今回はこんな疑問に答えます。
この記事を書いている僕は退局経験者で、これまで退局経験者と関わる機会が多くありました。そしてその中には、所属医局を変えた人も多く含まれています。
今回はそんな経験を元に、解説していきます。
所属医局を変える理由<辞める理由>
所属医局を変えるということは、
現在の医局を辞める→新たな医局に入りなおす
という2つのステップを、同時に踏むことになります。
そこで、「辞める理由」と「入りなおす理由」に分解してみましょう。
まずは「現在の医局を辞める理由」です。
所属している医局が合わない
最もよく聞く「辞める理由」は、現在所属している医局が合わないというものです。「合わない」と感じる要因として、下記のようなものが挙げられます。
・業務量・業務時間
・転勤(医局人事)
・人間関係
・希望するキャリアと、現状の環境とのギャップ
・自身の専門性と、求められる仕事とのギャップ
医局の関連病院、特に大学病院では、業務量や拘束時間が長くなりがちです。また人間関係も、医局外と比べて濃い傾向にあります。
医局外は、シンプルです。1つの病院で雇われ、そこで言われた業務を遂行します。業務量を減らしたい場合は時短勤務という契約もありますし、逆に余分に行った業務に対しては残業代や当直代、インセンティブとして反映されやすいです。異動はありません。
対して医局の場合は、医局全体としての業務・負担を医局員みんなで分け合うという面があります(異動などを含めて)。
医局の仕事を多くの負担をしても、報酬UPには繋がりにくいです。逆に医局の仕事をそれほど負担しなくても(それが認められれば)、待遇悪化には直結しません。
つまり誰かの負担が少なければ、別の人間がそれを無償(に近い形)で穴埋めすることになります。こうなると、
・穴埋めする側が不公平感を感じる
・穴埋めされる側が引け目を感じる
という状況になります。
こうした人との距離が近い環境イコール悪い環境だとは、思いません。ただそれぞれの医局に対して、「合う・合わない」の差が大きくなります。
転科をする
転科をきっかけに医局を変更するというのも、よく聞く話です。
・「やりたいことがある」というポジティブな動機が示せる
・同大学医局間の変更ですむことも多い
・これまでの経験は活かしにくい
という特徴があります。
転科を期に医局を変えることについては、下の記事で解説しているので、詳しい内容はそちらを参考にしてみてください。
転科をきっかけに医局を辞める/変わることについて解説
Uターン・結婚など生活上の都合
最後は、
・出身地以外で修行をし、出身地に戻る
・結婚を期に、生活圏を変える
など、生活・家庭の事情です。
現在の医局への不満が根本原因ではないので、理解もされやすく、スムーズに話が進む傾向にあります。
所属医局を変える理由<新たな医局に入る理由>
続いては、「新たな医局に入りなおす理由」について解説します。
大学/関連病院で仕事がしたい
大学病院、あるいは関連病院となるような中~大規模病院で仕事をしたいというのは、別の医局に入り直す一番の理由になります。
・研究は続けたい、でも医局との関係が悪くなった
という人が多いです。
また臨床医であっても、
・科や領域によっては、専門性を活かすために中~大規模の病院への所属が必須
・規模が大きい病院の方が、自分に合う
・個人~小規模病院の雰囲気が苦手
などの場合は、医局を変わるということが選択肢となるでしょう。
大学/関連病院で修行したい
経験年数が少ない段階で医局を離れることになったものの、「もう少し医局での修行がしたい」という場合がこれに当てはまります。転科も、広い意味ではこれに含まれるでしょう。
知識や技術面もそうですが、専門医などの資格を取るためには、一定期間は規模の大きい病院に所属することがほぼ必須となります。
・医局外でも、専門医資格を取得できる
・医局外でも、若手が修行できる規模の大きい病院がある
これらは間違いありませんが、ポストの数は限られます。
転職エージェントに提示された(形だけの入局)
転職市場には、「形だけの入局(人事異動なし)」をすることが、採用条件である求人もあります。
医局の関連病院として、昔は医局員が派遣されていたけれども、医局員が減ったことで派遣されなくなったような病院です。
こういった病院に転職する場合も、広い意味では「医局を変わる」と言えるでしょう。
今後さらに医局制度が衰退すれば、こんな求人も増えていくかもしれません。
・きちんとした契約のもと
・強制されない形で
・薄く、医局と関わっていく
という仕組みは悪くないのでは、と個人的には思います。
所属医局を変える方法
医局を変える方法は、下記の3つです。
直接、教授(教室)とコンタクトをとる
ほとんどの医局がホームページを持っており、そこには入局希望者用の連絡先が記載されています。そこに直接連絡をするというのが、最も基本的な「入局の方法」ではあります。
ただ「医局を変わる」場合は、事情が少し異なります。医局に所属している状態で、公式に連絡をとってしまうと、「退局を検討している」という明確な意思表示になってしまいかねません。
これが都合が悪いならば、
学会や懇親会で、変更したい先の教授などと、少しずつ関わりを作っていく
というのが自然ではないかと思います。
コネクションを使う
変更したい先の医局に、知り合いや同僚がいる場合は、その人を通すという方法もあります。
同じ大学内で医局を変わる状況、つまり転科でよくみられるパターンです。
「非公式に、軽く相談をする」という形を取りやすいのが、メリットです。
転職エージェントを使う
最後は転職エージェントを使う方法です。上でも書いたとおり、転職市場には医局の関連病院の一部も求人を出しています。
大学など「医局の中心部」で働きたい場合は難しいですが、単に医局の関連病院のような中~大規模の病院で働きたいというのであれば、エージェントに相談してみるのも1つの選択肢です。
この方法のメリットは、下記のとおりです。
・面接直前までは、匿名で通せる(エージェントが代行してくれる)
・契約書を交わした上で働ける
所属医局を変えるメリット
経験・人脈が増える
医局によって、強みや得意分野は様々です。複数経験することで、知識やスキルをより高めることにつながるでしょう。
またそれぞれの場所で良い人間関係を築くことができれば、ちょっとしたときに相談できる人も、自然と増えていきます。
環境が変わる
医局によって、仕事量、仕事の仕方、ルール、雰囲気に至るまで、その環境は様々です。環境を変えることで、のびのびと仕事をするようになる医師を何人もみてきました。
良い医局・悪い医局とか、良い医師・悪い医師ということではなく、相性というのも大事なのでしょうね。
・漠然とした居心地の悪さを感じる
・なんとなく明るい未来が想像しにくい
→仕事へのモチベーションが上がらない
こんな人は、環境を変えてみるのもいいかもしれません。
特別扱いされることも
あくまで経験上ですが、生え抜きの医局員より、資格やスキルをもって入ってきた途中入局者のほうが、丁寧に扱われる傾向にあるように感じます。
こういった途中入局者が、
・関連病院を転々とさせられている
・めちゃくちゃな雑用をさせられている
というのは、あまりみたことがありません。
所属医局を変えるときの注意点
医局制度が自分に合っているかは要確認
「医局を変わりたい」と感じた時、そもそも医局制度が自分に合っているかという点を、よく確認することをおすすめします。
雰囲気などは医局によって差が大きいですが、同じ医局制度である以上、共通点も多いです。
「形だけの入局」でない限り、
・医局人事には従わなければならない
・一定期間、大学病院で働かなければならない可能性がある
・大学に所属している期間は、ある程度の学術活動は必須
・関連病院にいても、懇親会参加や研究協力、寄付金などを求められることがある
この辺りは、どの医局でも共通しています。
複数箇所で揉めると面倒
そもそも医局制度が合っていない場合は、変わった先の医局も嫌になる可能性があります。
実際、いくつもの医局を転々としている医師をみたことがありますが、「気まずい地域が多く大変そう」という印象を受けました。
よほどの人気科ではない限り医局に入ることは難しくないですが、辞めるとなると何処でもそれなりに面倒です。
「すぐ別の医局に入り直すか(医局を変える)」、「とりあえず医局を辞めるだけにしておくか」。もし迷うのであれば後者がいいのでは、と個人的には思います。
まとめ
「所属医局を変える」というテーマで、解説してきました。
ポイント
- 所属医局を変えるのは、珍しいことではない
- 現在の医局を辞める理由は、医局が合わない、転科する、家庭の事情など
- 新たな医局に入りなおす理由は、大学/関連病院で仕事がしたい、形だけの入局を提案されたなど
- 医局を変わる方法はメール連絡、学会・懇親会、既にあるコネクションを利用するなど
- 転職市場には、「形だけの入局」を条件とした求人もある
- 複数の医局を経験することは、知識・技術向上や人脈といったメリットがある
- そもそも自分が医局制度に合っているかは、要確認
医局制度そのものに不満がない場合は、医局を変わるというのも悪い選択ではないと思います。
最近では、「1つの医局で一生勤め上げる」というキャリアが、一般的ではなくなりつつあります。今後は医局との関わり方も、変化していくのかもしれませんね。
さて、今回は以上です。
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