こんな疑問に答えます。
今回のテーマは「医局員が負担しなくてはならないお金」です。
人事異動ってお金が飛んでいきますよね。僕も以前医局に属していて、こんな疑問を持ったので、試算をしてみました。
この記事を読むと分かること
- 医局人事によって、どういった種類の出費があるのか
- トータルいくら位になるのか(大まかな目安)
この記事を読むことで、将来を考えるきっかけになると思います。
ではいきましょう。
ココに注意
非常にざっくりした試算です。正確なデータに基づいているわけではありません。あくまで読み物としてご理解いただける方のみ、読み進めてください。
まず結論
まずは結論です。
35歳で医局を辞めた場合と比較して、
一般的な医局員は1510万円、運の悪い医局員は2090万円失う
という結果でした。
予想外に高い数字がでてしまいました。
次の項では、この数字に至った根拠を解説します。
定義と計算方法
医師のキャリア
まずそれぞれの医師の定義を下記のようにします。
退局医師
:35歳で退局し、そのまま定年65歳まで1つの病院で勤め上げた。
一般的医局員
:45歳まで病院を転々とした=35歳~45歳までの間に2年、3年、2年、3年で4回異動した。
その後は定年65歳まで1つの病院で勤め上げた。
不運医局員
:一般的医局員と同じ道を進んでいた(35歳~45歳までの間に2年、3年、2年、3年で4回異動)
その後55歳でまた異動となり、定年65歳まで1つの病院で勤め上げた。
50代で異動となる人は少数派ではありますが、決して珍しいわけではありません。
ここからは金額の計算方法をみていきます。
ボーナス
医師のボーナスに関して、下記のような記載がみつかりました。
・30代後半になると男女とも約125万円
・(40代医師は)男性は約160~205万円、女性は約100~189万円と、若干の男女差がみられるようになります。
これを参考に、1年間のボーナスをざっくり140万円とします。
さて、ボーナスと異動の関係です。
ボーナス支給日前に退職した医師には、通常1回分のボーナスは支払われません(これはもちろん合法です)。
一般的に退職が3月で、ボーナス支給は夏です。このため1回の異動で、140万円の半分の70万円損することになります。
※異動した先でもらえる最初のボーナスは金一封という形でもらえることもありますが、通常より少額のためこれは考慮しないこととします。
これをそれぞれあてはめると、下記のようになります。
退局医師:基準とするので0円
一般的医局員:異動4回分=-280万円
不運医局員:異動5回分=-350万円
有給休暇
有給休暇は一般的に年に20日程度付与されます。ただ異動になった年は、10月まで有給休暇はなく、残りの半年で10日間付与されます。つまり10日分の休暇が失われるわけです。
時給を5000円程度(勤務医の場合)、1日8時間勤務が10日分で、一回の異動で40万円の損になります。
これをそれぞれあてはめると、下記のようになります。
退局医師:基準とするので0円
一般的医局員:異動4回分=-160万円
不運医局員:異動5回分=-200万円
※「そもそも有給休暇を消化できない」といった意見や、有給1日の価値をいくらと見積もるかによってもここの試算は変わってくるとは思います。
住宅
仮にずっと賃貸物件で暮らしたとします。
家を契約しなおすのにかかる費用1回分を、
家探しの交通費、礼金、仲介手数料、清掃費など:30万円
と見積もりました。実際にはもう少しかかるかなと思います。ここには引っ越し費用は含みません。
また全ての異動で転居があるわけではないので、異動2回につき転居1回としました。
これをそれぞれあてはめると、下記のようになります。
退局医師:基準とするので0円
一般的医局員:転居2回分=-60万円
不運医局員:転居2回分=-60万円
引越し費用
引越し費用は一回20万円と見積もりました。以下のHPの4人家族、同一地方、繁忙期を参考にしました。
参考:引っ越し侍, 家族(3人・4人・5人)引越しの費用相場
また「住宅」の項と同様、異動2回につき転居1回としました。
退局医師:基準とするので0円
一般的医局員:転居2回分=-40万円
不運医局員:転居2回分=-40万円
退職金
これが最も大きな要素です。
医師の退職金のデータはみつからなかったため、世間一般の数値で代用することにします。
下記は、りそな年金研究所が公表している「大企業のモデル退職金」というデータをもとに作成したものです。
単位:万円
勤続年数➡ | 3年 | 5年 | 10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 | 35年 | 定年 |
会社都合 | 68.7 | 123.8 | 321.8 | 588.4 | 965.9 | 1426.9 | 2012.9 | 2455.2 | 2511.1 |
自己都合 | 32.8 | 63.4 | 186.1 | 407.6 | 801.8 | 1287.0 | 1898.3 | 2368.3 | - |
参考元:りそな年金研究所 企業年金ノート2021. 4 No.636
※新卒採用、終身雇用を前提として作成されているので、右端に定年という項目があります。
例えば、大企業全体の勤続20年(会社都合)の退職金が965,9万円です。
ここでのポイント
1. 一般的に勤続3年未満は、退職金がもらえません。
2. また医局人事は、自己都合での退職となります。
これをそれぞれあてはめると、下記のようになります。
退局医師:
=35歳で退局、転職し、そのまま定年65歳まで1つの病院で勤め上げた。
勤続30年、会社都合(≒定年)=約2010万円
一般的医局員
=35歳~45歳までの間に2年、3年、2年、3年で4回異動した。その後は定年65歳まで1つの病院で勤め上げた。
勤続2年が2回分=0円
勤続3年、自己都合が2回分=約70万円
勤続20年、会社都合(≒定年)=約970万円
=合計1040万円
不運医局員
=一般的医局員と同じ道を進んでいたが、55歳で異動となった。その後は定年65歳まで1つの病院で勤め上げた。
勤続2年が2回分=0円
勤続3年、自己都合が2回分=約70万円
勤続10年、自己都合=約190万円
勤続10年、会社都合(≒定年)=約310万円
=合計570万円
退局医師を基準=0円とすると、
退局医師:基準とするので0円
一般的医局員:-970万円
不運医局員:-1440万円
となります。
ちなみに今回は、「大企業モデル」を代用しました。
実際の医師の退職金については
(医師の退職金として)基本給や役職によりますが、15~20年程度の在籍期間の場合、退職金は1000万~2000万円程度になるのではないでしょうか
引用元:マイナビ DOCTOR, 医師の退職金が多く支払われる医療機関は?
という記事もみられました。
もし医師の退職金が実際は20年間で1500万円とすると、上の値よりもさらに大きな差になります。
その他
これ以外にも医局費、同門会費、そして寄付金などを支払う必要があります。これらの負担も安くはありませんが、「人事に関わるお金」ではないため今回は省略します。
この試算の問題点
① 冒頭でも書きましたがきちんとしたデータに基づいたものではありません。特に影響の大きい退職金に関して、「大企業モデル退職金」を代用しています。医師に限った検討ができていません。
② わかりやすさを重視して、今回は税金を考慮していません。このため額面収入と退職金、手元から使うお金を全部横並びにして足し算するという、乱暴な試算となっています。
③ 医局フリーになると、30年以上1つの病院で勤められるという前提で書きました。ただ病院の経営はどこも厳しく、こういった保証がないのもまた事実です。
④ 退職金の要素が大きいですが、世間一般的に退職金は減少傾向です。僕らが定年を迎えた時、どの程度の水準になっているかはわかりません。
まとめ
改めて全てを合計すると
退局医師: 0円(基準)
一般的医局員:-1510万円
不運医局員:-2090万円
となります。
それぞれの金額の大きさもそうなのですが、僕にとってインパクトが大きいのは一般的医局員と不運医局員の差額です。
万が一にも50代で異動が決まると、その瞬間に約600万円が吹き飛ぶ計算になります。
大きな痛手ですが、医局員はこれを受け入れるしかありません。このことからも医局制度とは、なかなか厳しい制度だと言えます。
もちろん価値観は人それぞれです。金銭以上のものを得られる医局も多いはずです。
今回は以上です。この記事が、みなさんの将来を考える参考になりましたら幸いです。
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