今回は、こんな疑問に答えます。
初期研修が終わり、専門医資格も取り、「さてこれから稼ぐぞ!」「贅沢できるかな」と考える医師の方は多いと思います。その頃というと、30歳前後の方が多いと思われます。
そして気付くのではないでしょうか。「あれ?意外と医師ってお金ない?」と。
医師になったのだからと、
・家は広い
・子供は私立学校に通い、習い事も
・妻に専業主婦という選択肢も示せる
・外車を乗り回し
・良いお店で外食
・貯蓄もきちんと
みたいなことを夢見ていました。そしてその夢は破れてしまったのです。
今回は例として30歳代夫婦の勤務医世帯(夫のみ医師)と、平均的世帯と比較し、上のような夢をどれだけ実現できるのか試算してみました。
手取り収入の比較
まず医師世帯と、平均的世帯の手取り収入を比較してみます。
まずは医師家庭です。
30歳~34歳男性医師の平均年収は約950万円です。手取りは約690万円になります。
妻も働いたとすると、30代の女性の平均年収は365万円です。手取りは280万円になります。
参照元:Duda by persol:女性の平均年収ランキング 最新版【2020】
合計すると、世帯の手取り年収は970万円ということになります。
続いて平均的な家庭です。
世帯主の年齢が30~39歳の場合、世帯年収は平均614万8,000円とのことです。これは手取り470万程度になります。
参照元:転職Hacks:世帯年収の平均は?家計内訳モデルも公開
つまり、手取り年収=医師家庭 970万 VS 平均的家庭 470万
1か月あたり=医師家庭 81万 VS 平均的家庭 39万
つまり、差額は42万円です。
収入の差額でできること
専業主婦
まず大きなところで、妻が専業主婦となった場合を計算してみます。先程も書いた通り、30代女性の手取り年収は280万円なので、月額23万円となります。
異動費
「できること」とは異なりますが、医師ならではの出費がいくつかあり、その一つが人事異動にかかるお金です。
若手医師の多くは医局人事によって、2年に1回程度病院を異動になります。この費用を試算します。
まず住宅にかかるお金です。賃貸の場合、礼金、仲介手数料、清掃費などで、入居時に30万円程度はかかるのではないでしょうか。
引っ越し費用は、繁忙期であることが多く、家族4人で30 万円と見積もります。
次に考慮すべきは、ボーナスです。ボーナスは支給日に勤務していない場合は、もらえないことが多いため、異動の度に1年分のボーナスの半額が失われることになります。
30歳代医師のボーナスは、年額100-200万円程度まで幅広い報告がみられたため、年額150万円=異動でカットになる1回分は75万円(額面)とします。年収950万円から額面で75万円減額されるとなると、手取りは50万円の減額となります。
30万円+30万円+50万円=110万円が2年に1度かかる計算になります。
よって1年に直すと55万円。この負担を1か月分になおすと5.5万円になります。
医師以外の家庭でも異動はあるでしょうが、医師のように自主退職にはならないため、異動にかかる費用の多くは支給されるのではないでしょうか。
書籍・学会代・医師賠償保険
医師ならではの出費として、書籍代や学会費(移動含む)等の勉強代も必要です。また医師賠償保険にも自分で入らなくてはなりません。
これらを月2万円と見積もります。
貯蓄
貯蓄もしたいですね。貯蓄に関しては、金額ではなく、貯蓄率(収入の何%できているか)で考えるのがいいとされています。
将来への憂いがない1つの目標値として、貯蓄率25 %で計算してみます。
医師家庭が手取りの25 %貯蓄しようとすると、妻が専業主婦の場合は月14.5万円(共働きならば月20万円)
平均的家庭が25 %貯蓄しようとすると、月10万円となります。
ここでの差額は4.5万円です。
ここまでで一旦まとめ
・専業主婦
・医師として必要な経費を払う
・きちんと貯蓄をする
この時点で、医師家庭が使えるお金は、平均的家庭と比べて月7万円多いくらいです。つまり、7万円が贅沢のために使えるお金ということになります。
贅沢
贅沢に使えるお金は、月7万円。
多少ゆとりのある生活はできます。ただし、
・夫婦の小遣いを、平均より数万円ずつ多くする
・少し広めの家を借りる
くらいの贅沢で、すぐになくなってしまう程度の差です。
「医師家庭だから、そこそこ裕福に暮らせるだろう」と考えていたら、すぐに貯蓄率が下がってしまいます。
この現実への対策と考え方
平均家庭よりは裕福だけれど、裕福だと思って生活していたらその差はなくなってしまう。これが現実です。
ここからは、この現実に対する対策や考え方を書いていきたいと思います。
これから収入は伸びていく
下記は、勤務医の平均年収の推移です。30代後半から40代、50代と収入は大きく伸びていきます。
25-29歳 | 30-34歳 | 35-39歳 | 40-44歳 | 45-49歳 | 50-54歳 | 55-59歳 | 60-64歳 | |
男性 | 676.5 | 952.1 | 1262.8 | 1414.7 | 1503.9 | 1739.1 | 1745.2 | 1809.2 |
女性 | 653.2 | 855.9 | 1086 | 1317.8 | 1254.9 | 1510.6 | 1878 | 1361.7 |
単位:万円
20代~30代前半は修業期間ということもあり、給料は低めに抑えられています。
30代前半で「あれ?このままで子供を育てていける?」と不安になる人は多いと思いますが、そこまで悲観する必要もないようです。
専業主婦と共働きの差は大きい
専業主婦と共働きでは、金銭面のゆとりという意味では大きな差があります。
所得が多くなるほど税金が重くなるため(累進課税制度)が一人が多く稼ぐと、手取りは伸びにくくなります。一般的な勤務医に当てはめると、額面が100万円増えたところで、手取りは50-60万円しか増えません。
それぞれの家庭で事情はあると思われますが、金銭面を重視するのであれば、共働きも考慮するといいかもしれません。
配偶者が専業主婦だと人事がシビアになることも
昨今の医局人事では、「個々の事情に全く配慮せず、均等に異動させる」という医局はどちらかというと少数派だと感じます。
これはいい面もあるのですが裏を返すと、独身医局員や、妻が専業主婦という医師に負担が集中しやすいという側面もあります。こうなると当然金銭的な負担も増えます。
異動のない環境を探すのも選択肢
先程も書いた通り、異動というのは金銭面で大きな負担になります。今回の試算では、異動費が月額5.5万円の負担になっているという結果でした。
また今回は考慮しませんでしたが、異動により自主退職をすると、将来もらえる退職金が大きくマイナスになるというデメリットもあります。
医師が医局人事で失うお金は○万円!?試算をしてみた
これだけのコストを支払うことが割に合わないと感じるのであれば、異動のない環境を探すといいかもしれません。
アルバイトもおすすめ
アルバイト(非常勤)を行うのも、おすすめです。
現在医師のアルバイトの相場は、時給10000円程度と言われています。平均的な常勤医の税金を考慮すると、手取りでは5000-6000円程度になるはずです。
実際、大学病院以外の常勤医師の43.3 %が、1箇所以上の兼業医療機関をもっている=医師としてアルバイトしている、というデータもあります。
参照元:第9回医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料3
ただアルバイト禁止の病院や、アルバイトをする時間が取れない病院も多いです。金銭面、生活面が気になり始めたら、それを重視した職場環境にシフトしても良いかもしれませんね。
その他
結局のところ勤務医のままでは、多くても年収2000万円程度が上限です。(給与所得に相当するので)できる節税も限られます。
一般平均を大きく上回りはするものの、ある程度の節制して生きていかなければならないのが現実です。これを大きく超えたいのであれば、開業医になる、別の事業をするなどを考える必要があります。
まとめ
30歳前後の医師が気付く、「医師って意外とお金ないよね」という現実を、具体的な金額を提示しながら解説しました。ポイントは以下の通りです。
ポイント
- 平均よりは裕福だが、共働きでなければ少し贅沢ができる程度
- 収入は年齢とともに伸びていく
- 勤務医では、収入の伸びに上限がある
ちなみに僕自身は現在、
・同世代医師の平均よりは、給料が良い常勤先に転職した
・異動はない
・アルバイトはしていない(許可はされている)
という状態です。
お金と時間について、「納得でき、心地いい状態を自分で選べている」という点が、満足度につながっていると感じます。
皆さんはいかかでしょうか。この記事が、ライフプランについて考えるきっかけになれば幸いです。
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