしょう。
自分で体験する
・医局に入ってみて、合わなかったら辞める。
・専門医を取ってみて、不要であれば手放す。
このように自分で体感し判断すると、大きな間違いをしにくいでしょう。
一旦手にする過程で、知識や技術も身についているはずですし、メリット・デメリットも本当の意味で理解できます。
一緒に働いた人の意見を聞く
ただし自分で体験するには、時間と労力がかかります。負担が大きすぎる、価値観と合わないということもあるでしょう。
それ以外の方法としては、一緒に働いたことのある人の意見を聞くということです。
その人の医師としての能力や実際の生活を、判断材料に加えられるからです。
僕なりの考え
優先順位と要/不要のライン
僕個人の意見も、参考程度に書いておきます。
専門医資格>常勤先>医局>博士号
この順に優先度は高いと思います。
そして、
・養うべき家族がいる。
・今30代で、定年までは医師をしたい。
・不安を感じながら生きるのは嫌。
という条件である僕にとっての、要/不要のラインはココです。
・専門医資格と成長につながる常勤先は必須。
・医局は微妙(医局での修行は必要だったが、一生いることはない)。
・博士号は、なくても困らない。
要/不要のラインは人による
ただし要/不要のラインは人によるので、
・どれだけ稼がなくてはならないか(家庭の事情、年齢、金銭感覚)
・居住地にこだわるか、どこでも良いか
・医師以外の能力(副業やお金の知識)
・仕事にどの程度のコストを支払えるか(健康面や人生観)
などと照らし合わせて、優先順位の高いものから、可能な範囲で手にしていくというのがいいのではないでしょうか。
一気に多くを手放さない
「一気に複数を手放さない」というのもポイントだと思います。手放すならば少しずつ、様子をみながら、年齢とともに、です。
若い=残りの人生が長いのであれば、
・手に入れるという方向には、挑戦的に。
・手放すという方向には、保守的に。
こんな姿勢がいいのかな、と思います。
まとめ
ポイント
- ネット上の〇〇不要論は、多くの仮定に基づいている
- 選択肢を増やすという意味では有用
- 決断は、現実をみてしたほうが良い
- 一度に複数を手放すのは、リスクが高い
僕個人の意見としては、
・重要度は、専門医資格>常勤先>医局>博士号。
・価値観などと照らし合わせて、重要度の高い順に手に入れるのがおすすめ。
そしてこのブログも、「ネット上の意見」です。視野を広げるための、参考程度にしてくださいね。
さて、今回は以上です。
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