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働き方/その他

QOLの高い診療科について考察してみた【医師の進路】

2021年6月22日

QOLの高い診療科

 

仕事もプライベートも充実させたいと考えています。QOLが高い診療科ってあるんですか?

 

なかなか難しいテーマですね。一言で「○〇科と■■科です」とは答えにくいです。

人によって価値観は異なるでしょうし、複数の科で働いたこともある医師は少数で、QOLが高いと言われている科にも他科にはわからない苦労があるかもしれません。

 

ただ進路を考える上で、QOLを重視すると言うのは正しい姿勢だと思います。

少なくとも医師になってから定年までは通常約40年間あります。これだけの期間を学術的な興味や熱意だけで乗り切ることはなかなか難しいからです。

 

この記事を読むとわかること

  • 高QOLといわれている科の共通点
  • 初期研修期間中の志望科の変化
  • QOLと医局の関係
  • アルバイトに活かしやすい科
  • 労働時間が短い科
  • 医師数が過剰な科

このような観点から、QOLの保たれる診療科について考えていきたいと思います。

では、いきましょう!

 

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そもそもQOLって...

 

クオリティ・オブ・ライフ(英: quality of life, QOL)とは、一般に、ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた『生活の質』のことを指し、ある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念である。QOLの「幸福」とは、生きがい、身心の健康、良好な人間関係、やりがいのある仕事、快適な住環境、十分な教育、レクリエーション活動、レジャーなど様々な観点から計られる。

Wikipediaより

…抽象的でよくわからないですね。わからないですが「それぞれの人の捉え方によってかわる」ものらしいです。

なかなかQOLの本来の定義に沿って、オススメの科を語ることは難しそうです。

 

医師にとってQOLとは

 

「人による」では話が終わってしまうので、逆に高QOLと言われている科の特徴から、どういった働き方が高QOLと捉えられているかみてみましょう。

一般的には、

眼科、皮膚科、美容形成外科、放射線科、精神科

がQOLが高い科として挙げられることが多いようです。

 

これらの共通点をみてみましょう。

・緊急呼び出しが少ない
・当直が少ない
・一つ一つが長時間に及ぶ手術が少ない
・開業 or アルバイトがしやすい

という項目のうち、複数を満たすものという共通点がありそうです。

こういった働き方ができれば、高QOLといえるわけですね。

 

逆に、

・大きな病院でしか働けない
・完全に仕事を離れられる時間が少ない
・一つの仕事で、持続して長時間拘束される

という場合に、医師はQOLが損なわれていると感じるようです。

確かに、納得ですね。

 

美容分野については、こちらの記事にまとめました。

関連記事
美容医師求人ガイド取材
美容医師求人ガイドを直接取材してみた~強み・評判・美容転科~【学生・研修医もOK】

 

研修期間の志望科の変化

 

つづいて、研修医がどのように感じているかをみてみましょう。

下記は初期研修医6806人を対象として、初期研修前と後の志望科の変化を調査した結果です。

 

研修前研修後増減変更割合(%)
内科25222247-275-10.9
外科756649-107-14.2
小児556415-141-25.4
産婦399108-51-12.8
麻酔21432210850.5
救急187204179.1
精神2263118537.6
皮膚1782325430.3
整形369380113.0
1652205533.3
耳鼻1492045536.9
泌尿1452005537.9
脳外1661892313.9
放射1171513429.1
病理52641223.1
形成1121645246.4
リハ26431765.4
他/無回答467463-4-0.9

 

大きく志望者を増やした科:リハビリテーション科、麻酔科、形成外科、泌尿器科、精神科

志望者を減らした科:小児科、産婦人科、外科、内科

引用元:平成31年臨床研修修了者アンケート調査結果

 

「大きく志望者を増やした科」は、数ヶ月間実際に研修医として働いてみて「ここで働きたい」と感じた科ということになります。

この結果は、QOLを語る上で一つの指標にはなるのではないでしょうか。

「志望者を減らした科」については、「働いてみてキツイと感じた」という要素もあるかもしれませんが、必ずしも理由はそれだけではないと思います(これらが低QOLだからとも言い切れない)。

これらの科は、研修前の志望科としてはメジャーなもので(研修前の志望者が多いTOP4と完全に一致)、研修期間中にそれ以外の科に触れた結果、希望が分散したという要素もありそうです。

 

ちなみに、同アンケートの平成29年、30年の結果は下記の通りです。

平成29年

大きく志望者を増やした科:放射線科、リハビリテーション科、麻酔科、皮膚科、眼科
志望者を減らした科:小児科、外科、内科、整形外科、産婦人科

平成30年

大きく志望者を増やした科:皮膚科、眼科、麻酔科、放射線科、泌尿器科
志望者を減らした科:小児科、外科、内科、産婦人科

 

ある程度の傾向はありそうです。

 

QOLと医局

 

QOLを重視するのであれば、「医局外でも働きやすい診療科を選ぶ」ことを考えたほうがいいかもしれません。

初期研修終了後に少なくとも8割の医師が医局に入るといわれていて、未だに医局の影響力は強いです。

・若手医師のポストの8割を、医局が握っているともいえる
・昔から医局が、若手の育成に一役買ってきた

という理由から、若手医師が一旦医局に入ることは、悪い選択ではないと思います。

ただ医局に所属していると、人事異動や金銭的負担などでQOLを損なう可能性もあります。

 

詳しくはこちら
医局に入るデメリット
医局に入るデメリット5選【元医局員が語る】

 

必ずしも医局員=QOLが低いというわけでもありません。医局員として満足している人もいれば、QOLが保たれやすい医局もあるでしょう。

ただもしも医局を負担に感じるようになったとき、医局を辞めるという選択肢を取りやすい科に進むことが、QOLの維持に繋がるかもしれません。

現在大~中規模の病院の多くは、医局が関連病院として保有しています。こういった病院でしか専門性を活かせない場合は、医局リスクを生涯抱え続けることになります。

逆に比較的規模の小さい病院でも専門性が活かせる分野に進むことで、医局リスクを下げることができます。

 

都市部か地方かによっても事情が変わるので、住みたい地域についてリサーチしてみてください。
そもそもQOLを重視する人と、医局制度は親和性が低いように感じます…

 

QOLとアルバイト

 

現在の医療制度では、アルバイトの時給(1万円)>勤務医の時給(5千円)となっています(おおまかな相場。例外は多い)。

勤務医として残業をするよりも、勤務医をしつつも完全にフリーな時間を得てアルバイトをするほうが儲かる構図になっています。

またアルバイトの時給は1万円程度と書きましたが、専門性を活かせると、より高給になる場合もあります。

アルバイトで専門性を活かしやすい分野としては、

麻酔科、整形外科、精神科、皮膚科、婦人科、内視鏡、透析など

が挙がると思います。

こういった専門性を持つことで、自分の価値観に合った働き方=高QOLに近づくはずです。

アルバイトのみで生きていくこともできるでしょう。

またオンコールや当直の少ない常勤のポストを確保しつつアルバイトをするという、攻守に優れた生活を選択することもできます。

 

平均労働時間が短い科

 

労働時間は、QOLと密接に関係する指標の一つです。

下記は、全科の平均勤務時間を1とした時、それぞれの科の平均勤務時間がどれくらいかを示した表です。

診療科内科小児皮膚精神外科整形
平均比0.991.010.850.911.141.00
診療科産婦眼科耳鼻泌尿脳外放射
平均比1.040.850.891.091.130.99
診療科麻酔病理臨検救急形成リハ
平均比1.011.060.951.211.020.92

引用元:医療従事者の需給に関する検討会 第28回 医師需給分科会 参考資料5

 

皮膚科、眼科、耳鼻科、精神科、リハビリテーション科

は勤務時間が短い傾向にあるようです。

ちなみにこの数値は、外来や入院などの診療時間、教育や研究などの診療外時間、当直などの待機時間を含めて計算されています。オンコールの待機時間は含められていません。

あくまで平均値であり、労働環境によって逆転することは当然ありえます。

極端に忙しい皮膚科医が、余裕のある外科医よりも長時間働いている場合もあるでしょう。

ただ上にあげた科が、傾向として勤務時間が短くなりやすいのは事実であり、重視していい指標であると思います。

 

医師数が過剰といわれている科

 

現在、科ごとの医師の偏在が問題になっています。

皮膚科、精神科、眼科、耳鼻咽喉科

に関しては、2016年から2036年(予測)まで一貫して、医師数が過剰であるともいわれています。

参考:医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会 平成30年度 第4回 資料3

 

過剰であることで、将来的にどのような影響が生じるかは予測が難しいです。

全く影響がないかもしれません。ただ

・専攻医を絞る、専門医資格取得が難化
・専門医資格更新のハードルが上がり、維持継続が難化
・過剰状態から、地域によっては就職困難、雇用条件が悪化

といった状態になり、QOLに影響があるかも知れません。

未来は誰にもわかりませんが、少なくともこういった不安とは付き合っていくことになりそうです。

 

どの科にも下積み期間はある

 

QOLの高い科を含めて、どの領域にも下積み期間はあります

専攻医を募集している、あるいはその後若手期間に配属される病院は、

・業務量が多い
・当直、オンコールがしっかりある
・アルバイトは禁止~実質難しい
・給料も並程度まで

という場合が多いです。

この時期には、業務外でしなくてはならない勉強も山盛りです。

志望者が増加傾向にある科は、医局からみると買い手市場なので、待遇が今ひとつであったり、人事が強制的になる場合もあります。

「若手は全てを後回しにして仕事に専念すべし」とも思いませんが、一生食べていける技術を手にするためには、どの分野であっても一定期間のハードワークは必要だとも思います。

どの分野にも下積み期間があり、生涯に渡って高いQOLが保たれるわけではないという心の準備はしておいたほうが良いでしょう。

 

また高QOL科であっても、他科と同様に

・必要となる知識は膨大
・責任は重い
・周りの医師は、優秀かつ努力をしている

であり、高QOL科は「楽な科ではない」という点は重要かと思います。

 

高QOL科に進んだと思ったら、意外と厳しく、「そもそも自分は医師に向いていない」と感じてしまう若手もいるようです。

 

まとめ

QOLが高い診療科というテーマで解説してきました。まとめると下記のとおりです。

 

・高QOL科として一般的によく挙がる:
眼科、皮膚科、美容形成外科、放射線科、精神科

・研修期間に志望者を増やす:
リハビリテーション科、麻酔科、形成外科、泌尿器科、精神科、放射線科、皮膚科、眼科

・医局外で働きやすい:
小規模の病院でも専門性を活かせる領域(地域差が大きいので要確認)

・アルバイトで専門性を活かしやすい:
麻酔科、整形外科、精神科、皮膚科、婦人科、内視鏡、透析

・平均勤務時間が短い
皮膚科、眼科、耳鼻科、精神科、リハビリテーション科

・過剰といわれている
皮膚科、精神科、眼科、耳鼻咽喉科

そして

・いずれの科にも下積み期間がある

・高QOL科=楽な科ではない

ということは、心に留めておきたいところです。

 

今回は以上です。この記事が、科を選ぶ参考になれば幸いです。

 

 

こちらの記事では、医局に入るということについて詳細にまとめています。よろしければどうぞ。

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